4【振り子時計。時代が巻き戻る音】
遊暮山には別荘的に使われていた一軒家がある。
名前はまだ無い。
もうそれはそれはしたいことがたくさんあるので、家を早く使える状態にしたい。だから毎日大掃除をしている。
昔は別荘として使われていた場所だけど、最終的には物置のようになったらしく、たくさんのものが発見される。
季節飾り的なもの、干支の飾り、博多人形的なもの、壊れやすそうなものがたくさん残っている。
もしかしたらとても貴重なものかもしれない、と思うとなかなか捨てることができない。掃除が捗らない。
明らかなゴミを捨て続けて、ようやく残しておきたいものを整理するスペースができてきた。
オブジェ的に残しておきたいような、昭和の香りが漂うものや、作りが丁寧で捨てるにはもったいないような飾りもたくさん。
食器棚や本棚も、昔ながらの雰囲気のあるもので、捨てるには惜しい。
遅々とした進まない掃除をしながら、動かない時計を見つける。
古い時計がいくつも出てくるけど、壊れかけていたり、触ると壊れてしまったり。
木でできた古い時計。プラスチックの時計とは趣が違う。
大きな時計がいくつかあった。
1番綺麗なものを残しておこうと思い、整理して場所を移した。
その後もいろいろ整理をしていると、「チクタクチクタク」と何やら音が聞こえてくる。
よく耳を澄ますと、さっき移動した時計から聞こえてくる。
すごい!
さっきまで動かないと思っていた時計が、突然のように、時を刻む音を鳴らし始めた。
家の中で私が動く以外の音を、初めて聞いたような気がする。
いつが最後かわからないけど、今になって時を巻き戻して鳴り始めた音に、なんだかロマンスを感じた。
あぁ、昔の人もこの音を聞いていたんだろうな。
どうやら振り子時計らしく、電池は必要ないみたい。ネジを巻いて時計を動かす。
ほんとにむかーしに、そういう時計を見たことがある気がする。ネジを巻かないといけないから、時間がずれたりする、みたいなことを聞いた記憶もある。
一軒家に残っているものは、できればほとんどを処分しようと思っていた。
だけど、掃除を進めていくうちに、オブジェとしても残しておきたいような、時代を感じさせてくれるものも多かった。
全てを残しておくことはできない。
だけど、今日整理した後に動き出した振り子時計は、この家の象徴になるような、立派な財産として残しておこうと決めた。
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