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レア 囚われの身11🏰 (仮題) 3112文字
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第十一章🌲🌲🌲
何回も繰り返して、わかったことがあった。
髪の伸びが遅いことに。
長い長い冬。
何回目、何十回目の繰り返しかわからない。
一日、二日で治る首。もっと時間のかかる火傷
明るい暖炉の炎に、頭から突っ込んだ。
暖かい炎に。
目が覚めた時、雪が窓を叩いていた。
私は、季節を何回繰り返していると考えても。
雪の季節を、何回繰り返してると考えてもわからなかった。
外は雪が降っていて、雪だけでは、今が1月か、2月かわからないけど、私は外に出た。
外には雪があり、星があり、月があり、
長い長い冬。
寒い冬の夜空の下。
雪は積もるほどではないけど、雪は降っていた。(私の震える心のように、降っている)と思った。
喉を突いてから、チェスもトランプもする気になれず、自分の姿がまったく変わってないことしか思い出せない私は、記憶が曖昧になっていっているようだった。
魔法円に後からサーベルで突いたのか、暖炉へのダイブも、一回はしていると思う。したように思う。はっきりしないけど、本当は何回かしてるのではと思う。
夢を見るように、思い返すことしかできない。
曖昧な夢を。春に見る夢のように。
寒い、雪が降る冬の夜に思う。
山の形がわかるぐらいの暗さで、夜空と区別がつく。
山の動物達の鳴き声もなく、ただただ自分1人と思いますが、レアは寒くてもまだ凍りつかず流れ聞こえる川の音に、バルコニーの手すり迄歩きます。
川は、夜の暗さを映しザァッーという音とゆるやかな波を描くような音で流れていきます。
毎年冬になると、待ち遠しく楽しみに思っていた雪に魅力が薄れているようと思った。
何日か前に、積もった雪を見たように思っても日にちも曜日も思い出せなくて…
することもない、この部屋で傷が治るたびに、喉をサーベルで、暖炉に首を突っこむのを繰り返していた。
同じことを繰り返して、いると思った。
魔法円を見た時からどこか壊れていると思った。気づくだけでも、いいのかなと思う。
傷が治る迄の間に、幾つかの夢を見た。
覚えているのもあれば、掻き消えてしまって、見たことすら覚えていないのもあると思った。
「夢には、あの子が出てきた。嘘ついているとは思えない。見たのは夢なのに、あの白い女の子が、夢を通してきてくれたと思った。目が覚めたら忘れてしまわないようにと思って、聞いた言葉を端から暗記するように、頭の中で言葉を繰り返した」
レアは、夢の中にフワッと現れた角のある白い小さな女の子。
「最初の言葉は、こうだった」
と白い息が続く中、そっくりそのまま朗読していった。
[王の直属の3人の魔道士は、『災厄や災難を国から追い出せ、その為の労なら惜しまぬ』と魔道士に申し渡されました。
1人の魔道士は、引退した老齢な人形師に仮面を一つ頼みました。
人形師は事故で孫娘を亡くした悲しみから、人形作りから引退していて、仮面の依頼は引き受けませんでした。魔道士が仮面を依頼したのは孫娘の死から6年後のことでした。
人形師は孫娘が亡くなった、その一年後に孫娘そっくりの人形を作りました。
そのことは誰もが、知っていました。
孫娘が一角獣の角を自分にもあったらいいのにと言っていたので、そっくりの人形に角をつけました。ただ、姿形顔は孫娘そっくりでしたが、体の色は白く、目に赤い縁取りを入れて、とても不思議な魅力の人形となっていました。
人形師の意地なのでしょうか。
生き映しのようにそっくり作らなかったのは、人形師はそのことには誰が聞いても答えませんでした。
その人形が、私。
あなたは、私の分身のようなモノなの。
お爺さんが、作りながら泣いていた。
時を返して欲しい… と祈りながら。
お爺さんは、私の前で悔しい気持ちを出したことはない。私を宝物のように、壊れないように扱ってくれていました。
孫娘の誕生日は、3月です。
