不動産開発プロセス その4
いつも読んでいただきありがとうございます。
今回は「不動産市場のダイナミクス」をテーマに、理論的なモデルも紹介しつつ分かり易く解説しようと思います!
不動産市場とは?
不動産市場と聞いて、皆さんはどんな市場を思い浮かべますか?
売買市場?賃貸市場?はたまた建設市場?
そうなんです。不動産市場とは複数の市場から構成されているものです。
大分すると…
- 不動産賃貸市場
- 不動産投資市場
- 不動産建設市場
の3つから成ります。
ではそれぞれ見ていきましょう。
不動産賃貸市場
この市場ではテナントが借り手、オーナーが貸し手となって空間の貸し借りをします。
需要と供給のメカニズムですね。
この場合、需要量は潜在的なテナントの数で、供給量は市場に出回る貸しスペースの量になります。
借り手が支払える家賃とオーナーが受け取ってもいい家賃が一致したときに契約が成立します。
そして、需要・供給が変化すると均衡家賃も変化するというわけです。
不動産投資市場
次は不動産投資市場です。
この記事を読んでくださっている方の中には不動産投資市場が最も気になるという方が多いかもしれません。
この市場では、家賃と不動産価格がターゲットになり、利回りが2つを左右するという形になります。
例えば、不動産賃貸市場にて家賃が年間120万円と定まった時、市場が求める利回りが10%だとすると、不動産価格は1200万円に決定されるという感じです。
この利回りの大きさは地理的条件・経済状況・当該不動産の状況によって変わります。
不動産建設市場
最後に不動産建設市場です。
こちらは不動産価格と建設費用との関係を表す市場です。
簡単に言うと、最終的な建築物の価格が建設費用よりも高ければ、その開発は実施されるということです。
そして、新たな開発が進むと、新たな貸しスペースができます。
そうです。この貸しスペースをめぐって新たな均衡が不動産賃貸市場で形成されることになります。
すでにお気づきだと思いますが、上記3つの市場は互いに影響し合っているのです。
潜在的なテナント数が増えて、家賃が上がった場合、利回りが変わらなければ不動産価格は上昇します。これにより新たな建設が促進され、スペースの供給量も増加します。これが繰り返されると、理論的にはある1つの均衡点に全ての市場が落ち着くと考えられるのです。
Four-Quadrant Model
それでは、上記3つの市場に建設数と供給量の関係を付け加えると、
「Four-Quadrant Model」と呼ばれる不動産市場における需給関係を表したモデルを導くことができます。
数式は使用せず、わかりやすく説明できるよう心がけます。
では、モデルを図にしてみましょう。
右上が賃貸市場、左上が投資市場、左下が建設市場、右下がストックを表しています。上の状態は全てが均衡状態にある場合です。
ちなみに、左下の建設市場に描かれている「価格-建設費の関数」が0から出発していない理由は、不動産価格が0の場合、建設費用がかかるため利益を得られないためです。難しくないですね。
ここで、利回りが小さくなった場合を考えてみましょう。
例えば、10%だったものが8%になったとか。
この場合、利回りのグラフは価格軸側へ回転します。
そうすると、様々な変化があった結果として、不動産価格は上昇し、建設数が伸びて、供給量も増加し、賃料は供給増加によって減少してあるポイントに落ち着くことになります。
投資市場から波及する影響が各市場に表れるまでラグがあるため、均衡点に辿り着くまで時間がかかることになります。
言い換えると、現実世界において新規建設が止まることなく続いているのはこのラグの間に市場内・市場外にて新たな変化が起き続けているためゴールである均衡点が次々と変化していることが理由であると言えるでしょう。
さて、今回はいかがでしたでしょうか。
やっと言葉の説明の段階から抜けて、学問らしくなってきました。
次回は、ケーススタディをやってみましょう。
前回の人口動態調査、今回の市場モデルを用いてどのようなことが言えるのか、開発計画を立てる一番最初に行う分析をご紹介します。
それではまた次回。
ありがとうございました!
こちらは前回の記事になります。次回はこの内容も含んでいますよ。
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