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うそをはく(134)
市場を超越した存在が公表された。
雪山の奥地で確認されたその存在は、一切の感情を介さない冷徹な存在で、執事も吃驚仰天で喉を詰まらせて救急車で運ばれた。
執事は金策に困っていたのか、エゾシカの声帯模写で一山当てようと必死に特訓していた。鏡餅に手を合わせては、ものまね番組のオファーを神に懇願した。クッションに顔を埋め言葉にならない叫びを上げたこともあった。
経典の末尾に揚げ餃子を書き並べて悦に入っていた執事の元に、倫理観が降りてきて放置された。すると、山の木々たちは神々しく光り、かみ合わせが悪くなって執事は豆腐も噛み切れなくなってしまった。
執事の言葉の全てを聞き流していた主人は仲間内だけで採れた山菜や肉を取引している内に、市場を超越した存在に成った。
もっと、自分の中で悶々とせずに外に開いて、自然な流れに身を預けられるようになりたいな。