「陽炎」1 二次小説 仮面の忍者赤影 4016文字
「説教なんか聞かないよ。おいらは、もう一人前の忍者だ」青影は、自分を呼んだ父親を面前に胡座組み腕を組み、囲炉裏を挟んで言った
「誰が説教をすると言った?ん。赤影殿や白影殿からお前の話は聞いておる。数々のお役目をこなし、助けられておると。お二人とも気をつこうておられるとも思い、こと細かく聞き申したが、お二人の言う事に間違いはないと思うたしだい。青影、よく成長したな。わしは嬉しく思う」
青影は、てっきり説教と思っていた父からの意外な言葉に、面くらい照れるように思い、だからおいらはと言おうとした言葉の前に、先に父親の読唇術の言葉に止められた
「ここから先は、読唇術で。お前の成長を見ようぞ。決して声を出すでないぞ」と無音で言い渡せられた
それは、昼前の事であった
その頃、燦々とした太陽の明るさの中、陽炎は母と3里先の帰り道の途中であった。手に入る珍しい薬草があると知り、母と一緒に朝立ち、夕刻5時過ぎには戻り、お役目から戻った青影と久々の家族団欒に母共々と、楽しく母と喋っていた
「今頃、父上とお話している頃ね」
「楽しみにしていたものね、父上、どの位成長しているか、みてくれようと」母と娘はたわいなく笑いあい、薬草を分けてくれる家迄、あと少しであった
そして、青影と父親の読唇術合戦が始まった
庭には、箒をしながら見守る土蜘蛛使いの使用人が静かにいた
「赤影殿、白影殿の言うように、よく成長をした」気勢を削がれたものの、うんうんと頷く青影
突如、ここから先は読唇術と言われ、ついていってる青影
「今回の任務には、お前の姉陽炎も同行する。お主が成長したからこそ、こたびのお役目に陽炎の同行を許した。陽炎にもお役目はある」ちょっと驚く、青影。声が出ない分動作が大きようで、まあこやつ元々動作大きいしと苦い顔をする、青影の父親
「青影、おぬしに伝えておく事がある。姉陽炎を敵から守れ」
「今回のおいら達の役目と、姉ちゃんのお役目が被るのだろう!当然じゃないか?まして、姉ちゃんは、目が見えないんだぜ」
「そうではないが、その前に青影、言葉の使い方赤影殿や白影殿を真似よ。その言葉の使い方では、幼さが抜けん。折角成長しても、はたからは分からぬ。おいらは、おいらはではない。人たる者、見た目の器もそれにたる行儀も言葉も必要と言う事、わかっておろう」
声は無音であっても、最後は竹を割る勢いで言い放つ父
「姉、陽炎のことであるが、三つ守れ。姉陽炎に刀、投石等で体を傷つけ血を出させない。口にさせない」
「なんだ、それ」
「そう言う所と言っておる。態度と言葉」
(ガキぽさが抜けないから成長したと褒めて言い聞かそうとしておるのに、畜生な部分がないだけマシだが)と父は思うも顔に出さず、当の青影は、その位いいだろと言う顔だ
「荒事があるのは十分わかっておるが、敵や自分達の傷ついた体の血を姉につけない。刀などの返り血を浴びせ無いと言う事だ。まだ、終わっておらん」青影が勢いよく言い換えそうの感じに、父平造は、膝から右手を上げ手の平を向け、青影を制す(勿論、読唇術で)
青影は、いいそうになったのを止め、腕を組んだまま少しむくれた顔する
「相手がいい終わる前に疑問に思った事をすぐ口にする所を直しなさい(絶対お二人の前でも、やっとるな)」
「陽炎に、絶対血を口につけさせないように」
「なんか、あるのか姉ちゃん?」意表をつく言葉に、身を乗り出して言う青影(勿論無音)
「いずれお主にもわかろうが、この事は赤影殿白影殿に知られてはならぬ」
「えっ」
「お二人には関わりはない、またお二人はこの事は知らぬ。影の一族も。この事は、我が身内のみ」
「と言うことは、母ちゃんと爺ちゃんは」
「知っておる」
「•••変化するのか」
「陽炎のお役目は、目の事もあるので我々家族の者が同行しておった今迄。まあ、避けられる物は避けておった」
「今回のお役目は、例の物と言う事もあり避けられぬ按配となってな、青影お主も十分成長もしておるがもう少し思う所もある」
「赤影さんは知らない...、白影さんも。影の一族誰も」
「お二人には知られぬよう、陽炎を守りなさい。お前は口は軽いが、こう言うことは口は軽くはないからな、安心できる」
「そりゃ、そうだ」と、うんうん頷く青影
「行動が、ひょっとこなのが気がかりな所」
「・・・頼むのになんだ、それは」
「頼むからこそだ」(”それ”で終わらなかっただけマシか、以前なら身を乗り出していた、姿勢崩さないしよしとするか... 言いたい事は山程あるが、今はだな)と、息子青影のフンとした態度を見て思う父平造は、気を取り直して言う
「三つ守ること。陽炎の身体を傷つけ、血を出させないない。返り血をつけない。血を口にさせない」
「帰ってくる時を、楽しみにしておるぞ」
(心配だらけだけどなー)
「姉ちゃん、何か発作が起きる?病気」
「陽炎は生まれた時から目が見えぬ。が、遠くの音が聞ける事で役にはたっておるが、問題があるとなったら、この里でも難しいだろう」
