数日前の夢の話を掌編小説っぽく書いただけ
神様は魔球を投げる。
コンマ1秒毎に速度が激しく変化し、軌道は放物線を描かない。
ぼくが人生みたいだねと言うと神は鼻で笑った。鼻なんてないくせに。
「空中に任意の点を取り、ボールの速度を求めなさい」
神が呟く。
ぼくは嘔吐する。
嘔吐したせいで球を受け損ねる。
吐瀉物は水色のもやになって消え失せ、ぼくの体はいっそう色を失っていく。
「速度と位置は一緒には定められんやろがい」
「にゃーん」
神様が怒るとぼくの内臓が1つ潰れる。ランダムなのか任意なのかは知らない。
「任意の内臓を潰し、絶命までの速度を求めなさい」
ぼくの口が言った。
そのまま神に殴りかかると、無数の手が、無数のボールをぼくに投げつけてくる。ぽむぽむと骨が歪んで軋んで折れる音がした。
体が蜂の巣になりそうだった。けれど、そう上手くはいかない。
そういえば、ハチノスというホルモンが美味しいよ。食べてみて。
口から鉄臭いゲップが迫り上がる。内側が潰れたせいなのか、体にめり込むボールのせいなのかよく分からない。
「今ここを点にすれば、速度としての幸福は存在しない」
誰かが言った。多分部屋に置いてある観葉植物が喋ったんだと思う。
ぼくは気づいた。人生は線じゃなくて点でできているんだ。
「点描画だ!」
と目覚まし時計が叫び出し、今日も死にたい朝がぼくを迎えにきた。
おはようございます。