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ラブタームーラの魔法昆虫

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2021年7月の記事一覧

13.空の散歩

 ある日曜の朝、浩はなぜか早くに目が覚めてしまった。時計を見ると、まだ5時ちょっと過ぎ。
「もうちょっと眠っておこう」そうつぶやいて、毛布にくるまる。けれど目が冴えてしまい、まったく眠くないのだった。
 毛布をがばっとはねのけると、そのままベッドを下りる。もう、このまま起きてしまおう。
「朝の散歩もいいかもな。ちょっと、ほっつき歩いてくるか」両親は2人ともぐっすり眠っているらしく、家の中はしんと静

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12.化石掘り

 三つ子山を前にして、ラブタームーラ小学校の2年生達がずらっと整列している。居合わせているのは各担任、そして博物館の館長だった。
 美奈子達の担任の小倉先生が言う。
「いいですか、皆さん。これから皆さんには化石掘りをしてもらいます。ここには、まだまだたくさんの化石が埋まっています。もし、化石が出たら館長さんに見てもらいましょう。あなた方の化石が、博物館に並ぶかもしれませんよ」
 続いて、館長が簡単

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11.タイフウ

 長かった夏休みも終わり、ようやく学校が始まった。
「9月に入ったからといって、まだまだ暑い日が続きます。できるだけ日陰を歩いて登下校するようにしましょう」担任の小倉静子先生がそう注意をする。
 外では風がビュンビュンとうなり、葉や枝、そして木そのものを揺らしていた。
「すごい風だな。そういえば、今日はタイフウがくるって言ってたぞ」後ろの席で、浩がそうささやく。
「タイフウってどんなの?」和久が聞

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10.ダイヤモンドカマキリ

 背の高い2本のニレの木が、ざわざわと葉を揺らしながらおしゃべりをしていた。
「今日も暑いのう。雨でも降ればいいんじゃが」
「雨なら、先月までたんと降ったろう。わしはもう十分じゃよ」
「まあ、公園番が毎日水を撒きに来てくれるんで、だいぶ楽だがなあ」
「それに、暑い暑いと言っておっても、じきに秋が来て、すぐ冬だ。わしらの葉がきれいさっぱり抜け落ちるのも、そう遠くはないて」
 ここは2丁目にある中央公

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