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【オリジナル怪談】霧の中に消えた光の行列
俺が大学生の頃、友達のAとよく夜中にドライブしてたんだ。免許取りたての頃って、無駄に集まっては車を出して夜の街を走りたがるだろ? その日もそんな感じで、地元の県道から国道をC市方面に向かって走ってたんだよ。
国道は、俺らのドライブの定番コースだった。C市街に行くか、旧S峠の逆側にあるK峠に行くかしてたんだけど。
その日はC市街を目指して、深夜0時か1時くらいにはCの街に着いてた。
Cの街を抜けて、山道を登っていくと霧がすごかった。前1メートル先も見えないくらいの濃霧で、道はくねくねの山道だし、横は絶壁だ。俺は慎重に走りながら、助手席のAに言った。
「白線、見えなくなるから外から見ておけよ。」
Aは窓から顔を出して白線を確認しながら、「オーライ、オーライ」なんて言ってくれてた。でも、ゆっくり進んでいると突然Aが言ったんだ。
「おい、後ろ見てみろよ。」
バックミラーを覗くと、霧の中にズラーッと並ぶヘッドライトが見えた。まるで車の行列ができているみたいに。霧のせいで光が乱反射してるんだろうけど、妙に一列に整然と並んでいるんだよ。
「タラタラ走ってるから渋滞になってんのかな?」
そう思いながらも「すいませんねー」とか思いつつ、俺らはゆっくり進んでいった。
ようやくCMパークという頂上付近のキャンプ場に着いたとき、霧が綺麗に晴れた。視界がスッキリして「ああ、やっと普通に走れる」とホッとした瞬間、Aが後ろを見て言った。
「……あれ? 誰もいねぇじゃん。」
俺も後ろを見たが、確かに誰もいない。さっきまで確実にいたはずのヘッドライトの行列が、跡形もなく消えていたんだ。
「あれ、脇道とかあったっけ?」
そう言いながらも不気味さは拭えず、その日は気にしないフリをして帰ったんだ。
ただ、その半年後、俺はゼミの合宿で再びCMパークに行くことになった。改めてあの道を走って気づいたんだ――
あの山道、ずっと一本道で、脇道なんてほとんどない。
「じゃあ、あの時見えたヘッドライトの行列って、どこに消えたんだ?」
俺はAとあの日のことをもう一度思い出して、背筋がゾッとした。