月の満ち欠け
小指の爪から、第一関節までの長さにも満たない厚さの文庫本。
表紙に記されたあらすじ、
帯の「生まれ変わっても、あなたに会いたい」
という言葉と、なにより、
「月の満ち欠け」 という題名。
それだけで十分もう、胸をきゅっとされて吸い込まれていく。
何気なく、部屋のテーブルの上に置かれたこの本をみたとき、
この1冊のこの厚さに、壮大な物語とひとの人生がはいっているのかと
思うと、これから読んでいくのが楽しみになる一方で、
なんだかおそろしくも感じた。
私の生きる日常では到底起こりえない、
大きくて広くて何十年分もの物語が
私のこの小さな部屋にぽつんと置かれていることは
普通ではないなと思った。
これからその、私をおびやかす大きな物語に、
ただ紙のページをめくるだけで遭遇できること、
世界を知ることができることを
その価値を
楽しみにしながらも
この本をめくっていくことが、おそろしく苦しい
そんな儚さや苦しさや切なさ、
これらよりもっと自分でもわからない感情を
きゅっとつめこみ、包み込み、おさめてくれるのが、
「月の満ち欠け」
という言葉なのだと思う。