味わって聞きたい日本語ラップ:「ALL GODS BLESS ME」RYKEYDADDYDIRTY
むぅちゃんはスマホのMixリストに300曲以上の日本語ラップを入れていて、毎日車に乗ったり作業するときなどに聞いています。リリックは覚えられるのに仕事は覚えられず、人間の脳の不思議を感じる日々です(?)
日々新たな音源が出るたびに一人で泣いたりニヤついたり興奮したりと気忙しくしているのですが、誰とも共有できないのが少し寂しいので、noteで勝手に語ろうと思います。
音楽に関する専門的な知識はなく、独断と偏見で感じた良さを語っていきますので、どうかご容赦ください…
今日のおすすめ日本語ラップ
今日おすすめしたいのはRYKEYDADDYDIRTYの「ALL GODS BLESS ME」。
これまで強盗致傷、薬物取締違反に加え、配偶者へのDVでも逮捕され、刑務所内で服役されていたRYKEY。
出所後、名前を「RYKEYDADDYDIRTY」に変えて出したアルバムに収録されている一曲です。
「え、そんな人の曲がおすすめなの!?」と思う方もいるかもしれませんが、実際私はこの曲を車内で聞いてボロボロ泣いてしまったことがあります。
私からおすすめしたいポイントは以下の3点です。
ハードな歌声と讃美歌のようなピアノのバランスが心地良い
変われなさを理解しながらなお幸せを求める人間の性を想う
人の多面性に想いを馳せ、自分自身を問い直すことができる
それぞれのポイントについて、私なりに解説していきます。
おすすめしたいポイント
ハードな歌声と讃美歌のようなピアノのバランス
この曲のタイトルは「ALL GODS BLESS ME(すべての神のご加護を 私に)」です。
タイトルの通り、教会の讃美歌のようなピアノが静かに流れるしっとりとしたトラックになっていて、トラックだけでもとても聞き心地が良いです。
ビートメーカーはKOJOEや仙人掌、kiki vivi lilyなどへの楽曲提供でも有名なNARISKさんです。
そんなやわらかいトラックに、RYKEYDADDYDIRTYのハードな歌声が乗ることで、耳から離れず聞き入ってしまう不思議な相乗効果が引き起こされます。
なお、「ALL GODS BLESS ME」が収録されたアルバム「RYKEY DADDY DIRTY」は、全ての楽曲のミックスとマスタリングをBACHLOGICが担っています。さすがすぎる…
変われなさを理解しながらなお幸せを求める人間の性
個人的に一番好きなポイントは、RYKEYDADDYDIRTYが刑務所の中で自身と向き合う中で紡ぎ出されたリリックです。
というのも、この曲を聴いていると、なんだか「人間の性」に想いを寄せてしまうのです…
リリックを聞いてみましょう。
自身の過去のさまざまな情景を振り返りながら飛び交っている感情には、「殺してやりたいほどの怒り」や「腑に落ちなさ」などが含まれています。
そんな感情を抑えるのが「世のしきたり」で、「(抑えられたら)どれだけ楽だろうか」というワードからは、実際には自分の感情を抑えることが難しいということが推察できます。
よくビジネスシーンなどにおいては「人のことを変えることはできない。変われるのは自分だけ」という言葉が叫ばれますが、果たして人は本当に自分自身を変えることができるのだろうか?と思うことがあります。
自分を変えたんじゃなくて、ただ対応に慣れただけなんじゃないか?とか。
我慢している自分の本性は、不自然などこかで表出しているんじゃないか?とか。
「三つ子の魂百まで」というように、人はそうそう変わらないもので、人によってはその「変われなさ」にずっと苦しみつづけるものなんじゃないか…と考えたほうがリアルなんじゃないかな…
もし自分が感情を抑えきれず暴発させてしまう特性を持っていたら、きっとキツいだろうな…
自分自身の変えがたい性質を理解したうえで、彼は神様になにを祈るのか。彼が「わがまま」として祈るのは、「僕が不幸にしたあの子を幸せにしてほしい」、そして「俺も幸せになりたい」ということ。
この「あの子」には、彼の「娘」や「妻」が入るのだろうな…と推察しています。
彼は免れない罪を背負って服役しており、それ自体は事実であるわけですが、彼自身が「あの子」を幸せにしたい、「あの子」の傍にいたいと願っていることももう一つの事実なのだと思います。
しかし、自分の変われなさも分かっているから、それは「まどろみの中の夢」と捨象している。
家族を愛しているのに、自分のせいで一緒にいられないことを理解しているなんてキツいよな…
それでも、自分だって幸せになりたい…
それはもはや自分にはコントロールできないのだから、すべての神に祈るしかない。
人の幸せを願う気持ちと、自分が幸せになりたい気持ちの両方を抱えている彼は、自分自身の認識を「聖人」にも「悪人」にも振り切っていません。
だから「天使と悪魔とも平等にピースサイン」しているのだろうなーと思います。
実際、程度はともかく、多くの人は聖人と悪人の中間にいるんではないかなと思いますし、まっとうな感覚なんじゃないかな…。
人の多面性に想いを馳せ、自分自身を問い直す
ここまでリリックを読んでみて、改めて人には多面性があるなーと思います。
ニュースや報道でしかRYKEYDADDYDIRTYを知らない人は、どうしようもなく悪い人、と認識しているかもしれません。
かたや、彼の友人や身内からは、家族を愛する人、との認識があるかもしれません。
例えば別の曲ですが、「Roots My Roots」では、このようなフレーズがあります。
MVに出てくる手つきからも、実際お子さんを普通に抱っこしていたんだろうなーと思いますし、彼がお子さんを愛し、気遣おうとしていたことがこのあたりから推察されます。
要するに人にはいろいろな側面があって、悪い行動も良い行動もするよねというシンプルな話なのですが、自分自身の認識を問い直したときに、果たして目の前の人物に対してそこまでフラットに捉えられているかな?と考えます。
嫌なことがあったら、その人=悪人として認識しすぎていないかな、とか。
自分に都合の良いことをする人を、身勝手に聖人扱いしてないかな、とか。
中には性根がひね曲がっている人もいるのでしょうが…
良い意味でも悪い意味でも、人格と行動は別のものです。
目の前で暴力事件を起こされたら全力で逃げるべきで、その行動を裁くために法廷があります。
ただ、せめて人の人格を見ようとするときには、自分と同じように何か「変われなさ」を抱え、今に至る背景を持ち、幸せを願っている同じ人間として見ていたいな…と。
私なりの「わがまま」な祈りです。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
「良いな~」「気になるな~」と思ったらぜひ聞いてみてください!
なお、ファンの方による合唱コンクールバージョンも作成されています。
青少年の発育に良いのか悪いのか私には判断しかねますが、これはこれでなかなか合うなーと思うので気になる方は聞いてみてください。
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