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レア 囚われの身7🏰 (仮題) 2092文字
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第七章🌲🌲🌲
翌朝、レアは秋空の下に立っていました。
風に吹かれ、髪は吹き荒れ、後ろで三つ編みにしていたのですが、風で緩んで崩れて、バサバサに髪は踊っていました。
チェックのショールに長袖のワンピースでも、
寒そうに見えます。
右脚は、なんともないようです。
風は、レアの体をまとわりつくように流れ、冬の寒さを願うような風の冷たさに、紅葉の色がなくなっていってる山に、夏より薄白い空に、待ち遠しい雪を思い
「ここに雪が降っても、山の中を歩いたこともなければ、雪が溶けてびしゃびしゃになってぬかるんだ土の上を歩いたこともない。
雪が溶け出し、のぞく土や緑はここにはなくて、芽吹く植物は何もない。
あるのは、ただの石畳のバルコニー」
と空に山に石畳みと、視線を彷徨わせます。
レアは、石畳の上ではなく、山の中を土の上を歩いてみたい気持ちを、バルコニーから金色の髪の毛を垂らすことで気を紛らわせていましたが、秋冬にはその行動はしません。
濡れた頭が芯から冷たくなって、寒くなるからです。
風は、レアの顔を体を容赦なく叩いていきます。レアはなんとも思っていないようですが
自分の体も風に持っていかれそうなことに(風が強い)と思い、降る雪を積もる雪を楽しみに待つレアは、窓から吹雪く雪を見て、バルコニーに出て、雪を見上げ楽しんでいる自分、あの柔らかい冷たさを、毎年降る迄リアルに思い出すことのない雪の冷たさを思いながら、入浴の時間に部屋に戻って行きました。
髪はボサボサのまま、お湯にドボン。
頭迄お湯につけ濡れ鼠のレアは、髪の毛を肩の長さにハサミでざっくり切っていきます。
ハサミで指を深く切って、血がぼたぼた流れますが、レアは気にしません。
(また)と思ってため息をつき、切った髪の毛は、桶に入れます。
後で台所の扉横に置く事になっていました。
(最近ちょこちょこ怪我をする、小さな怪我だけど。落ちた時、他にどこか打って調子が悪いのかな)
と思い、指に小さく裂いたタオル巻きます。
「揃ってない部分は、乾いてから鏡の前で揃ええればいいし。
髪は切ってもすぐ伸びる、2週間位で足の先迄伸びる。
書物でしか、世界を知らない私だけど。
自分が普通でないことは、知って。
包丁で指を切っても、次の日には治ってる。
腕をぶつけて痣になっても、木の柱のささくれで足を引っ掻いても、階段から落ちても夜には痛みはない。
頭をぶつけてたんこぶを作っても、夜にはたんこぶはない。
本でも、髪伸ばすのに何年もとか、切り傷、骨折治るのに時間かかっている。
手足や顔、みんなと同じ位置にあることは間違いないし、バルコニーから見る村人達と姿形は同じ、私はみんなと何がどう違う?と考えても、私が特異体質と思うだけしか、できない。他に、思いつかない。私が特別で髪が伸び、傷も治るだけなのか?中には、治らないで一生怪我のままの人もいる」
レアは、お話しの色んな登場人物達を思い出し、考えます。
レアは短かくなった髪を簡単に洗い、お風呂から出て、新しい着替えに袖を通し、指に巻いた濡れたタオルを、新しい乾いたタオルに巻き直します。
レアは浴室から出て、台所の扉に目を向け3階に上がって行きました。
何か騒がしいと思いながら、顔を床の穴から出すと、強い風が部屋の中を吹きまわっていて、レアは驚きました。
ショールやタペストリーに、紙やハンガーにかけていた服や、軽いモノが、木の葉や枝と一緒に回っています。
開いていた扉は閉め忘れたのか、風が強くて開いたのかはわかりません。レアは、慌てて扉の前に行き、抵抗の強い風を押し扉を閉めました。
風は止まりましたが、部屋の中は物が正しい位置にはなく、葉っぱと小枝と色々散らかっています。
レアは、部屋のめちゃくちゃさに、吹き出し笑いだします。笑って、笑って苦しそうにしながら、レアは服やクッション、隙間風を塞いでいたくちゃくちゃになったタペストリーを元の位置にかけ直し、散っている本を机の上におき、それでもまだめちゃくちゃに散っているトランプのカードに、チェスの駒に
「飛んでいっちゃったかな?無くなってないといいな」
と言い、またそこで笑い出します。
「自分では、ここまで散らかせない」と
折角お風呂入ったあとなのにと思うと、これ以上片付けをする気になれず
「明日でいいわよね、掃除は」
とレアはいい、倒れている鏡を立て直し、割れてなくてよかった掃除が大変と思い、鏡に揃ってない髪を見て、
「直さなきゃ」
と、下に布を引きその上で髪の長さを揃え、昔と変わらない姿で自分が、鏡に写っているのを見て
「?」を思い、
何か気になったこと、気がついたことがあったのを思い出しましたが、
「なんだった?」
と思いだせないまま、髪の落ちた布は丸めて籠に入れ、きてる服も寝巻きに着替え籠にポンとしました。
「明日、布と服には切った髪がついてますって、紙に書いておかないと」
暖炉回りの枯葉と小枝を入れ暖炉に入れ、火をつけ、座り部屋の中を見回し、
「森の中は、もっと葉っぱ散っていると思うけど、森の中ってこんな感じ」
と楽しがり、夜寝る時はベッドの布団に散っている枯葉にクスクス
「ふふっ」
と笑い、楽しく眠りにつきました。
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レア 囚われの身8 🏰 (仮題)
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