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「氷の姫」 4 完 短編
11.火事
今年の夏は去年に比べ、暑さは少し柔らかいようなと言われていましたが、夏至祭りは夏の暑さを忘れる氷の城と美しい氷の姫の出立で、訪れた人達全員、夢の国の住人である気持ちになっていました。
みんな氷の城で、涼しい気持ちでいました。
太陽がどんどん高くのぼっていく時間の頃、氷の城の庭の至る所で火事が、同時に起こりました。
熱く勢いのある炎に、みんな村人や訪れた人々は騒ぎ、キャーキャー声を出し氷の城の庭から出ていく者、燃え広がる火を消そうとする者、城の従者や臣下侍女達は、火を消そうと大慌てです。
氷の城が燃える心配はなかったのですが、庭の木々や花に、芝生が燃えています。
屋台に火がついては、大変と思っていたのですが、3つ程の屋台から火が出ています。
みんな、慌ててしまいました。
屋台の火事の一つが、勢いよく燃え広がり、4才の子供の服に火がつき、親が、子供が、近くの大人の人々から悲鳴が一斉に上がります。
氷の姫は、いくつもの火事の遠い場所にいたので、最初の火事を見ての大きな声や悲鳴が、何を意味してるのか、わかりませんでした。
騒ぎ響く声の方向に、服に火がついた子供が見え、氷の姫は氷の廊下から降り走り、火のついた子供を抱きしめます。
ジュワジュワ、シューと氷の姫から音が聞こえます。子供の火が小さくなるたびに、氷の姫の体の火があたる部分が溶けていきます。
屋台の燃え盛る炎の勢いに、氷の姫は自分の後の髪をこぶし大をパキッと取り、燃え広がる炎に投げます。続いて二回、同じように氷を投げます。
すると、炎は少しし勢いが落ち、小さくなっていきます。
子供の火は消えましたが、氷の姫の火のあたった部分は溶けてありません。
蝋燭のように、崩れてない状態です。
氷の姫は子供を離し、火傷の部分に手を置いて冷やします。
子供の背中の服は、焼けてボロボロです。
背中の皮膚は、焼けて赤くなっていますが、早い勢いで冷やされていきます。
みんな、一部溶けて体の形を成してない氷の姫が動くのを、不思議に見ていましたが、氷の姫の体が少しずつですが元にもどっているように見え、みんな恐ろしいものでも見ているように、氷の姫から身を引いていきます。
氷の塊を投げ入れられた火事の場所は、ほぼ消えています。
ですが、まだ離れた所の木に燃え移った火が大きくなろうとしてました。
燃え移った火を一生懸命、消している人達もいます。氷の姫は焼けたドレスのまま立ち上がり、燃える木々の所迄走り、炎に体ごと飛び込みます。
また、姫は後ろの復元された髪をパキっと取り、他の火の場所にいくつも投げます。
自分の場所の火が消えると、火のある方へ火にある方へと歩き、火は全部消えました。
ただ、氷の姫は氷の体を保ってはいません。
ただ手足がある氷の塊のように見えますが、歩いて動いています。
綺麗なドレスは、焼けて身に着けていません。
少しすると、氷の体が元に戻ってきているようでしたが、まだ元の氷の姫の体には戻ってはいません。でも氷の姫は、王様王妃の側に来て、火を消した事を告げ、廊下を歩き氷の城に入って行きました。
新しく、ドレスを着ようと思ったのです。
氷の城の庭にいた人達は、火を消してくれた氷の姫を怖いように見ていました。
王様も王妃も火事が燃え広がらなくてよかったとホッとしましたが、信じられないものを見たと言う気持ちと、自分の娘氷の姫が人であることを信じられない気持ちになり、早く姫を人間に戻さなければいけないと思いました。
そして、氷の姫が庭を歩いた箇所は、霜柱も地面に氷がついていません。
白い梟は、一緒に氷の姫についていきました。
正面の入り口から、長い廊下を歩き大きな広間に出ると、沢山のコートを着た大人が広間に、2階に上がる階段に上がっていました。
それを見て、
「どなたですか?」
と可愛いく響く声に、コートを来た男達は振り向くと。手足のある透明な人間の体のような物が立ってるの見ました。
お化けか怪物でも見たかのように一斉に悲鳴を、大きな声を上げ、氷の城の窓と言う窓、2階の開いてる窓から飛びおりました。
氷の庭の火事は消えてましたが、まだまだ騒ぎのままで、その中を狂乱のように叫び声をあげコートを着ている男達が走っていきます。
