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お茶好きの隠居のカーヴィング作品とエッセイ-昔ばなし

11.  ツバメ

ツバメのカーヴィング作品

ツバメに寄せて


見てごらん
今日もツバメが宙返り
トンボ相手に空中戦
真っ青お空に、お日様ニコリ
だけど、こちらは大変だ
だって、僕らは生きてるもん
家には赤ちゃん待ってるもん
生きるって、
こうして毎日過ごすこと
今日も一日過ぎてゆく
あしたはあしたの風が吹く
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帰り来しつばくらめ鳴く梁の上
我も声掛くお帰りなさい

雛鳥のかそけき声を待つ我は
父つばくらめと同じ心地ぞ

我が街のつばくらめ皆飛び去りぬ
雛の声せぬ駅の寂しさ

Swallows! good friends of ours


All the swallows have gone south from my town.
The empty nests at the station have been reft silent,
While, till night, the din of the station doesn’t die down.
Till next summer the nests will stand waiting to be fixed. 
And yet the train traffic shakes them violent.
In next summer, their owners will be in our midst.

All the swallows have come back to my town,
Along with gray and black banded dragonflies.
In balmy skies, the birds are giving hot chase after them around.
Baby swallows are growing in the nests that’ve been fixed.
Every summer, it looks the same in one’s eyes.
How well,  with humans, swallows are mixed!


私が子供の頃、ツバメはスズメと共に最も身近な鳥でした。 晩春から盛夏に掛けては、親鳥が餌を運んでくる度に鳴く雛鳥の声が町のあちこちから聞こえてきたものです。 ところが、年を追う毎にツバメはその数を減らしていて、彼等の巣もだいぶ郊外に行かないと見られないようになってしまいました。 一寸した都会では道路の他、川岸までもアスファルトやコンクリートで固められてしまい、巣の材料の泥も餌になる虫も中々見つけることが難しい場所ばかりになったのです。 そのため、彼等は満足な子育てが出来なくなってしまいました。 スズメの減少もツバメの場合と共通しています。 屋根瓦や破風の隙間など昔の家屋には豊富に有った営巣場所は、家屋が新建材による新設計のものとなったので見つけられず、子育てのための虫も激減していることが主原因です。 人間がこれらの鳥達との共生に配慮を欠いた結果であり悲しいことです。

生態系破壊の実情と法規制の不備について


あらゆる生物は、原因を問わずその棲息地に環境変化が起これば、対応してより好都合な環境を求めて生活の場所もスタイルも変え、したたかに生きようとします。 鳥類の例で言えば、昨今のニューヨーク市マンハッタン島のド真ん中には、かなりの数のハヤブサ(Peregrine Falcon)が住んでいます。 元々、山地、川岸や海岸の絶壁地帯に住んでいたこの鳥が大都会に進出したのは、高層ビルの窓枠や屋上の一部が故地の断崖絶壁の窪地・テラスと同様に営巣場所として機能することや、公園のハトやカモなどこの街が豊富な食糧を提供することを彼等が学習した結果です。 我が国でも全く同様の現象がチョウゲンボウやツミのような小型猛禽類において起こっており、本来ならば高原や山地に居るべき筈の彼等が、ニューヨークのハヤブサと同様の理由で都心を含む大都会あるいはその近郊へ進出しているのです。 
ツバメにしてもスズメにしても上に挙げた例と同様に、元来は山地に住んでいた鳥でした。 彼等が人間の居住地区で生活するようになったのは、それが彼等にとって好都合であることを学習した結果である、と考えられています。 ツバメは駅舎の梁や壁、商家の軒先など、人が頻繁に出入りする場所の上部に営巣します。 人の存在が、彼等の天敵であるカラスやヘビなどを巣に近づけさせないので雛を守ることが出来るからです。 ところが今日では前述したように人里の多く特に大都市は、もはや彼等に好ましい環境を与えてくれません。 今でも従来の環境が残っている田舎の人里のみが彼等に快適な住空間を提供し続けてはいるのですが、そういう場所もドンドン減少しつつあるので、いつの日か棲息域に関して彼等の先祖帰りが起こっても不思議ではないでしょう。
現在の大都市部の鳥類に関する生態系変化として、ツバメ、スズメの激減、小型猛禽類の侵入の他にも、逃げたペットのガビチョウ、ソウシチョウやインコ類の野生化・自然繁殖が顕著に見られます。 更に、このインコ類や外来昆虫の害を受けて部分的に枯死してしまった枝を持つ街路樹が増えたために、生きた樹木の枯れ枝を営巣場所とするコゲラが山地を捨てて都会へ進出して来ている例があります。 このように生態系変化は、変化が変化を呼び込む連鎖的な現象なのです。 今はまだ観察されていなくても、更に新しい生態系の変動があっても不思議ではありません。 こういう連鎖反応もいつかどこかで止まり、新しい平衡状態に達する筈ですがそれには相当に長い時間が掛かると考えられます。 

