中山が苦労したこと(2)

 脳梗塞を患って以来、いまだにろれつが回らない日々が続いておりました。こんなとき、頭にあったことといえば、「せめてパソコンさえあれば、意思疎通がハッキリするのに!」ということ。入院して、家内や家族がお見舞いに来るようになってから、「ノートパソコンほしい…」ということをもらしたら、家内が愛機のMacBook Airを届けてくれました。もう、これでコワイもんなしです。

 ところが。ところがです。

 いざ、パソコンを打とうとすると、今度はキーボードがまったく違う感じになってしまっているのですね。右手はいつも通りで、「情報」(もちろん、右手だけで打てます)と打つのが、1秒未満。ところが、「わたし」(ほとんど左手だけで打てます。「し」の「い」音以外は)と打とうとすると、「あ」を打ったつもりが、「s」とか「q」とか、まったく違った文字を打ってしまいます。時間にして、じつに10倍以上はかかってしまうのです。これではお話になりません。

 脳梗塞が一段落して、リハビリセンターに行き、回復のリハビリテーションに励むことになりますよね。この場面で、蝶々結びをさせられるとします。これがまったくできなくて……。イライラは最頂点に達する勢いです。

 しかし、これで気づいたことは、「なせばなる」ということ。

 イライラしながら、思うように動かない左手を懸命に使う。これを多少辛抱しても、無理くり動かそうとする。2,3日すると、曲がりなりにも動くのですね。今では約3年が経ちましたが、蝶々結びくらいなら難なく動かせるようになりました。まあ、時間的には、通常よりもかかってしまうのは、仕方がない話なのですけどね…。

 無理をして、動かないものを懸命に動かそうとする。何日か辛いながらも続ければ、手は思い通りに動くようになる可能性を見つけたわけです。これは大きな発見でした。

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