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不動産開発プロセス その5

"Data has to be analyzed beyond the first site."
いつも読んでいただきありがとうございます!
さて、今日から2~3回かけて「初級編ケーススタディ」を実施します。
今回は第1ステップである「人口動態調査」を行います。
人口動態調査とは何ぞや?という方はこちらの記事を参照ください↓↓

シドニーで学んでいる都合上、シドニーの情報を使いますが、日本の情報に置き換えて実践できますので、お付き合いください。


ケーススタディ 事前情報

今回扱う区画はシドニー工科大学(僕が通う大学院です。)メインキャンパスの区画にします。
下の図のような区画です。この区画は左側が北、右側が南になっています。

Source: Development Plan 1183894

区画の簡単な説明としては、SydneyのUltimoという地域にあり、総面積は2.766haです。四方を全て道路に囲まれており、北側にThomas通り、東側にHarris通り、南側にBroadway通り、西側にJones通りとなっています。
容積率は4.5:1のため、延べ床面積は125000㎡まで可能です。

人口動態調査

人口動態調査では区画の地域に住む人々の情報から、不動産に対する需要を探します。
使用するデータは”Australia Bureau of Statistics”(国勢調査)です。

初級編で見るポイントは以下の7点。
総人口・人口構成・家族構成・収入・住宅種類・雇用状況・家賃
それぞれのパートでは、データから見えること、データの背景を考えていきます。
では順番にやってみましょう。

総人口

総人口は2021年時点で7410名(男性3763名、女性3644名、3名は不明)。
男女の比率はほぼ均等であることがわかります。このことからどちらかの性別に特化した不動産を建築するインセンティブは小さいと言えそうです。

総人口 Source: Ultimo Latest release 2021 Census All persons QuickStats

人口構成

次に人口構成を見ます。
20~39歳までのバンドが5歳区切りでそれぞれ10%以上を占めています。
特に20~34歳までの3つのバンドは15%以上と、全体の50%以上を占めていることがわかります。
また、子供の割合と高齢者の割合がNSW州・オーストラリア全土の割合と比べると小さいことから、入居ターゲットは20~44歳に絞ることができそうです。
ここで、このデータの背景を考えてみましょう。
Ultimoという地域はCentral Business District(CBD)と呼ばれる所謂丸の内や新宿のような地域が徒歩圏内であることから、CBDで働くサラリーマン層が一定数いると考えられます。また、総学生数44,615 名(内留学生11,180名)であるシドニー工科大学が位置しています。

人口構成 Source: Ultimo Latest release 2021 Census All persons QuickStats

家族構成

未婚割合が67%と州・国の値よりも大幅に大きいことがわかります。
このことは人口構成において20~34歳が5割以上占めていることから納得できるかと思います。
シングルの場合、1人暮らし用の物件・シェアハウス物件の需要が高まります。
世帯構成を見ると、家族世帯が45%以上シェアハウス世帯が18%と複数人が世帯を構成する世帯が60%を越えています。
つまり、複数の部屋がある物件需要があると考えられるでしょう。

結婚状況 Source: Ultimo Latest release 2021 Census All persons QuickStats
世帯構成 Source: Ultimo Latest release 2021 Census All persons QuickStats

収入

Ultimo地域の収入に関して個人ベースでは州・国の中央値を下回っています。これは若い世代が多いことによる収入が少ないことが影響しているかもしれません。
一方で、家族世帯の場合は週$2197が中央値であることがわかります。
収入は支払い可能家賃や生活費を決める基準になるため、分析において重要な役割を果たします。
家族もしくは世帯全体の収入から支払い可能家賃を予測すると、家賃に収入の30%を充てるとしたら、$540~$650程度であると考えられます。

週次収入 Source: Ultimo Latest release 2021 Census All persons QuickStats

住宅種類

アパート・マンションの割合が圧倒的に多いことがわかります。
これは地域全体として戸建てが少ないことが要因です。
このことからUltimoに参入する場合はアパート・マンションを建設することが無難な選択肢であると言えます。
また、若者層が多く、定住の優先度よりも今後の人生設計において転居が容易なアパート・マンションの需要が高いと考えられます。
住宅構成を見ると、寝室数が1つもしくは2つの物件が7割を越えます。また、スタジオタイプ(1R・1K)よりも3部屋・4部屋以上の割合が多いことも分かります。
これは1人暮らし世帯が少ない、複数人世帯が多いことが理由でしょう。
つまり、複数人世帯をターゲットする場合は複数の寝室を持つ物件を多く開発することが鍵と言えそうです。

住宅タイプ Source: Ultimo Latest release 2021 Census All persons QuickStats
住宅構成 Source: Ultimo Latest release 2021 Census All persons QuickStats

雇用状況

雇用状況からは労働状況、ひいては収入を見出していきます。
労働力人口は4387名で州・国と比較して割合が大きいと分かります。
個人レベルでの収入の中央値は州・国の値よりも小さいことは、非労働人口が多いことが理由ではなさそうです。
一方で、フルタイム労働者割合は州・国の割合よりも10%程度小さいことが見て取れます。
パートタイム労働者が多いことが収入の中央値が小さい要因かもしれません。

労働者数 Source: Ultimo Latest release 2021 Census All persons QuickStats
雇用状況 Source: Ultimo Latest release 2021 Census All persons QuickStats

家賃

では最後になります。
家賃の情報は国勢調査では少ないですが、できる限り見てみましょう。
週間家賃の中央値は$500と収入のパートで予測した家賃より低いです。
一方で、5割以上の世帯が収入の30%以下を家賃に充てていますが、38%の世帯は30%以上を家賃として支払っています。
どの世帯をターゲットとするかによりますが、需要を考えるうえでは地域の中央値を知るということはその地域の住人に受け入れられる物件を開発することに繋がります。

家賃中央値 Source: Ultimo Latest release 2021 Census All persons QuickStats

まとめ

いかがだったでしょうか。
データから何が読み取れるか、何がそのデータに表れているかを考えることは潜在的な需要を考えることに直結します。

今回のケースでは以下のことが読み取れた情報として挙げられそうです。
・家族世帯、シェアハウス世帯の需要が高い
・20~35歳の若者が多い
・パートタイム労働者が多いため個人収入の中央値は$772と小さめ
・家賃支払い可能額は$540~$650、家賃中央値は$500

次回はこれらの情報をもとに開発可能な物件を考えてみます!
長めの記事でしたが、最後までお読みいただきありがとうございました。


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