これ以上の生態系破壊をどうしたら食い止めることができるのでしょうか? 既に大きく進行してしまった地球温暖化/気候変動自体が生態系の変動に全く影響しないわけは無いので、単に外来生物を排除し在来種の動植物を増殖させても、その中に温暖化/気候変動に耐えられない種が含まれていればそういう生物を生存させる事自体が困難となります。 しかし、完全には元に戻せなくてもその結果が以前と比べてより望ましいものになっていれば良いのです。 その変化傾向を見ながら改変を強化することにより、更に望ましい結果を得られる可能性は低くないのですからそれを実行し続ける価値は十分にあるのです。 ただし、実際にそういう努力・試みはどれ程為されているのでしょう? 為されているとしても、動植物生態学の専門家等がその地域の現状を考慮して検討・設計した周到な計画に基づいて行われているものなのでしょうか?

今の我々が直面している好ましからざる生態系自体が過去70年足らずの人の活動の結果として出来あがったものです。 当時、人々は自分達の経済活動が自分を含めて人の健康や環境/生態系に与える悪影響について、ほとんど何も考えずに1960~70年代のいわゆる「公害問題」を惹き起こしてしまいました。 公害が大きな社会問題となり、周知の通りにその「解決」には長い長い年月が掛かったわけです。 勿論、今でもマイクロ・プラスティックスや環境ホルモンのような、新しくて未解決な公害問題が残っていることを忘れてはいけませんが、その当時から大きな公害問題の影で「生態系の乱れ」も同時かつ着実に進行していたのです。 しかし、人の日常生活には直接的に影響するものではなかったので世人の注意を惹くこともなく放置され続けました。 外来種の侵略対策が叫ばれ具体化されたのは、漸く2004年になってからであって、この年にいわゆる外来生物法が成立したわけです。
このブログの前項 10. マガン で書いたことですが、念のため、繰り返します。 外来生物法は特に「既に問題が大きくなってしまったか、その可能性が高い外来生物」の輸入、その他を規制しています。 「特定外来生物」、「未判定外来生物」、「種類名証明書添付が必要な生物」という3つの範疇に指定された種についての規制のみで、これらの指定種以外「まだ、問題が大きくないか、問題になっていない生物」は対象外です。 法の中身がそういうものであれば「まだ問題が大きくないのかどうか」を誰がどう判断するのか? ということがポイントになります。
現に、この法の政令指定に際してとんでもないことが起きました。 環境省は特定外来生物の選定に関し形式的には専門家への諮問をしたものの、外来生物を利用する産業の利益を優先し、諮問委員会の意見のほとんど全てを最終的には無視したのです。(例えば、温室トマト受粉用セイヨウマルハナバチや、のり面緑化・砂防用シナダレスズメガヤ等の外来牧草は選定されなかったのです。---鷲谷いずみ「天と地と人の間で 生態学から広がる世界」P.93軽視される科学---特定外来生物の政令指定 岩波書店 2006年) 結局、実質的な有効性が極めて乏しい法律が出来ただけでした。 外来生物法に限らず、外国産有害動植物の持ち込み等を管理・制限するその他の関連法規の問題点は、それらが極めて不徹底で互いにちぐはぐなことです。 それは役所の縦割りと縄張り争いの結果の産物ですし、何よりも従来から指摘されているように、省益を国益に優先し、自分達の天下り先の確保を最優先事項とし、それを提供する産業界に気兼ねし癒着する霞が関の役人達と、同様に産業界からの大口献金を当てにする政治家達による官民癒着構造に基づいて作られた数ある「骨抜き・ざる法規」の一例にすぎません。

