さよなら、華開く前に。【オリジナル声劇台本】

「さよなら、華開く前に。」

登場人物:女性1名、男性1名

ある部屋で男女が片付けをしている。
女は何やらダンボールで荷造りをしているようだ。

女「ねぇ、ドライヤー持っていってもいい?一緒に買ったやつだけど。」

男「いいよ。俺こだわりないから新しいの買う。」

女「たこ焼き器は?」

男「1人じゃしないだろ。あげるよ。」

女「私も1人じゃしないなぁ。」

男「女子会とかすれば?」

女「うーん、じゃあ貰おうかな。」

男「テレビも持っていっていいよ。」

女「いいよ、さすがに悪い。」

男「全部新しくしようかなって。」

女「ふうん。その心は?」

男「未練残るから!言わせんな!」

女「ていうか片付け終わらない!お腹すいた!お昼なにもないから買いに行こう。」

男「3丁目のベーカリー?」

女「正解。」

二人は歩いてベーカリーへ向かう。
到着し、パンを選ぶ。

女「ウインナーロールと、レーズンカスタード。食べたいの当ててあげようか。」

男「いいよ、当ててみて。」

女「たまごサンドと塩クロワッサン!」

男「わかってるじゃん。」

女「お見通しだよ、な・ん・で・も。」

男「あ、俺払うから。」

女「なんで?いつも割り勘じゃん。」

男「たぶん最後だろ、こういうの。」

女「…わかった。ごちそうになります。」

ベーカリーを出て並木道を歩く。

女「わぁ、ちょっと風強いね。」

男「俺そっち歩くよ。…桜、咲いてきてるね。」

女「5分咲きくらい?部屋出る頃にはきっと満開だね。」

ザァと風が吹く。男は立ち止まる。

女「どうしたの?」

男「いや、髪、切ったんだなって。」

女「1週間前だよ?今気づいたのか〜。」

男「ごめん。」

女「いいよ。そういうとこ鈍いのは知ってるから。」

男「ごめん。」

女「だから、いいって。行こ?お腹すいた。」

男「ごめん、これからかっこ悪いこと言う。」

女「…やめて。」

男「別れたくない。」

風がまた強く吹く。女は少し黙る。

女「私だって別れたくないに決まってるでしょ…。でも私たちのためにならないんだよ。」

男「やり直せない?どうしても?」

女「どうしても。またきっとどこかですれ違いが起きて、そのたびに傷つくんだよ?嫌だよ…。」

男「…でもまだ一緒にいたい。何気ない会話して、一緒にパン選んで、映画観て、同じことで笑ったり怒ったりしたい。…ごめん、かっこ悪くて。」

女「いいよ。…そういう素直なところが好きだから…。」

男「…好きなら、また…。」

女は涙ぐむ。

女「好きだから別れるの!嫌いになんかなりたくないよ…。」

男「俺も好きなんだよ…。」

女「だからさ、いい思い出のまま、さよならしよう。決めたでしょ?」

少しの沈黙。

男「わかった。…たまに思い出すのは?」

女「もちろんいいよ。私だって忘れられないもん。どれだけ好きだと思ってるの?」

男「そうだよな…。ごめん。」

女「もう謝るの禁止!」

男「…桜、満開になったらもういないのか。」

女「そうだねぇ。寂しくなるね。」

男「寂しいな。」

風が吹く。

End.


こちらの作品はRadiotalk内であーちゃん🫧が開催しました声劇企画「桜が咲いたら」にて寄稿した台本になります。

企画のアーカイブはこちら


演じて頂いたのは、はむたん🐹とみう等さん。
みう等さんの番組にて、声劇音源が配信されております☺️


また、この話をより楽しめるようにと、お二人が歌も配信してくれています!
はむたん🐹の番組にて聴けますので、こちらも合わせてお楽しみください✨


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