庭にいるほかの国の人達は驚きましたが、従者や村人はすぐにピンと来て、協力の元、氷の城の庭の外に出る前に全員捕まえました。
話を聞くと、いくつもの火事は盗賊や泥棒達が、氷の城の宝の山を見過ごすことができないと力を合わせたとそうです。
眠っている宝の山を見過ごすことができなくて、昼間氷の庭に火事を起こし、その騒ぎの隙に氷の城に入れば、中で凍って死ぬ事はないと思ったと、泣きながら言いました。
コートを着て、暑さで汗だくだくの盗賊達をみんな物珍しく、見ていました。
氷の姫も、侍女が持っていたコートを羽織っていました。
この時には、顔も体も元に戻っていました。
また、捕まえるのに参加した貴族達は鼻高々に振る舞っていました。
自国に戻ったら、この出来事を自慢に話すのでしょう。
12.夏至祭りの後
夏至祭りの後から、本当の夏の暑さになっていくのですが、村人達は氷の城に用事がない限りは来なくなりました。
氷の姫は、訪れる人が殆どいなくなった氷の城の庭で、一週間経っても捕まえた大勢の泥棒や盗賊の処罰の忙しさで、火事の騒ぎの片付けがまだそのままの荒れた庭に落ちていたタンバリンを拾い、シャン、シャン、シャンと鳴らし、夏の暑さの中吹く風に合わせ踊り、白い梟は近くの木の枝に止まってました。
その踊っている氷の姫の姿を、氷を削りに来た老人が、夏の濃い緑の木々の葉の間から見ていました。
「アイシィ様が、何か悪いことをしたのだろうか?悪いことをしたのは、王と王妃ではないか。まったくかなしいことだ」
と呟きます。
村人の噂は、王様と王妃様にも届いていました。
王様と王妃も、今はまだ噂は小さいが氷の姫の体は、世界中を敵に回すほどの恐怖ではないかと思えてきて、氷の姫のことを話すのをあの場所に居合わせた人々に口止めさせました。
けれども、彼らは不安からおおぴらに話さないだけで、ヒソヒソと仲間内で喋っていました。
「氷に変えられたのは可哀想に思うけど、溶けた氷が元の形に戻るのは魔物されたからでは?」
「子供を助けてくれた氷の姫様には、ありがとうと思うし、火事が広がらなくてありがとうと思うけど、泥棒がくるの氷の城があるからよね」
「それよりも、氷の姫様は人間なの」
と、
氷の姫の溶けた体が元に戻っていくのを見た村人達は、時々そーっと話していました。
火事で逃げた人は多く、見た人は少なかったのですが、噂が大きくなる事を王様と王妃、城の人達は恐れていました。
王様と王妃は、仙女の怒りをとく贈り物を、宝石や珍しい食べ物、上等なお酒から伝説と言われている月の水、珍しい香料等を臣下達に探してくるよう命じていましたが、ほかの国の名のある学者が来た時に、どんな贈り物が考えられるかと尋ねました。
「そうですね、仙女がお姫様を氷の体にした事を反省したくなる物がいいかと思います」
と、学者は言いました。
「仙女が、反省する物」
と、王様は答えました。
「ええ、仙女に反省をさせるには、仙女が愛したくなるような物がよいのではないかと」
「愛したくなる物?」
王様は、不思議そうに聞きます。
「そうです。仙女は心が冷たく、人を愛したことがないから、お姫様を氷の体に変えることができたと思います。仙女ですから、人間を愛さないのは当然かも知れませんが、人や物や対象物への愛が足りないのではと思います」
と、学者は答えます。
この時、森の賢者もその場におり驚いた顔をしていました。
「なるほど、頷けるな。人を物を愛した事がない。誰か、思いつく物はないか」
と王は、臣下達に問います。
みんな、首を横に振り言います
「仙女が、一目惚れする物なんて思いつきません」
と、臣下の一人が言い、みんな頷きます。
「贈り物は決まった場所に置かれてるとのこと。仙女は、どんな物か見ていると思いますので、贈り物は有効と思います。ただ、どう言う物が反省に繋がるか、愛したくなる物かはわかりませんが、二つとない物、壊れやすい物?珍しい物、伝説と言われている物と並行して、考えられるのがよろしいかと思います」
と学者は言い、帰っていきました。
王様は早速、臣下達に
「仙女が反省したくなる贈り物を、愛したくなる物を考えるように」
と、命じました。
この時、
「王よ、仙女の怒りを解く物が良いでしょう」
と、森の賢者が王様に一言伝えました。
でも、誰も考えられないまま、時間だけが過ぎていきました。
王様は再度臣下を集め、尋ねますと、ある臣下が言いました。
「珍しい花の種や苗を送って、数個の種をその場所に埋め、世話して咲かせるのはどうでしょう」
