加法定理が腑に落ちた時には、すでに大学受験も過ぎ去っていました(2)
前の記事では、筆者が高校生や大学生の頃に理解を置いてけぼりにしてきた三角関数の加法定理について、その後に回転変換の合成という理解で腑に落ちることが出来た旨話題の発端とし、筆者が腑に落ちるまでの自分語りの準備として、高校で習う回転変換の確認を始めた所まで到達しました。今回はその続きです。
続・座標の回転変換に関する再確認
さて前回の図2を再掲すると次の通りです。
ここから
$${a'=aとbを含む計算式\\b'=aとbを含む計算式}$$
の関係を探し出すわけですが、何か高度な理論を展開するわけではなく、目で見て定規を当てた上で、小学校の算数で習った図形の規則を当てはめて「あてずっぽうでなく成立する」ことを確認するだけです。
$${a'}$$を$${O}$$系の座標で表現する場合、図上は例えば次の図3の様な長さの関係を見出します(他のやりかたでもいいと思います)。
$${a'}$$は、紫の線の長さから緑の線の長さを引いた値です。
座標の回転角$${\theta}$$が定まっているので、紫は自明、緑は一番左上$${b}$$のすぐ脇の緑が自明でその他の緑は三角形の合同や平行線が云々で全て長さが等しいですので、結局$${a'}$$は
$${a' = a\cos\theta -b\sin\theta}$$
です。
もうひとつ$${b'}$$について求めると、こちらも$${a'}$$と同様に図を眺めてみるとよさそうなのですが、例えば図4の様に観てみましょうか($${a'}$$と同様にこちらも他のやりかたでも大丈夫です)。
$${b'}$$は図4の緑の線の長さと紫の線の長さを足したものになりそうです。
こちらも座標の回転角$${\theta}$$が定まっていますから、ちょっとわかりづらいですが緑の線の長さは自明、紫の線については、$${\theta}$$と重なっていて一寸作図を失敗したなあと後悔している紫線が自明で、3つの紫線が三角形の合同や平行線云々で同じ長さですから、従って、
$${b' = a\sin\theta +b\cos\theta}$$
となります。
最後に$${a'}$$への変換式と$${b'}$$への変換式を並べると完成です。
$${a'=a\cos\theta -b\sin\theta\\b'=a\sin\theta +b\cos\theta}$$
これらが、$${O}$$系上の$${(a,b)}$$を$${O'}$$系上の$${(a',b')}$$へ変換する、回転する座標変換の式となります。なる筈です。
これでおしまいでも問題ありません。しかしながら、これを行列形式で表現しない限り間違いであると言い出す方々への対応と、次の議論の際の見通しの為と、2つの理由から、行列の形で書き換えたものが次式です。意味はまったく同じです。
$${\begin{pmatrix}a'\\b'\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\cos\theta&-\sin\theta\\\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix}\begin{pmatrix}a\\b\end{pmatrix}}$$
この、行列とベクトルの積の形式に整理した式中にある行列、$${\begin{pmatrix}\cos\theta&-\sin\theta\\\sin\theta&\cos\theta\end{pmatrix}}$$が、回転行列とかそういう通称で呼ばれる典型的な、高校で学習する行列になるわけでしょう。要は、数値2つ一組に対して適当に角度$${\theta}$$を決め打ちしてこの行列を左から掛けてあげると、なんでもかんでも回転してしまう、というわけです。
さて、これで加法定理に関する筆者の自分語りの準備が整いました。準備にお付き合い頂き、ありがとうございました。もうお忘れかもしれませんが、目的はこれからの所なのです。
次の記事に続きます。