人間ドッキリ

「さあさあ今日はいつにも増して完璧な晴天です。素晴らしい葬式日和ではありませんか!それでは早速故人を紹介いたします」
広場で司会者風の男が拡声器を使って何やらわけのわからないことを叫んでいる。
「故人の佐藤まりさん、25歳独身、アパレル店員です!」
さわやかな笑顔で司会者風の男がそう言うと、2人の男が棺桶を運んできて司会者の前に置いた。1人は若い男、もう1人は白髪交じりの男だった。
これは夢なのか?と私は自分の頬をつねってみた。というのも、25歳独身アパレル店員の佐藤まりとは、まさに私のことであるからだ。しかし頬はしっかり痛かった。だとしたら一体あの棺桶の中には何が入っているのだというのだろうか。
私は恐る恐る棺桶の方に近づいてみた。
「それでは、蓋を開けさせていただきます。それでは、三、二、一、はいー!佐藤さん、長い間大変お待たせしてしまいました。お元気ですか?」
私は棺桶の中を除いてみた。するとそこにいたのは腹が半分無くなっていて翅はボロボロになっている一匹の巨大な白い蛾だった。
「これは何ですか?」
私は混乱して司会者風の男に聞いた。
しかし男は何も喋らず、気味が悪いほどにさわやかな笑顔のまま、パチンと指を鳴らした。
するとさきほど棺桶を運んでいた二人の男が駆けつけてきて、待っていましたと言わんばかりにクラッカーの紐を引き、中のテープやらキラキラやらを私に浴びせた。
「ドッキリ、大成功!!」
「え?」
とにかく訳が分からなかった。
気が付けば私は、道路の隅で動けなくなっていた。
あの男の正体も、佐藤まりが誰なのかも、何も思考ができなくなっていて、結局何も分からなくなってしまった。

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