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「氷の姫」 3 童話 短編
7.一年目 9才
氷の姫になって、一年が経ちました。
元の体に戻る事なく夏を迎え、夏至祭りは去年よりも多くのほかの国の人々が訪れました。
氷の姫のドレスはライムグリーンとアクアブルーの2色使いで、氷の体であっても姫の持つ雰囲気と清楚さがあらわされ、とても可愛らしく誰もが夢の国のお人形のように思い、キラキラ輝く氷の城と氷の姫のいるこの場所は夏の暑さを感じないこともあり、去年よりも自分達が夢の国の住人のように思えてました。
みんな口々に氷の姫の美しさを讃えていましたが、なかにはオーロラの瞳であったら、透きとおる金髪であったらと、言う人も少なからずいました。
その声は、氷の耳に届いています。
氷の姫は王様王妃のお父様お母様、侍女や従者達の自分を見る顔を思い出します。
夏至祭りは、みんな楽しく騒ぐと同じに、村人達は色々食べています。
そんなにお腹は空かないし、お花は美味しいと思う氷の姫。もう、慣れたと思っていてもただ、可愛いいケーキやクッキーの美味しかった記憶が、食べていて楽しかった記憶が…、王様と王妃も村人に
「一つ食べてください」
と勧められて、
美味しそうに食べているのを見ていると、お菓子を口にしたいと思うのと、氷の姫は悲しさで心がいっぱいになりました。
「アイシィ様、どうされました?」
と、側にいた侍女に聞かれて氷の姫は、横に首を振る事しかできませんでした。
氷の姫になってから、嘘をつくことが多くなったと思いました。
まだまだ小さいのに、大人に気を使うばかりの氷の姫です。
お祭りはどんどんにぎやかになり、太陽が1番高い位置にきました。
去年と同じように氷の城に挑戦する人々が、コートを着て中に入って行きました。
でも、みんな氷の城の広間の途中で、引き返してきて、みんなお城の中を見たいと言うのですが、寒くて寒くてとても奥にいけないと言います。
今年の夏至祭りは涼しく、みんな楽しく終わりました。
お祭りの翌日、去年と同じように泥棒や盗賊達が氷の城から見つかります。
その後数日、去年と同じ事が起こりました。
氷の城の国は、ほかの国から賛辞を貰い、人々は『泥棒達は わざわざ氷の牢獄に入りに行くようなものだ』と、笑っていました。
8.雪の女王
去年と同じように秋が過ぎ、冬に入り雪が降り始めました。
去年より、早い雪でした。
その晩、雪は吹雪になり氷のお城の広間の窓という窓が大きな音をバン、バン、バンと立てて開き、外の吹雪く雪が勢いよく入って来ました。
氷の姫が着ている、水色のフード付きマントが飛びそうです。
氷の姫様は、
「なに?」
と思い、
その場でぐるっと回転し見渡すと、目の前には、ひと目で『雪の女王』と思える人が、そりと一緒にいました。
氷の姫は、驚いています。
(なぜ、ここに)と
「仙女の呪いにかかり、氷の姫になった者よ。
私では、そなたを人間には戻せぬ」
威厳ある声が響きます。
「はい、雪の女王様ですよね」
氷の姫は、答えます
雪の女王は頷き、言います
「氷の姫と呼ばれる前は、アイシィと言う名前であったな」
「はい。お父様お母様、城の人達はアイシィと呼びます」
「アイシィ、氷の姫となったそなたが疑問に思う事は誰にも答えられる者はいない。その事には答えられぬが、何か尋ねたい事ができたら、この白い梟に手紙を付けて、私に飛ばしなさい」
雪の女王は白い梟を、氷の姫に向かって放すと、白い梟は氷の姫の回りを3周し、氷の姫の頭の上に止まりました。
大きな白い梟に、氷の姫は驚きます。
誰も、自分に抱きつきも触りもしないのに、頭の上にのる梟に。
「その梟の名前は、白い梟。この雪の女王以外にも、森の賢者や仙女にも手紙を届けてくれる」
「えっ!?」
「“雪の女王”に届けて、“森の賢者”に届けてといえば、白い梟は届けてくれる。“仙女”にも。
誰の元にも届けてくれる。そして、また氷の姫の所に戻ってくる」
「ずっと私に、この白い梟がいてくれるの?ずっと一緒に。雪の女王様のお供を私に」
「氷河のある雪の女王の国の梟だ。ほぼ一年中、雪が吹雪いている。ここの寒さに問題はない。氷の姫と一緒にいても、さしつかえはない」
「わぁ、ありがとう。ありがとうございます、雪の女王様」
美しいけれど怖いように見えていた雪の女王様の顔が、少し怖さが柔らいで見える氷の姫。
「白い梟の食事は心配しなくてよい。勝手に取って食べる。では、さよならだ」