「種だけ送っても、ダメと言うことであるな」
「珍しい花、価値のある花をまず探しましょう」
と、臣下の一人が言いました。
「ほかにも、遠慮なく考えを申せ。仙女に愛する心を持つ物を、皆考えよ。怒りを解く物もよいぞ」と
王様は言いました。
結果は、ダメでした。
花の種や苗は、国の気候に合わず育ちませんでした。
他の案には、生まれたばかりの竜の鱗の案もありましたが、生まれて3ヶ月以内の竜やこれから生まれる竜の話は聞きません。
時間はどんどん過ぎていきました。
今年の国の秋の収穫は、去年より少し少ない物でした。収穫された野菜も、去年よりやや小さい物で、村人達は少々不満でした。。
氷の姫の食事になる花の、つきも悪くありました。
11月に入ると、直ぐに12月のような寒さもあり、いつも雪は12月中頃から降り始めるのですが、12月入ると直ぐに降り始め、豪雪でした。
村人達は、来年はかなり寒いのではとヒソヒソ喋り、今年の春はなかなか暖かくならなかった、作物も小ぶりで収穫が上がらなかったのは、氷の城の氷を削って、それを畑に撒いたからではと、村人の間で話題になることが多くなり、
「氷の姫様は人間なのか?」火事の件もあって言われるようになり、「火事が起きた原因は氷の城があるから、泥棒達が集まってくるから」と村人達は言い出し、少しづつ少しづつ国中が寒さがつのるにつれ、そんな考えが大きくなって行きました。
13.お願い
氷の姫様は、11歳になりました。
氷の姫になってから、3年たちました。
氷の体でも、年相応に身長は伸びていました
顔も11歳の年頃の顔になっています。
侍女も従者も村人も、当然王様や王妃は氷の体でなかったら大変美しいと思っていました。
氷の姫と氷の城がある事で、国に気温は1年毎に低くなっているようです。
王様とお妃様は、仙女への贈り物の考えが底をつきているようでした。
氷の姫も、“雪の女王”から白い梟を貰った次の年から仙女の誕生日の日に白い梟に花を一輪、夏至祭りの1か月前に夏至祭りの招待状を白い梟に届けてさせていました。
氷の姫も、何を送ればよいか思いつきませんでした。自分が触れた花はすぐ凍ってしまうので、花は侍女に摘んでもらっていました。
春の暖かい陽射しの日、氷の姫は白い梟に手紙を持たせました。
「白い梟、この手紙を仙女様に渡してちょうだい。そうすれば、仙女様から渡される物を持ってきて帰ってきてね」と言って、白い梟を仙女の住まいにと送り出しました
白い梟は大空へ大きく飛び、森の上空に迄来た所で、森に入り泉の近くの一本の木に突進します。
木にぶつかると思うと、白い梟の姿は消えてました。
白い梟は、木を通して仙女の住む世界に入り、仙女の家迄飛んで行きました。
明るい草原に、鏡のような池の近くに家があります。
家の窓をコツコツ、白い梟が嘴でノックします。
「あら『雪の女王』の白い梟。氷の姫からの手紙。いつもと違う月ね」
と言って、光をまとった美しい仙女は窓を開け手紙を受け取ります。氷の姫の所にいるのは知ってるよの口ぶりです。
手紙を開きます。
「そうね、氷の姫が考えるとしたら、それしか無いわね。あの王と王妃は、被害が自分達では無いから、なんとのんびりとしたこと」
と言い、魔法の杖を取り出します。
「ちょっと、ゆっくりしてなさい。用意をするから」
と白い梟に言い、
仙女は魔法の杖を振り、戸棚から薬瓶を取り出し混ぜ合わせ、魔法で手紙を書き封筒に入れ、混ぜ合わせ出来上がった物を手紙に入れ、白い梟に渡します。
白い梟は、氷の姫の元にと飛び立ちました。
氷の姫は、お昼過ぎに戻って来た白い梟に驚きます。
「おかえりなさい。とても早いのね。手紙をもらってきてくれてありがとう」
白い梟を抱きしめて、キスをし、仙女からの手紙を開き、確認するように読みます。
「白い梟、3日たったら雪の女王様に手紙を届けて。雪の女王様の所だから、今度は時間がかかるけれど、ゆっくりして来てちょうだい。今まで、戻らせる事しなくてごめんなさいね」
白い梟は、そう氷の姫に言われ、またキスを貰いました。
その日から白い梟は、氷の姫に一杯キスを貰い撫でて貰ったり、ハグを沢山してもらいました。
3日達、白い梟は、永久凍土の雪の女王の所へと飛び立ちました。
雪の女王の国は、氷の姫の国からは遠いです。でも、白い梟は秘密の通路を知っているので、その道を通って氷の女王の所に行きます。
