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「この時代にあえてアルバム単位で音楽を聴く」第7回Green Day「American Idiot」
今回は、Green DayのコンセプトアルバムAmerican Idiotです
実はポップパンクはちょっと苦手なジャンルで同時代のミュージシャン、ニルヴァーナやオアシス、レッチリなどに比べ、Green Dayはそんなに聞き込んでなかったりします
と、いうわけで、この代表作も聞き込むのは、今回が初めてです
1"American Idiot"
いきなりめちゃめちゃキャッチーで引き込まれました。もちろんGreen Dayの曲は割と全部耳障りがいいんですが、これはその中でも特に印象に残りますね。にしても歌詞…
なんというか、アメリカは悪くも良くもならず、ずっとこんなことをしているんだなぁとなんとなく思いました
2"Jesus of Suburbia"
Ⅰ. Jesus of Suburbia
Ⅱ. City of the Damned
Ⅲ. I Don't Care
Ⅳ. Dearly Beloved
Ⅴ. Tales of Another Broken Home
続いて、2曲目も実にキャッチー。この1、2曲の並びで、もうこれは傑作になるのではと言う感覚はすごくしますよね
などと思っていたら突然の曲展開。そうだ。これはポップパンクオペラコンセプトアルバムだったと言うことを思い出しました。これは確かに斬新。そしてここに使われているすべての曲のメロディーが全てキャッチーで聞き心地が良いところが本当に素晴らしい
特に中盤のリリシズム溢れるメロディーラインは今までのGreen Dayともまた違うものを感じさせます
おそらくのコンセプトアルバムの中心になる大曲だと思います
伝えたいものは1曲目と同じだと思うのですが、この曲の方が歌詞が断片的で抽象的な分普遍性があって壮大で伝わってくるものがあります
そしてそれは確かにこのパンクオペラという形でしか表現できなかったものかもしれません
3"Holiday"
ずっと名曲続きます。
テーマはずっと1曲目から同じことを歌い続けてますね。歌詞の熱さがまさにパンク
実は、Green Dayはピストルズやクラッシュと違い、あまり歌詞に熱いものがあると思っていなかったので、Green Dayってこんなにパンクなんだなと
4"Boulevard of Broken Dreams"
これタイトル素晴らしいですね。同じく1つのコンセプトを突き詰め続けながら物語が続きます。
これは視点がすごく1人の人間の内面にフォーカスしている分、その孤独や閉塞感が他の曲以上に強く浮き彫りになっているような気がします。メロディーの良さも相まって本当に良い曲だなぁと。
ラストの音が厚くなっていくあたり、主人公の閉塞感や道を1人歩いていく感じが浮かぶようです
5"Are We the Waiting"
ここまで来て確信したんですが、これはすごくいいアルバムじゃないですか
ポップパンクオペラと言うのがすごい発明だと言うのもわかります
それにしても、なんて、リリカルでロマンチックな歌詞なんだろう
6 "St. Jimmy"
そして、St.jimmyなるキャラクターが現れます
キャラクター紹介のような歌。もしかしたらこいつがこのアルバム全体を通しての主人公なのだろうか。これってJesus of Suburbiaの主人公と同じ人ですかね?
7 "Give Me Novacaine"
ここにもSt.jimmyが出て来ますね。この辺の流れは、まさに物語を読んでいるかのよう。
小説のように全てが書かれているわけでは無いのですが、その断片断片を聞いていくだけで、確かにまるで映画を見るように物語のシーンがつながり合いながら見えてくるようです
8"She's a Rebel"
これまた新しいキャラクターが出てきたかのようです
別につながりとかは示唆されてないけど、やはり断片的な歌詞を聞いているうちに
どんどん他の曲とつながって、大きな物語を形成しているように感じます
9"Extraordinary Girl"
突然のラブソング、そしてまた新たなるキャラクターの登場
歌詞のことばっかり書いてきましたが
メロディーはここまでずっとキャッチーでリリカル。メロディーだけに限定しても捨て曲が全くないのには驚きます
10"Letter Bomb"
キャラクターが揃い、物語が展開していくような感じを受ける曲です。
これはもしかしたら物語で言うクライマックスに当たるのではないでしょうか?
11"Wake Me Up WhenSeptember Ends"
そして、クライマックスの後に回想が入るようにSt.jimmyの最も精神的な中核に入っていきます。そう、映画でも漫画でもクライマックスの動のシーンの後にキャラクターの内面に分け入って、その動機の本質に迫っていったりしますよね。まさにそのシーンです
おそらく、このアルバム通しての白眉の曲ですし、そうあるべき場所に置かれた曲でもあります
12"Homecoming"
Ⅰ. The Death of St. Jimmy
Ⅱ. East 12th St.
Ⅲ. Nobody Likes You
Ⅳ. Rock and Roll Girlfriend
Ⅴ. We're Coming Home Again
そして主人公は家に帰ります。これは物語のエンドロールにあたるのでしょうか。(まだ1曲残ってるのが気になりますが… )歌詞は主人公の歩みを語っていきます。
聞く側がイメージするのは故郷に向かう主人公の脳内をよぎるいくつもの今までのストーリーの断片。おそらく彼の外部的な状況は変わらず悪いのでしょう。だけど彼の内面で彼にしかわからないところで何らかの革命が起きたのだと思います。実際素晴らしいロードムービーなどでよく描かれるのですが、主人公が取り囲まれている何らかの外部的な問題を解決しようと旅に出て、様々な経験を経て、そして最後の最後は家に戻ってきます。それで外部的な問題は何か解決したかと言うと、別にそうでもないのですが、その「行って帰ってくる」ことにより彼の内面が変化し
「何も変わってないのに爽やか」な終わり方をするのです。メーテルリンクですね。
13"Whatsername"
そして、この曲はエンドロールの後に少しだけ続く映画あるじゃないですか
あれを思い出させます。歌詞は悲しいのですが、メロディーが穏やかでリリカルで何か大切な思い出を反芻するかのような
悲しいけれど、悪くない。
そんなふうに主人公が思ってるような
そこでふと思うのですが、音楽って詩と曲で別の感覚や意味合いを持たしてもいいんだなぁとちょっと思いました。(レディオヘッドとか詩と曲をあえて完全に分裂させている曲とかあって
それによって世界の酷さと人間の美しさ、逆に世界の美しさと人間の醜さだったりを同時に表したりしてますよね)
この曲も歌詞だけ取り出したら、ちょっと悲しすぎる気がするんですが曲の柔らかさがそれを中和し、全体的に
悲しいけれど、悪くない
そんな風な印象が残るような気がするのです
なんかめちゃくちゃ長くなってしまいましたね。最初に書いたように、あまりGreen Dayを好んで聞く方では無いのですがこのアルバムをしっかり聞いて印象が本当に変わりました
というか、まだ全然全貌を読み取ってないと思います。これから2回3回と聞いてみて、さらに他のアルバムにも興味が出てきました。そう。Green Dayはパンクなんだなとそういう感想です。
当たり前のことなのに、僕には意外でした。