そう言って、雪の女王はそりに乗りトナカイが駆け出し、城の中に入った雪も吹雪く風と一緒に、跡形もなく去っていきました。
その日から、白い梟と一緒に氷の姫はいました。眠る時も白い梟は、氷の姫の小さな頭がのっている大きな枕に乗って首を後の羽根に埋め、眠っていました。
そして、お城の中で白い梟と鬼ごっこに、かくれんぼ。
白い梟は、氷の姫に会いにきてくれた友達のように、氷の姫の元に飛んできます。
氷の姫は追いかけてくる白い梟を、つい抱きしめてしまいます。
また、春のツバメのように、氷の姫のまわりスィ、スィ、スィ、スィーと何度もターンをして、スィーット胸に飛び込んだり、時には氷の姫の鼻を噛みます。
白い梟は、大きな梟です。
鼻に噛み傷がつきますが、氷の姫の鼻は直ぐに、元通りになります。
氷の姫が、どんなに触っても白い梟は寒がりません。
氷の姫は、一緒に白い梟がいてくれて、嬉しくて嬉しく仕方ありませんでした。
去年、大雪が降り積もった日、お城の庭の白い雪景色は素敵でしたけど、外で雪合戦する相手もいません。ただ庭を歩くだけでした。
氷の姫は、マントのコートから出た氷の手を見て思います。
氷の姫になる前の雪は冷たく、寒かった
でも、侍女や従者が一緒に雪合戦や兎を作って遊んでくれた。
寒くても、楽しく暖かった。
氷の姫になってからは…
雪は冷たくなく、寒くなくなった。
でも、心は寒かった思います。
庭で氷の手を見て、氷の姫はそんな事を思い出だしていました。
氷の姫の頭の上に、雪が落ちてきました。
氷の姫が、上を見上げると白い梟がバサッと羽を広げて、木の枝にいます。
広げた羽ばたきの振動で、木の枝の雪を揺さぶって、下に落としたようでした。
「ファル」
でも今年は、白い梟がいると思いました。
雪の女王様から、いただいた白い梟。
去年は、誰もいなかった。
私は、ひとりと思っていた。
冬の季節の私に、誰も側に来る人はいない。
(ファル以外は)、
そう氷の姫は、思いました。
白い雪の中で、氷の姫と白い梟が遊ぶさまは、城の外から見ている侍女や従者には、くるくるとダンスをしているように見えました。
白い梟が来てわかった事は、白い梟を追いかけてバルコニーや花壇に沿った廊下から飛び出した雪の上は、歩いても雪は凍らないとわかり、雪が降る日はとても楽しくなりました。
白い梟と一緒に積もった雪に飛び込んだり。
白い梟は、空を飛べます。
雪には、足跡がつきません。
目を離した隙に白い梟がどこかにダイブすると、氷の姫は白い雪の色と同じ、白い羽根の白い梟を見つけられなく、キョロキョロしていると、白い梟にファサと飛びかかれます。
白い梟は、高く、高く、大空を飛び回ります。
氷の姫は、白い梟に合わせて、お城の高い場所まで行き、窓を開けます。
白い梟は、お城の上を円を描くように回り、開けた窓に座っている、氷の姫の所に大きな羽根を広げ、氷の姫を包むように降りてきます。
お城の高い窓から見える景色は、広く遠く迄見えます。
氷の姫になる前、馬車で遊びにいった場所も見えます。
白い梟は、お城の門を超えて飛んでいくときもあります。そんなときは、“雪の女王”の言った事を思い出します。
『その白い梟の食事は心配しなくてよい。勝手に取って食べる』と。
氷の姫も、白い梟と同じように翼があったら、私も一緒に城の外に行けるのにと思いました。
9.白い梟
この国には、めずらしく雪がよく降りました。連日、夜は雪が降っていましたが、12時近くに雪は降りやみ月が覗きました。
氷の姫は、月明かりに窓を開けると白い梟が、2階の窓から飛んで、庭の門の方に飛んで行きます。
氷の姫は、慌てて白いフードコートを羽織り
窓から飛び降り、庭の積もった雪に着地します。
飛んでいく白い梟を追いかけ、門の外を出てしまいました。
白い梟は、お城の門から離れた木の枝に止まっていました。白い雪でわかりづらい白い梟ですが、下に落ちてる雪で、すぐ白い梟がわかりました。
ほっとすると同時に、お城の外に出ていることに気がつきました。
自分が通った所は、凍ってはいません。
雪の上は凍らないので、雪の積もった日に、昼間はお城の庭で白い梟と遊びます。
廊下やバルコニーのでない場所の庭で。
氷の姫は
「雪があれば、外に出ても大丈夫なんだ。そうね、そうよね」
と言い、氷の城以外の広がる世界に氷の姫は歩き出しました。
氷の姫になってから、お城の外に出た事がなく、お城の外に出た事で氷の姫になる前に侍女や従者と行った、広場や草原や花畑を懐かしく思い出します。また、馬車に乗る事もできませんでした。
馬車に乗る事はできますが、馬車の車輪が凍りき、車輪が回りません。