外来生物に関わる主な関連法には下記があります。

1.検疫法
2.ワシントン条約(CITES)
3.狂犬病予防法
4.家畜伝染病予防法
5.特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)
6.絶滅のおそれのある野生動物の種の保存に関する法律(種の保存法)7.鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(狩猟法)
8.感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)

新しく起きてしまった問題に対処するために新法を作っても、既存法を補完するその新法の所轄省庁が既存法のそれと異なれば、縦割り行政・セクショナリズムの弊害がもろに出ることになります。 既存法による規定では不備だから新法を作ったのに、既存法所轄部署は飽く迄、既存法のみに留まった行政を行い、新法に関しては「我関せず」という態度を取り、新法所轄部署も旧法に対して同様の態度を取ります。 そのため全体としてその問題に対する法の有効性が著しく損なわれることになるのです。
外来生物の輸入に関する各省のスタンスを例に挙げてみます。 動物の種類によって農林水産省の動物検疫所、厚生労働省の検疫所と所轄が違うようです。 どうしてそんなことで所轄を変えるのかは私には全く不明かつ理解不能です。 例えば、厚生労働省がネット上に乗せている下記URLを見ると「アライグマは農林水産省の動物検疫所で検疫を受け一定の手続きをすれば、外国からの持ち込みは許可される」と、一見して受け取れることが書いてあります。

https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000120553.pdf

これは厚生労働省所管の感染症法56条2の「輸入動物が原因の感染症対策」の見地のみからの説明と思われます。
一方、基本的には環境省所管の外来生物法ではアライグマを特定外来生物に指定していて、原則として「輸入禁止」なのです。 しかし、そんな事は、上記のURLには何処にも書いていません。 すると「農林水産省の検疫を通って国内にアライグマを持ち込んだところ、外来生物法違反で後で罰せられる」ということが起こり得るのでしょうか?
このURL記事には目立たず小さくではありますが、「他法令(CITES、外来生物法等)による規制が生じる可能性があります」とも書いています。 上記のケースに対して、これによって保険を掛けている訳ですね。
外来生物法では、例外として「研究目的等で主務大臣が認めた場合は、特定外来生物の輸入は許可する」事になっています。 この法29条で主務大臣は通常は環境大臣と決めていますが「農業水産業に係る被害の防止に係る事項」についての主務大臣は環境大臣と農林水産大臣の二人です。 アライグマの場合は、農業水産業に係る直接被害は予測されないと思うので多分、主務大臣は環境大臣になるのでしょう。 実際にアライグマの持ち込み許可を農林水産省の検疫所に申請したら、環境省からの例外許可を取っているかどうかを確認することになっているのかも知れませんが実際はどうでしょうか? 私は試みたことがないので分かりません。
又、厚生労働省の下記URLには「動物の輸入届出制度に関する質疑集」が出ています。

https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou12/16.html

ここにも、問6で「輸入が禁止されている動物は?」に対する答えとして、アライグマは輸入禁止動物に入っていません。 アライグマに対する規制は狂犬病予防法(動物検疫所)とあるだけです。 即ち、やはり厚生労働省所管の感染症法56条2の範疇のみに基づいてだけの記事です。 最初に掲げたURLもそうですが、ここでも、いかにも「これだけが動植物輸入のポイントです」という書きぶりです。 が、最後に問51として「動物の輸入に関する関連法」を挙げ、「詳細については各法律を所管する行政機関にお問い合わせ下さい」という一文で保険を掛けています。 
これは「縦割り行政の悪弊」、「たらい回し行政」を自ら認めるが如き一文と思いますが、どうでしょうか? 
大体、「アライグマの輸入」という、たった一つの許可手続きに厚生省、農林水産省、環境省の3省が関係し、別々にお伺いを立てねばならないこと自体が役所の縄張り主義の極みと見えてしまいます。 これでは中央政府からの具体的かつ一貫性のあるエコシステム維持政策など全く期待出来ません。