夕方前には着くと、白い梟は思います。
白い梟は、氷の姫といつも一緒にいたので、離れることにとてもさみしく思っていました。
侍女がお昼にバルコニーのテーブルに、籠一杯の花を置きます。
氷の姫様は、ゆっくりと食べます。
色とりどりの花を一つ、一つ口に入れていきます。
暖かい春でも、氷の城の庭はまだ寒く、小鳥も寒さに強い動物達も来ていません。
庭には花が咲いているだけで、小鳥の囀りもありません。お城の回りもまだまだ寒いので、バルコニーから続く廊下を歩き、ゆっくり花壇を見て回りました。
「今日は許してちょうだいね。草原の大きな池に行きたいの。枝にブランコが下がった所迄。私が歩いた所は凍って、草花はダメになってしまうけれど」
そう言って、氷の姫は庭に降りて走り、空いてる門を抜け、そのまま一直線に走って行きます。
村の広場も走り抜けて行きます。
村人達は、氷の姫が広場を走って言ってるのに驚きます。
氷の姫の通った道は凍りつき、氷の姫を追いかけようにも、近く迄行くと寒くて近づけないのです。みんな氷の姫様は、どこにいくのだろうと思いました。
氷の姫は、やっとブランコの下がった木の所迄来てブランコに乗ります。自分の通って来た凍ってる道を見ました。
姫様がブランコを漕いでいるのを、通りかかった村人が目にしました。
氷の姫が、村を走っていると聞いて王様とお妃様は驚き、従者に姫がどこに行く跡をつけよと言いつけます。
氷の姫は、ブランコから近い花畑に行きました。姫の食用の花畑です、何回も繰り返し土地が痩せ、花を栽培する事ができなくなったと侍女達が話していた場所です。
この国では、氷の姫も食用の花畑で痩せた土地が増えていました。回復するには時間がかかると、聞いています。
痩せ細った花畑は、雑草も生えていません。
とても、さびしく見えます。
氷の姫は、ポケットから飴のような物を取り出して、包み紙を開き、口に入れます。
すると、氷の姫の体は溶けていきます。
追いついた従者と、見ていた村人達はあっと声をあげ、氷の姫に向かって走っていきます。
氷の姫は、みるみる溶けていきます。
色々な、花の香りがします。
季節を問わず、薔薇や水仙、チューリップ、良い香りが、様々な香りが一気に広がっています。
従者と村人が氷の姫の所に迄来ると、氷の姫は完全に溶けていました。落ちているドレスの上に、緑の心臓が氷の塊のようにあります。
従者も村人も、
「どうして姫様」と泣き叫びました。
村人は、氷の体にされたお姫様の事を可哀想に思っていました。氷の城に、お一人でいることを悲しいことと思っていました。
緑の心臓は、わっと辺りに草や植物色んな花々が広がっていきます。
広がっていくたびに、どんどん空気が暖かくなっているようで、泣き叫びながら従者と村人はコートを脱いでいきます。
草木や花や植物達はグングン成長に広がり、国中広がり、花々や植物で良い香りに満たされてました。
雪の女王に、白い梟が着き手紙を渡します。
雪の女王は、手紙を開きため息をつきます。
氷の姫からの手紙には、こう書いてありました。
『雪の女王様へ
ファルを、今までありがとうございます。
ファルが来てから、私は楽しい毎日を過ごしました。ファルは、とても気持ちをよく汲んでくれる鳥ですね。ファルをお貸し頂き、本当にありがとうございます。
仙女様に頼んで、私は命を終える事にします。
私がいる事で国は少しづつ温度が下がり、作物の育ちが悪くなっているようです。
私の食用の花で、土地がただ痩せていくばかりです。
仙女様には、私の氷の体を溶かす魔法か薬をお願いし、薬を頂きました。
もう一度行ってみたかった場所で飲もうと思います。
私がいない事で、国は元通りになります。
ファルを、雪の女王様にお返し致します。
お返しするのに、こんな事をお願いするのは変ですが、ファルをよろしくお願い致します。
氷の姫こと、アイシィより』
仙女の薬で氷の姫が溶けた場所から、国は衰えた大地に草花が植物が一気に芽吹き増え、田畑の作物が実りました。
様々な明るい花の香りは、一週間続きました。
王様とお妃様には、氷の姫以外に子供はおらず、王位継承は血の繋がった家臣に譲られました。
完
最後迄、お話をお読み頂きまして
ありがとうございます❄️🩵
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SNSから拾った写真です。
可愛いいですね✨