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【スペイン安楽死】 映画『海を飛ぶ夢』が全てを変えた(2024年8月時点の最新情報)

スペインは2021年に6月に安楽死制度が成立しました。
最初の1年間180人に安楽死が施行され、そのうち22人が臓器提供を行い、68件の移植手術も行われたようです。

安楽制度誕生『1周年』時のお祝い動画より

2022年は576件の申請があり、実際に288人が安楽死をされています。
2023年は前年より20%増加の727件の申請がありましたが、実際に認められたのは323人(44%)だけだったそうです。
 
スペインでは1984年設立の通称『DMD』と言われる安楽死協会が積極的に活動しています。スペイン語圏の情報は全てDMDを通して入手しています。

コロンビアが2021年、南米で初の安楽死・認可国になった時もDMDのバックアップがありました
スペインが本拠地ですが、南米ラテンアメリカを含めた主にスペイン語圏で活躍

スペインの現在の安楽死は『適応基準が厳しく』(あと勘ですが日本より官僚的・お役所的に)手続きの進行が"ノロい"ため(?)…
DMDは「申請者の3人に1人が手続きが完了されないうちに死亡してしまっている」と憤慨しています。
一般的には遅くとも1か月以内には申請が通るはずのところ、スペインでは『平均で75日』も掛かっているようです⇩

スペインの毎年の全死亡者数は40万人ちょいである事を考えると、明らかに他国よりは安楽死件数が少な過ぎる印象です。
スペインは『後発組』ですが、先輩の方々から有益なアドバイスをもらって『アクセスビリティ&セーフ―ガード』のバランスを取りながら鋭意アップデートしていってもらいたいですね。
 
ところで『スペインの安楽死制度が成立した切っ掛け』と言ったら、この映画です⇩

原題『The Sea Inside』2004年 アカデミー最優秀外国語映画賞を受賞

アカデミー外国語賞を受賞していますし、日本でも話題になったので御覧になった方も多いでしょう。
安楽死を成立させた最大の功労者は、現実の主人公である『ラモン・サンペドロ』さんと、その親友『ラモナ・マネイロ』さん、他11人のメンバーはもちろんのこと…
それに加えて、この『ノンフィクション映画』だと言い切ることができます。
 
1969年1月、25歳のサンペドロはダイビング事故で負傷してしまい四肢麻痺(頚髄損傷=首から下が麻痺で全く動かない)になってしまい、以後、29年間、寝たきり状態に陥ります。

ダイビング遊びをしていた場所&記念プレート

作家で詩人の才もあった彼は、1993年に自分が安楽死を希望していることを公表し『死ぬ権利』を求めて裁判で闘いますが、敗訴。
そこで彼は『5年の時間をかけて』親友と11人の人々に協力してもらい、入念な自殺の準備を始めます。協力者が自殺ほう助で起訴されないようにです(当時の自殺ほう助罪は10年の懲役刑)。
そして1998年1月11日、親友のマネイロがカメラの背後で録画して見守る中、彼はシアン化カリウムをストローで飲み干し、カメラに向かって「死にたい」を繰り返し、苦しみながら亡くなりました。
マネイロは自殺ほう助の罪で起訴されますが、検察が立証できない程の入念な準備工作をしていたため、マネイロは証拠不十分で釈放されました。
 
彼は死亡前にも書籍を出版していましたし、裁判も行っていたので、すでにスペインでは有名人でした。また死後にも、裁判官と社会の人々に安楽死制度を希望する『公開書簡』も残していたため、この事件の影響は社会全体に大きな波紋を起し、安楽死という言葉と話題が『バズリにバズリ』ました。翌年には、その反響に対応するため政府が渋々ながら公聴会を開いたほどです。
 
2004年に上記の映画が大ヒットして国際的な注目を浴び、国民の91%がカトリック教徒にも関わらず2009年には国民の75%が安楽死に賛成
2017年には85%まで上昇。安楽死制度が成立する頃には驚異の87%まで上昇しました。ちなみに現在でも国民の多くは安楽死制度を強く支持しています。
まさにサンペドロさん&サポーターの大胆な勇気と行動力が社会全体を変革させていきました。
 
ちなみに1998年の自殺から、時効が切れた7年後に親友のマネイロは「愛のためにやった」とTV番組で告白しています。ビデオカメラの電源を入れたあと、同室でカメラの背後で最期まで彼を見守っていました。

実際のラモナ・マネイロさん


私は世界の安楽死をリサーチしていますが、安楽死制度が成立した国の9割以上は『苦悩する者側からの自発的行動』が見られます。
そして彼らの言葉は常に『分かりやすく雄弁』です。読むもの聴く者の心を動かすような豊かなメッセージ性が上手に表現されてますし、不思議なカリスマ性があります。
それはALS患者嘱託殺人の『林優里』さんもそうです…⇩


NHK『彼女は安楽死を選んだ』の小島ミナさんもそう⇩


話題になったTBS報道特集『安楽死を考える』の迎田良子さん⇩


フジテレビ『ザ・ノンフィクション』
【私のママが決めたこと~命と向き合った家族の記録~】 の女性(マユミさん)もXアカウント(@mahomelc)(めいし―さん)で、非常にエモーショナルかつ理性的な、印象に残る文章を数多く綴っています⇩

個人的に私もやりとりしていました
【私のママが決めたこと~命と向き合った家族の記録~】 の女性はこの方@mahomelc


ペルーの『アナ・エストラーダ』さんも同様ですね⇩

アナ・エストラーダさん:ペルーで初めて安楽死にて死去


どの人物も、何というか…腰の据わった『穏やかな覚悟』が感じられます。
決して激情的でもなく、素直で飾り気がなく、しかし、人情味の豊かな語り口や表情を見せてくれます。
『最期の時』『人生の最終段階』
それらを目前にしているからでしょうか…ひとつひとつの言葉に『迫真力』があります。
『安楽死』というテーマを考察する上で、このような視点や観察も今後は大切になってくるのかもしれませんね。
 
ありがとうございます。

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