そして私見ですが、外来生物法はあまりにも生ぬるくて話にもなりません。 既に野生化被害の出てしまった種について輸入禁止をするのは当然です。 しかし「そんな事はしないよりマシ」の話で、問題になっているアライグマを今更ながら輸入禁止にしたところでアライグマの自然増加を抑えられるわけがないでしょう。 外来生物法には、前述の通り「未判定外来生物」という指定範疇もあり、この指定種の輸入に関しては「未判定外来生物の輸入手続き」を取り、「審査の結果、被害を及ぼす恐れが無い場合は許される」ということになっています。 しかしこれも極めて曲者であって「被害を及ぼす恐れが無いケース」など本来的にあり得ません。 例えば昔、温暖化の進展が目に付かなかった時、熱帯魚は「たとえ日本の川に放たれても、日本の冬が寒冷であるため死滅するので問題は起こらない」と考えられていました。 ところが実際には何が起こったでしょうか? 東京の多摩川はタマゾン川と揶揄されるように熱帯魚が一年中泳いでいます。 その時点で「問題が無い」と判定されても、その後の環境変化や想定外の原因でどのような事が起こるのかは予測不能です。 この国では「想定外でした」と言えば、何でも「それで済む」ようです。 こういう「甘え」、「無責任」、「非合理」には本当に腹が立ちます。 判定など不要であって、外来種の持ち込みは基本的に全てを「文句無しに禁ずるべき」なのです。 動物園や水族館等の公共施設、大学・研究機関による輸入に対して全てを禁ずるのは難しいでしょうが、審査を厳しくして実体を調査し、名前だけの施設・機関等は認めないことです。 その施設・機関での飼育が始まって後の監督・管理を厳しくフォローすることであり、外来種のリリース等不法な行為に対しては罰則を厳しくすることです。 そして逃げた生物を徹底的に探しだし、取り戻すか処分することを義務化すべきです。 観光施設・動物園から逃げ出して放置され、野生化した特定外来生物、キョンの例を考えて下さい。 例えば、ライオンやトラの様な猛獣が動物園から逃げたら、警察も出動して大騒ぎとなり必死で捕獲しようとするでしょう。 ところが一方、人を襲わないキョンなら放っておいても良いとされ、この酷い結果を招きました。
前述したように、外来生物法では「農業水産業に係る被害の防止に係る事項についての主務大臣は環境大臣と農林水産大臣である」という規定があります。 これも曲者です。 例えば市街地の家庭の菜園や花壇の植物も農家の畑の作物も見境なくキョンは食害を与えるでしょう。 家庭の菜園や花壇の食害に対する対策は環境省が担当し、農家の畑の作物の被害に対する対策は、環境省と農林水産省の両方の管轄ということになるのですか? 具体的にどういうケース、問題点に関して2省がどう管轄を分けるのかは明確ではありません。 こうなれば、そういう厄介な問題に対して2省が責任所在を曖昧にし、互いに擦り付け合う余地が十分にありそうですね。
こういう縄張り根性+ご都合主義のお役所仕事の結果として、気付いてみれば外来生物の新規侵入とその棲息数の激増を招く一方、在来生物においてはその棲息域の好ましからざる変化・棲息数のバランス崩壊を誘発し、現在見られる「問題だらけ」の生態系が出来上がってしまったのです。
旧来の生態系においては、種間の絶妙のバランスと棲息域の安定が長い間保たれて来たのですが、それが平衡に達し安定化する迄にも長い時間が必要であった筈です。 我が国も明治初期の頃までは、人もその旧生態系の一員として安定して組み込まれていました。 しかし今日、我々は自身の手で地球温暖化/気候変動のみならず、それだけに原因を求めることの出来ない明らかに人災としか考えられない理由で、著しい生態系変化をも惹き起こしてしまったのです。
これらの問題を解決することは、並大抵のことでは出来ないことを認識しつつも、「愚公、山を移す」ような地道な努力を続けるしかないのです。


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