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経験の観測手法


はじめに

エンタメは顧客に体験を提供するものだと考えています。
その体験は製作者が体験したものか、体験を予感できたものに限られると思うのです。
とすると、自己の体験を観測する必要が出てきます。

体験の定義

ここで言う体験は、体験者のシチュエーションと心理状況の組み合わせだと考えており、主に心理状況に比重を置いています。
例えば「車を運転していて、ぶつけられそうになってドキッとした」という体験の場合、ぶつかる恐怖で「ドキッとした」という方に比重を置く、という意味です。
なぜこうするかというと、ある心理状況を作りたい場合、シチュエーションと分離する事で、シチュエーションのバリエーションを類推しやすくなり、制作したいエンタメに応じてシチュエーションを選択できるようにする、という事ができるのではないか、と考えたためです。

体験の観測

困難にしている要因

体験による心理状況をある程度化学的、統計的に行おうとすると、同一シチュエーションんで生じた心理状況を聞き取りする必要があります。
ただ、これを行うのはかなり大掛かりですし、シチュエーションの数も多数必要ですので、個人が簡単に行う事は難しいと思います。

解決方法として

体験の観測対象を他の人にした場合、聞き取りなどの手法が必要となりますが、観測対象を自分自身としたら、聞き取りやその他の手続きは不要です。
また、何かを体験した際に、すぐに観測できますので、多彩なシチュエーションの獲得も容易でしょう。

問題点と利用範囲

自分自身を観測対象とした場合、どの程度客観性が担保されるか、というのが問題点です。
後述する方法で、ある程度緩和されるものの、それでも主観的である事には変わりません。学術的な意味では価値は高くないと思われます。
けれど、エンタメを制作する、というスタンスであれば、その演出や設計のジャッジなどの判断を行う場合に、役にたつ情報となると思います。

観測手法

手法を使うにあたっての注意事項

この手法の習得には多少の慣れが必要です。また、大脳処理の一部分をこの手法の処理に割り当てる事になるため、高度な運動能力が必要な事を行なっている最中は行わないでください。事故の危険が高まると思われます。
例えば、車の運転中などです。
このため、比較的安全な環境での利用を強く推奨致します。

方法の説明

体験をしつつ、それを観測するのは一人では難しいものです。
そこで、仮想の自分をもう一人作り出し、体験している自分を観測する、という方法です。
仮想の自分というとおかしな感じがするでしょうが、イマジナリーフレンドの自分版、と考えられるかも知れません。

トレーニングの方法

危険を伴わない作業を行なっている際、それを行う自分を少し離れた所から見ている、という視覚イメージを持つ方法です。
机に向かっているなら、頭上少し後ろ側に客観視用のカメラがあり、そこからの視点で見ているというものです。
初期の段階は、できるだけ鮮明なイメージを持つようにした方が良いですが、イメージを持てるようになったら、客観カメラで見ている、という感覚になれば良いと思います。
この客観カメラで見ているという感覚で体験している自分を観察する、訳ですが、この客観カメラを置くことで、心理的な状況も客観的に捉えやすくなります。
そして、シチュエーションと心理状況の組み合わせとして記憶していきます。

実際に行ってみる

安全な状況で色々な心理体験ができる、という点で、映画や読書、ゲームが向いています。
体験は現実に体験しないといけない訳ではなく、同じ心理状況になれば良い訳ですから、強く感情移入して、心理体験を行い、それを客観カメラ感覚で、シチュエーションと心理状況を分離、記憶する。

おわりに

この体験を多数収集していくと、次第に頭の中にグループ分け、つまり分類が出来て行きます。
やがてこれらがリレーションを成して、発想の土台になっていきます。
やや分かりにくい説明だったかと思います。
本来これは口伝となるものではないのかも知れません。
体験の蓄積と発想への手がかりとして有用だと思いましたので、まとめてみました。
制作の一助になれば幸いです。

宜しければ、ゲーム制作などのクリエーター活動のサポートをお願い致します。