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むぅにぃ
2021年2月1日 05:45
「そうか、そんなことになっていたんだね」ロファニーはリシアンから、ウィスターの森がなくなるという話を聞いて重々しくうなずいた。「道路ができると、この辺りもきっと騒がしくなるだろうね。静かな雰囲気が好きだったんだがなあ」「おれは、ちっとぐらい賑やかなほうがいいな。それに、店がたくさんできて便利になるじゃねえか」こう歓迎するのはベリオスだ。町へ出るにも、父のクルマで送っていってもらわなければならない
2021年2月8日 05:20
〔「ここが『影の国』なのね」ゼルジーは気味悪そうに辺りを見回す。すべてが色のない世界だった。真っ白な空の下、灰色の大地がどこまでも平坦に広がっている。遮るものなど何もなく、ただ影だけがゆらゆらとうごめいていた。「『木もれ日の王国』の裏側なのだ」金のローブの男、ロファニーが言う。「よくごらん。森も城も、すべてが影となって染みついているだろう?」 確かに、見覚えのある景色だった。城や噴水から湧き上
2021年2月15日 07:15
ゼルジー達は、ニレの木の下に集まって座っていた。セミの鳴き声が次第にやかましくなり、じわじわと暑さが増していく、そんな午前だった。「わたし達、どうして勝てなかったんだろう?」ゼルジーがぽつりと洩らす。「ロファニー兄さん、言ったよね。魔王ロードンは、1度にすべての種類の魔法なんか、防げないって。でも、ぼくらは、同時に魔法を放ったのにさ」パルナンはロファニーを見た。 黙ったままのロファニーに代
2021年2月22日 06:04
気がつけば、明日で夏休みも終わり。子ども達にとって、長いようであっという間だった。 パルナンは、朝から虫かごをぶら下げて森へ出かけようとしていた。「あら、パル」ゼルジーは声をかける。「その虫かご、いっぱいじゃない。空のはなかったの?」「虫かごならほかにもあったよ。今日はこれを持っていくんだ」「でも、それじゃいくらも捕れないじゃない。なんで、それを持っていくわけ?」「捕りに行くんじゃない