毎年娘していた、お祝い人形していました。
楽しそうに、嬉しそうに、さみしそうに、孫娘の好きだったお菓子やご馳走を並べる、花で人形を飾りました。
やさしく、髪も撫でてくれました。
生きているように、やさしく微笑みかけてくれました。
当時の人形師で随一の腕を持ち、娘を無くした悲しみから、『私』を作り、最初は私のパーツが破損したらと大変と思い、スペアを作ろうとしたの。手や足や体、顔を。
顔を作った後に、お爺さんは娘が18歳になったら花祭りの乙女のコンテストに出たいといっていた娘の叶わなかった夢を思いだし、18歳の成長した娘の人形を生きてるように作り、スペアで作った顔を、18歳の人形顔につけたの。お爺さんの作る人形の顔は着脱式。
あなたの顔は、私のスペアの顔。
18歳で花まつりに出たかった、人形師の孫娘の顔。綺麗で可愛い、孫娘の顔。
あなたの顔は、孫娘の生き写しの顔。
だから、私の顔のように白くはないでしょ。
孫娘が亡くなったのは15歳の時、18歳の孫娘の体に15歳の顔をつけたの。
18歳に成長した孫娘の顔を作れなかったとは思えないけど、作る気力がなかった。
少し幼い顔だけど、でもそれはあなたには、わからないわよね。
魔道士に『災難や事故、争い事を防ぐのに協力して欲しい』と言われ、孫娘を事故で無くした悲しみが、事故や災難といったものが国から無くなるならと、私のような気持ちになる者が無くなるならとお爺さんは思い、魔道士に『それなら』と言って、仮面渡したの。
お爺さんの心に、マスクを作るスィッチは入らなかった。その顔は、私の顔でもあるけど、あなたの顔になった」
ただ、忘れてしまわないようにと暗記するように聞いていた私は、口をきいていた。
「マスクだけ?」
「そう、仮面だけ。魔道士達は仮面だけ、必要だった」
「じゃあ、この体は?」]
私が、そう聞くと角のある白い小さな女の子。はボヤけるように消え、目が覚めたの。
1人取り残されるように。
天蓋の蓋を外したような星が煌めく夜空を見上げ、川の流れる音とひんやりする空気に、レアはブルっとし、長袖のワンピース姿のままであったレアは、部屋に戻って行きました。
レアは、暖炉に火を入れました。
赤い炎はゆらゆらと、明るく暖かく、見ると机の上の時計は9時。
台所の時計のように、
「チクタク、チクタク、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、ボーン」
と数字の数だけ鳴りません。
振り子がついていない、置き時計です。
レアは、なんとなく台所の時計と同じ音が鳴るのがいいなと思います。
お風呂に入りたいと思っても、この時間では入れません。お風呂は、夜6時迄です。
暖炉から離れたくはありませんが、夕食を食べようと思いました。
レアは、コートを着て、床穴から梯子で降りて行きます。
朝早くても、昼でも2階は天井近くに窓一つで暗く寒く、台所が釜戸に火がついてなければ、その部屋に蝋燭もなく暗く、冬は毎回、深い洞穴や地底探検でもしにいくような気持ちと、梯子を踏み外さないように、降りて行くレアでしたが、今のレアにはその気持ちがありません。
冬になると夏が恋しくなり、夏は雪を待ち遠しく思っていた自分が、いないようにレアは思っていました。
用意してある夕食は、豪華でした。
牛の脛肉のスープに、サラダに木の子のお惣菜にパンに木の実のクッキー。
スープ以外は冷たいですが、レアはスープを熱く温めてる大きな釜戸の前で、椅子に座りながら、スープをサラダを食べています。
レアは、小さな女の子の夢を見た事で、初めて魔法円を見た時のことを反芻しだしました。
まざまざと、映像が頭の中で詳細に流れ出しました。
レアは、部屋の絨毯を捲れるだけめくりました。ベッドや棚で動かない部分は無視して、どんどんめくっていきました。
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レア 囚われの身12 🏰 (仮題)
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