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不動産開発プロセス その7

いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は「ケーススタディ②」ということで、開発予算の算出を行いたいと思います。
この記事は前回の記事の続きになっておりますので、ぜひ前回の記事も読んでいただけるとより理解が深まるのではないかと思います。

初級編のため、あっさしりとした内容になっています。
それでは、張りきっていきましょう~


どうやって開発価格を決めるか?

今回の記事の全てです。
皆さんだったら、どうやって開発にかけられる予算を決めますか?
?手元の資金に合わせて決める?似た事例をもとに決める?

いろんな考え方があると思います。
もちろん、手元の資金が潤沢にない場合は金融機関からの借入も厳しくなるでしょう。似た事例からおおまかに予算を想定することもできます。

今回は「売り出し価格」から「開発予算」を算出する方法を考えてみます。

売り出し価格の確認

前回の記事で、プランごとの売り出し価格を算出しました。
一応、以下にまとめておきます。
 ・スタジオ:$660,248
 ・1LDK:$782,215
 ・2LDK:$1,030,250
 ・3LDK:$1,539,502

利益率を考える

まず考えることは、開発者として一室当たりどれだけの利益を追求したいかを考えます。
以下の式で考えてみましょう。
 1ー(一室当たり売り出し価格/一室当たり開発予算)=利益率
開発予算を求めたいので、利益率を考えるところがスタート地点です。

例えば、利益率10%ではどうでしょうか?
一番価格が低いスタジオタイプ(1R・1K)が売れたとすると、10%の利益率では、$66,024(約627万円)になります。
悪くなさそうですね。

開発プランすべてが売れたら…

少し夢物語をエッセンスに。
前回各プランの配分も決めました。
その配分をもとに全てのプランが売れたときの利益を算出してみましょう。
総部屋数は未定のため、xとします。計算すると…
 $98,038x
xに総部屋数を代入すると利益が出ます。
例えば、100室であれば、$9,803,800(約931億円)
現実的かは置いといて、これくらいの規模感かと認識だけ。

平均的な開発コストを調べる

現実に戻りましょうか。
開発コストは建物の外装や内装、設備状況によって大きく変わります。
そのため、建物の細かい設定が決まっていない状態の開発予算は目安的なものになります。
そのため、市場での平均的な開発コストを当てはめることが重要です。

開発コストの調べ方としては、「1㎡当たりの開発コスト」と検索すればほぼ間違いなく辿り着くでしょう。
もちろん、地域的な要因もあるため、区画の地域名も含めて探してくださいね。

今回のプランは「Ultimo」であり、「シドニー」に位置しています。
調べてみると…
 小規模マンション:$2,244
 中規模マンション:$2,493
 大規模マンション:$2,965
という感じでした。
(Source: https://koste.com.au/construction-cost-table/
少々低すぎる感じもします。
注釈を読むと市場では20~30%高いということなので、この記事では以下の値を使うことにします。ましな値になりました。
 小規模マンション:$2,912
 中規模マンション:$3,240
 大規模マンション:$3,854

一室当たりの開発予算は?

では、一室当たりの予算を算出してみましょう。
複数プランを想定することがリスクヘッジになるため、小規模マンションの開発コストを最低値、大規模マンションの開発コストを最高値として考えてみます。

開発コストを算出するには部屋の広さが必要になります。
これもざっと設定してみましょう。
 ・スタジオ:44㎡
 ・1LDK:50㎡
 ・2LDK:91㎡
 ・3LDK:137㎡

それでは算出開始です。
 ・スタジオ:$128,128(=44㎡×$2,912)-$169,576(=44㎡×$3,854)
 ・1LDK:$145,600(=50㎡×$2,912)-$192,700(=50㎡×$3,854)
 ・2LDK:$264,992(=91㎡×$2,912)-$350,714(=91㎡×$3,854)
 ・3LDK:$398,944(=137㎡×$2,912)-$527,998(=137㎡×$3,854)

算出できました。
妥当な値ではないでしょうか。
(平均的なコストと平均的な面積のため当たり前でしたね。)

開発総額は?

各部屋タイプの割合を掛け合わせると…
 $234,445x~$310,285
となります。
100室の場合は、$23,444,500~$31,028,500(22億円~29億円)
算出すること自体は簡単かと思います。

一室当たりの利益額は?

さて、売り出し価格は決まっているので、一室当たりの利益も算出できそうです。 

 ・スタジオ:$490,672-$532,120
 ・1LDK:$589,515-$636,615
 ・2LDK:$679,536-$765,258
 ・3LDK:$1,011,504-$1,140,558

利益額と利益率の考え方

ん?利益出すぎてない?と思ったあなた。
鋭いですね。利益率10%で考えてた予想よりも7倍以上の利益額です。
でも、これでいいんです。
なぜかって?
理由は大きく2つに分けられます。

まず、区画が未取得の場合(ほぼその場合が多いですが)、開発計画は「土地の取得」が含まれています。
つまり、土地の取得費用も開発利益から充てることを忘れないでください。
上物は利益を出すことができますが、土地そのものは利益を出すことができません。そのため、売却益から「上物の開発費用+土地取得費用+etc.」を支払うことになります。

次に、もしあなたがデベロッパーだとしたら、全て売って利益がガバガバ出るようなプランで金融機関や投資家にプランを提案しますか?
確かに、利益が出る以上に嬉しいことはありませんが、全て売れるなんてことはなかなか難しい選択肢です。
しかし、現在考えているプランであれば(最低利益率を10%と仮定している場合)すべてが売れなくても資金を回収できることになります。
スタジオで考えてみると、一部屋当たりの最低利益額は$66,024です。
仮に一部屋買い手がついた場合、最低でも$490,672が手に入ります。
つまり、一部屋売れれば、6部屋売れなくても(貸しだしたらよりいい)目標の利益率を達成することができます。
あるいは、利益率が10%になるまで売り出し価格を下げてもいいかもしれません。(これをする場合はよく考えること)
もしくは、開発コストを上げて魅力の高い建物にすることができるかもしれません。

まとめ

今回は開発予算の算出を行いました。
情報源の違いによって予算の見積もりも大きく変わるはずです。
間違った見積もりをしないよう、開発する区画の特徴を捉えて、区画に適した情報を集めるようにしましょう。

このケーススタディは大都会の広大な区画を対象としているため、開発計画のスケールが大きくなっています。しかし、手ごろな区画でも使える手法ですので、ぜひ不動産情報で見つけた区画を使って実践してみてはいかがでしょうか。

次回、「初級編ケーススタディ③」ということで開発プロセスのまとめと追加情報を記したいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございました。
では、また次の記事でお会いしましょう!


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