【小説】胡蝶の夢(Ⅱ)
訃報が届いてから四日後のことだった。夜勤から帰ると、珍しくカンジが起きて待っていた。バーボンをあおっている。迎え酒だろう。
カンジが黙って指さすテーブルの上には、お盆くらいの大きさの小包が置いてあった。転送印がたくさん押してある。カオリは無雑作に手に取り、差出人を確認する。
「父さん!」
危うく小包を落とすところだった。
「いたずらか何かか?」
「送ったのは本人よ。おやじの筆跡だし」
はやる気持ちを抑え、小包を開けると、一枚の油彩画が出て来た。まさに飛び立たんとする一羽の蝶だ。
「おやじさんの絵か?」
「どうかな……」
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【創作小説】胡蝶の夢
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青春の光と影、愛と孤独、そして死――北海道の札幌郊外や空知地方の美しい自然を背景に、ティーンエイジャーである2人のカオルと1人のカオリが織…
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