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レア 囚われの身9🏰 (仮題) 1979文字
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第九章🌲🌲🌲
「昨日は...」
と、目が覚めてすぐに、色々ぐるぐるしたことを思いだしながらベッドから起き、雨の音にカーテンを開けると、外には雨が降っていて...
明け方の空は雨で覆われ、どんよりとしたくもった空に井戸の水を逆さにしたような雨に、いつもなら溢れたような水に、この小塔を小舟のように思うのに思うのに、この時はただ…。
空から降る雨に井戸は知らない、本で読んで知ってるだけでと、本の文章を使って思うだけで、そう思うほどの雨を空想の世界を見るように、今日も夢を見たと思った。
一匹の猫の前に、白い仮面をつけた男が立っていた。仮面の目口が仮面一杯に大きくなり、黒い三つの穴は洞穴に変わり、仮面だけが大きく大きく、どこまで大きくなるのと心配ななるのと、黒い洞穴以外の仮面の部分はグレーベージュ色の布のドレープのような皺で、黒い洞穴は猫を飲み込むと思う自分に、猫は身じろぎせずじっとしていて、そこで目が覚めた。
夢は、猫が心配で思い出してみても、巨大化する黒い洞穴は、猫を飲み込みはしなかったようように思い出したり、記憶にないだけと思ったり、見た夢は不思議と言うよりも、絶望の夢を見てるとようと思えても、「夢は夢」と思えないでいた。
「昨日は... 。
私は、自分がいつから…。
ここにいるのか気になって気になって、ナニもせずに、1日考えていた」
レアは、顔を凍りついた顔のように強張らせていた。顔色は、明るいままで。
「どう思い出しても、一番古い記憶と思うのでも、それ以上思い出せないし…。
気がついたら、いた。
この姿で」
(どう考えてもと思う、
鏡に映る自分に)
「何回、季節を繰り返した」と囁く声。
(昔と変わらない姿で。
今の私が、鏡に写っている姿に。
長い年月、もうずっとこうしている
部屋の鏡に映る、引きずるほど長い金髪の髪に白いワンピース姿の自分、自分、自分?)
窓ガラスの外は暗く、気がつくレア。
雨はやんではいても暗い空、時計の針は5時を過ぎていました。
この時期、太陽は昇るのが遅く沈むのが早く、天気も曇りの日が多く太陽を見ない日が続きます。うねる風の音はすざましく、ズザァァァァー、ゴォォォーとうねる風の大きな音は、目の前の暖炉の赤い焚き木の音が、小さく小さくしか聞こえず、夕食迄にはまだまだ時間があり、食べてないお昼は置きっぱなしになっていると、床穴を見下ろしました。
長く長く暗い冬を見るような床穴の台所からは底冷えする寒さが上がってきて、ブルっと震えるレアは寝巻きのままでしたが、台所の床を見てレアははっきりと思いあたるのか、自分が人間ではないことを自覚した顔のようでした。
レアは、テーブルのピッチャーからお水をカップに注ぎ飲み、持ってきていたクッキーを口に入れます。
「人間でないなら、私はナニ?」
レアは、記憶をタンスの引き出しを一つ一つ開けるように思い出し考えていましたが、繰り返す毎日を不思議なように考え始め、またあやふやになりはじめました。
10年、20年、30年と思ったのは、毎年最初に振り積もる銀世界の雪に喜び感動する自分の記憶を頼りにですが、雪に感動する記憶を思い出すたびに、その記憶の多さに、似たり寄ったりの記憶もあって、勝手に記憶を作って増やしてないかと思う気持ちもあり....
「夕食迄待つ?」
と言うと同時に、目に映った暖炉の上に飾ってあるサーベルを手に持ち、夕食迄の時間の退屈しのぎに、ついつい一人遊びをするのと同じに、暖炉の焚き火がドラマティックに思えて、物語の登場人物達のように罪悪に身を浸すように長々台詞を吐き、死んでいく様を演じる気持ちになり、私は自分の首をついサーベルで、
ロマンティックに首をついた。
長い髪を切っても直ぐ伸びるように、傷も怪我もすぐ治るように、治って目が覚めると思ったから。
目が覚めると、刺した傷はなかった。
鏡を見ても、傷はなかった。
ただ敷物に、血が散っていた。
夢ではなく、実際に首を突いたとわかった
刺した時、痛いと思った気持ちが、なかったように思った。
流石にお腹が好き、血の付いた服を変えコートを来て台所に降りると、お昼の用意があり釜戸に火を入れスープを温める。
扉の横のカレンダーには、昨日迄の印(翌日になってから印を入れる)がしてあり、使用人が管理で印をつけていているのは知っていて、それを見ると、首が治るのに丸1日は必要したと理解した。
長い長い冬。
喉を突いてから、チェスもトランプもする気になれず、自分の姿がまったく変わってないことしか思い出せない私は、その事が記憶を曖昧にしていると考え、毎年冬になると待ち遠しく楽しみに思っていた雪に魅力が薄れているようで、私はすることもない、この部屋で傷が治るたびに、首をサーベルで突いた。
悲劇のヒロインのように、物語のヒロインを演じるように、美しく死にたい夢を見るように、
治るたびに首を突いていた。
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レア 囚われの身10🏰 (仮題)