「姉ちゃんの事なのに、おいらに黙っていたのかよ!」と無音と共に組んでた腕を解き、ふっざけんなテメェの手真似をする
「まだまだ修業中で、モノになってないものに言えるか、小童が」手を前に出し、指で鼻を弾く手真をする
青影は、つい手真似とわかっていても、上半身を後ろに沿り、つい反応してしまった事もあっても、畜生と思う
「さっきさ、お主も十分成長もしておるがもう少し思う所もある、ってなんだよ」勢いよく、親指を立てて、首を切るように横一直線に引く
「ガキにガキって、いっておる!そう言う所よ」フンと横向く、父親
「おいらは、十分に役に立ってんの」
父親を指差し、自分の右頬を軽くパンパンし、三回目で強く叩く動作に、アッカンベーの青影
「お二人がどう言おうと、どんな失敗したかわかるんだよ!ヘタレ等ない猪突猛進の猪が!コロコロしてる分、お2人も言いにくかろう!」
左右の腕を顔の前で構え、シュシュッと素早く気迫ある拳を2回出す、父平造
ここから、お互い囲炉裏を挟んでの応酬合戦に突入になり、その倍速送りの素早い動作についていけるのは、忍者でも屈指の者達であろう
で、平造様もなぁーって、障子の隙間から術師土蜘蛛使いは始まったと思っていた
キッレキッレの応戦が続く中、父の言葉に
青影の腰が浮いた直後、
父平造が、右手の平向け静止の合図
「哎呀ー(アイヤ)、驚いた、驚いた。ひょっとこのお前が、そんな事言おうとは」
父親が、お前はまだまだひよっ子よのジェスチャーをし、中指立ててファッキンユーの手真似にアッカンベーの瞬間、座布団から青影の姿が消えたと術師土蜘蛛は思うとほぼ同時に、青影が座布団の上で胡座で前のめりで、顔が板の間についている
「ゔっ、ゔっゔっ、ちくしょう。ゔっごげないwっww」ふぅー、ふぅーと身動き出来ず、もがきジタバタしたくても、ピタリと動けず這いつくばる青影
「まんまとかかるか」と
父平造は声を出し溜息をつく。しばし5分と見ていたが、右手で払うよう自分の顔の方に手の平を向ける上げる
青影は、急に身体が軽くなり、パッと起き上がり、尻餅ついたように座っている
解説
青影は、胡座で座っていたものをその場でサッと跳躍したのを、父親の影舞で行動を抑えられ、床に這いつくばらされていた。影舞とは相手の手足身体の行動を抑えたり、意のままに操る術である
「父ちゃん、ズルいよ」
「なにを言うとる。これ位、解除せんか。どこが成長しとる」(口真似無音)
「父ちゃん、影舞の名手じゃん」
口真似無音に、合わせる青影(無音)
「関係ないw。成長しておると言うなら、解除せい」
「・・・」
「時におぬし、影舞ちっともできんのか?」
「全然」
「はぁ〜、母さんも出来るのにな。少し位できる片鱗あっても良さそうなのだが。出立する前に散々修練させたのに全く出来んとは」
「おいら、まったくその才はないと思うんだよな、うんうん」
「ある日、突然出来るかもしれんな。出立前に軽くお浚いをするぞ」
(両親名手なら、自分にもその才があっても普通と思いめげるものだが、小奴そう言うのないんだよな。めげないのは、小奴のよい所とも思うが、めげる才自体がないやも知れぬ)
「無駄と思うけどなぁ」と言って、青影はふと思う「姉ちゃんの事もあって出来るといいのか」
「そうだ」
「姉ちゃんに、かけるのか」
「そうだ」
「変化でもするのか?」
「いや、違うが(変化の方がいっそと思うが)まあ、そうとも言えるが。このまま、それは無くなるかも知れず。おぬしが、影舞出来るに越した事はない」と最後の文にかかって、青影が言う
「姉ちゃん、影舞出来るのか!」
「出来るか、阿呆!盲にできるか!目が見えんと出来んわ、影舞は!あんまりあんぽんたんな事言わんでくれ」(あれで出来たら、それこそ化け物)(無音は続いています)
「出来るんかなぁって」
「できんわ!」
無音合戦は続き、青影の中指立てにアッカンベーに、再度火蓋は切られ、障子のしまった十畳程の広さの部屋で親子2人は、猿のように壁に天井に飛び交い張り付きながらのクナイでのやり合いで音が響く
「よいか、壁や床天上に傷をつけるでないぞ」
「母ちゃん、うるさいもんな」
その言い方、母ちゃんが怖いんだろうがあり
「自分の腕の未熟さを、怖いんだろうにしない!わしを軽んじるでない!」
体術の得意な父平造の技を空中で、何度もひらりと交わす青影。が、青影の体を空中で上下逆さに掴み、後方に落下投げ落とそうとするも、
青影変わり身の術でも使ったかのように、ヒラリと身を交わし床に片膝ついての着地。青影のどうだの顔に、父はちょきを出し、親指で首前横一文字引く
二回も捕まるなよの意味で、2人は再戦に突入
空中でクナイの音が鳴る
障子の隙間から見ていた土蜘蛛師
「細かい動きはまだまだだが、まあ成長はされておるようで。さてと昼はにぎりめしだな。この後将棋で一戦しながら食べるであろう」
続く
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