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オイラーの等式を理解する思考過程の断絶(1)

 オイラーの等式というのは出てくる各値の組み合わせが象徴的で、趣味的に人気のある式です。これの証明や直感的理解自体は、ネットや書籍にたくさんの方法が説明されており、さらに革新的な素晴らしき記述をするような余地は無いのです。ここでは、厳密な証明ではなく直感的理解を一段一段進めると途中でどうしてもつながらない所があったという、筆者固有の過去の情けない事情を回顧します。

オイラーの等式

 オイラーは多くの業績を残した数学者物理学者ですから、その名を関した研究成果はたくさん存在します。私が最初に思いつくのは、理想流体のオイラー方程式ですね。
 それはちょっと置いておくとして、ここで取り上げたいオイラーの別の業績、有名なオイラーの等式というものは次の通りです。

$${ e^{i\pi} = -1 }$$

自然対数の底、虚数単位、円周率、マイナス1というなんとも象徴的な値だけで構成されています。見た目の美しさで人気の高い数式ですね。東京都心の大きな書店の関連グッズコーナーで、これがプリントされたTシャツを見かけたことがあります。
 数式で人気云々という説明がしっくりくるものは、ほかにあまり聞いたことがありません。あとはアインシュタインの例の$${E = mc^{2}}$$位でしょうか。行列形式のシュレディンガー方程式$${E{\mathbf\psi} = H{\mathbf\psi}}$$も一見単純という意味ではわりといい線行っていると思いますが、この辺が3大人気数式であるとか、勝手に言ってみましょうか。
 そして、このオイラーの等式自体は書籍やネット上の情報でたくさん取り上げられています。その意味、証明、面白さ、そういったものは書き尽くされた感があり、今更先達の英知に新規性を加えられるとは到底思わないわけであります。

構成の復習

 オイラーの等式を紐解くと、一番なじみがあるのが、右辺の-1です。これは実数の0から1を減じた数値であると同時に、色々な数字の集まりの単位となる要素でもありますね。例えば、自然数からはみ出している負数の集まりを表現する基本的な要素でもあります。他も含めて肩書が多いと思いますが、それだけ偉い数値なわけです。
 次に左辺の$${ e }$$は、自然対数の底です。最近ネットで調べたら「ネイピア数」と言うのですね。最近できたか、もともとあって急に有名になったか、あるいは私が不勉強であったか、最近この名称を知りました。
 再帰的な説明で許して頂けるなら、この自然対数の底$${ e }$$というのは、一般の指数関数$${y = a^{x}}$$を微分したら自分自身になる条件、$${(a^{x})' = a^{x}}$$となる様な$${ a }$$を一生懸命探すと$${a = 2.7182818\dots}$$の場合にそうなることがわかり、これが無理数なので$${ e }$$と名付けたというものです。証明や歴史的経緯はこういうことではないと思いますが。
 $${ i }$$は虚数単位です。実数に属さない実数と直行する別要素をもつ2元数である複素数の第2元目の要素である虚数をつかさどる単位です。$${i^{2} = -1}$$という性質を持ち、実数内で表現できません。尚、本段落での一部の説明は一寸自身がありません。
 $${ \pi }$$は円周率です。無理数なので$${ \pi }$$と名付けられています。円の半円周長と半径の比です。何故、図形の中でも円だけ特別に面白そうな値を内包してるの?という疑問も湧いてまいりますが、宇宙が決めたことなのでしかたがありません。一応、円は中心の1点から周囲を見て全方位を最小限に覆いつぶすという特別な性質を持つ図形であるが故に、なにやら特別な数値が隠れているのだと思います。個人の感想です。

算数の視点で考えてみる

$${ e^{i\pi} = -1 }$$

を実際に算数の水準で計算してみましょう。
 $${ e }$$はとりあえずそのままで大丈夫です。
 $${ i\pi }$$もそのままで大丈夫です。
 次に計算のルールに従って、$${ e }$$を$${i\pi}$$回掛けてみましょう。
 ここで早くも挫折しました。$${i\pi}$$が何回なのかわかりませんので、$${i\pi}$$回掛けるのは一寸無理そうです。いきなり手詰まりです。

一般的複素数の形を思い出す

 $${ e^{i\pi} = -1 }$$には虚数単位$${ i }$$が含まれていますから、どういった形であるにせよ複素数の虚部が含まれています。
 複素数$${ z }$$の実部と虚部をあらわに書き下すと、

$${z = a + bi}$$

の様になったかと思います。実部の値$${ a }$$と虚数単位を掛けた虚部の値$${ b }$$の和です。
 従って、複素数である一般の自然対数の底の複素数のべき乗$${ e^z}$$を実部と虚部を明確に表記しますと、

$${e^{a+bi}}$$

と書ける筈ですね。この$${e^{a+bi}}$$という自然対数の底による一般的なべき乗の複素数において、$${a=0, b=\pi}$$である時、$${e^{a+bi}}$$は$${ e^{i\pi}}$$となります。ですから、$${ e^{i\pi}}$$は、複素数$${e^{a+bi}}$$がある特定の$${aとb}$$の値である$${0及び\pi}$$(慣習的に$${i}$$を後ろから掛けたり前から掛けたりしてしまっていますが、同じだとお考え下さい)を取っている場合であることがわかります。
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