毎日、お城にいる事しかできませんでした。
自然豊かな氷の姫の国、森にも泉にも何処にも行けないでいました。
月明かりの中、お城の外は冒険するかのように楽しく氷の姫は白い梟と歩いていましたが、行きたいと思う場所は、歩いて行くには遠く、お城に戻る事を考えると行ける所がないことに気がつき、悲しくなりました。
戻るか戻らないか、どうしようと思いながら歩いていました。
雪を照らし出す月が綺麗で、自分についてくるような月を見て歩いていたくて、ただ歩いていました。
寒さを感じないので、雪道もスイスイ歩けます。
白い梟は、氷の姫について飛んでいます。
そして、追い越します。
氷の姫は、白い梟に走って追いつき、追い越します。
すると白い梟も、氷の姫を追い越します。
白い梟と氷の姫の、競争が始まりました。
氷の姫は、白い梟を追いかけているだけでしたが、楽しくて仕方ありませんでした。
雪は凍ることがないのに、誰も城の外歩いていいとは言わなかったことを、不思議に思います。
城の庭から、出られない毎日。
可愛いいドレスや綺麗なドレスを着ると気分は明るくなりますが、誰もいない、入れない氷の城を見上げてさみしく思い、天国で苦しみを覚えているような毎日と思っていたことが、吹き飛んでいました
白い梟の飛んでいる姿を、追いかけました。
白い梟は、まるで、おいでおいでをしてるようです。
白い梟はスゥーっとUターンをし、来た道に戻って行き、氷の姫も
「そうよね、大分遠くに来たし戻らないとね」
と白い梟に言い、
また走りっこで帰って行きました。
10. 婚約解消
春、氷の姫は4月で11才になりました。
今年の春は、花が咲くのが遅く春にしては冷たい空気と村人達は言い、春にしては暖かい格好を国中の人がしていました。
氷の姫も、春の庭を楽しみにしていましが、残念に思っていました。
今年の夏至祭りは、お二人の子供アイシィが氷の姫になって3回目の夏至祭りです。
王様も王妃も、自分達が約束を破った仙女への贈り物は続いて、いつもいつも何がよいか悩んでいました。
約束を破ってしまった仙女に、何がよいか。
わからないまま、思いつく物を送った日から一週間、仙女の出没地の泉の近くに、大きな木の洞の中に、贈り物と豪華な花束をおくのですが、贈り物も花束もそのまま残っていて、また今回もダメだったかとため息をついていました。
大きな木の洞に置いていたのは、前に“雪の女王”に手紙を渡してもらった古井戸に住む妖精に尋ね、教えてもらったからでした。
氷の姫には許嫁がいましたが、仙女の呪いが解けずいつ戻れるかわからない理由で、隣国の王子との婚約が解消されました。
氷の姫は、生まれた時の取り決めで王子の顔も知らなかったので、何も気にならないでいましたが、王様、王妃、臣下達は頭を抱えていました。
即急に姫を人間に元に戻さないと思いましたが、仙女の機嫌を取る方法が思いつきません。
前に一度、仙女と交渉する者の募集におふれを出しましたが、誰も仙女の怒りに触れ、氷の体にさせられては大変と申し出る人はいませんでした。
何が、仙女の怒りを解く贈り物になるのか、何が良いかわかりません。
王様と王妃は、医者と言う医者に氷の姫の体を治せる者とおふれを出しましたが、どの医者も首を振ります。
申し出ても、なんの案もないので氷の姫の体を見るだけに終わる事は、十分にわかっていた事でしたので。
王様も王妃も、氷の姫が年頃になる迄に、人間にもどればと思っていましたが、婚約の解消がこたえたようで、仙女の怒りの手がかりになるものがないので、気分は沈みがちで、臣下達が心配し、気分がほぐれるようにと王様達のいる古城に音楽家等を呼び演奏をさせ、詩人達が詩をこぞって披露していました。氷の城の氷の姫に、演奏家や詩人達が訪れる事はありませんでした。
遅い春の花を待ち侘びて、流れる音楽もないなか、透きとおる氷の体で流れる風、揺れる草木の葉、飛び回る白い梟に合わせて、ステップやダンス、柔らかな腕の動きに、波のような腕の動き、風のような動き、軽やかな脚さばき、回転やピルエット片足で立ちポーズとったり、それは氷の手足、体から音楽が流れているように見えます。
お城の庭の花は少ししか咲いていませんが、氷の体は太陽の光を反射し、とても綺麗です。
それを時折、侍女や従者が見ていましたが、王様や王妃が一週間に一回訪れても、氷の姫のダンスを見る事はありませんでした。
続く
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「氷の姫」4