九月さんのお笑いライブ「第191回単独公演 尼崎の薬局で8時間コントする」を見た

8月18日(日)、連休最終日という現実に打ちひしがれながら、芸人九月さんのお笑いライブ「第191回単独公演 尼崎の薬局で8時間コントする」を見てきた。

タイトルの通り、まごころ薬局という兵庫県尼崎市の薬局で8時間コントをするのだ。
観客は出入り自由で、料金は1,000円(応援入場2,000円)を帰る時に九月さんにお渡しする。

まごころ薬局は間接照明だったり、壁面本棚だったり板張りの小上がりがあるぱっと見ではまったく薬局ではない薬局だった。おしゃれすぎ。
九月さんは小上がりをステージにして、私たち観客は小上がりの外に置いてある椅子に座ってコントを見た。

印象に残ったコントを書いていく。

・なぞかけが好きな巨人のコント。答えを間違えたら殺されるけど簡単ななぞかけなので返答者は死なない。スクリーンの中で起こっていることだと思って油断していたら突然巨人がこちら側に言葉をかけてきて驚いた。観客側の加虐性が引き出されてしまったコント。
https://youtu.be/LifQ4Ejf8JU?feature=shared

・グラタン屋さんのコント。グラタンを頼んだのに違うものばかり提供されるリズム系のコント。こう来るはずだと期待しながら聞いてしまうのでその通りだった時が面白すぎる。次はどう進行していくのかも気になって、期待が高まって笑ってしまう。
https://youtu.be/un1Q8aEJIZQ?feature=shared

・記憶が色あせていくコント。居酒屋で友人に別れた元カノの話を聞いてもらっている場面で、繰り返し語られるエピソードがどんどん色あせていく。ついでに聞いてくれている友人も色あせていく。どんどん色あせる。

・ロボットが人口の半分を占めるコント。これは凄かった。上記の話を聞いている方の友達が「俺の話も聞いてくれよ」と奇妙な話を熱弁し始めて、ふと場面が居酒屋に戻った時に私の中で「そういえば居酒屋だった」という感覚が起こった。熱中して映画を見すぎて、エンドロールが流れ始めた時に「そういえば映画だった」となるあの感じ。この感覚が好きで九月さんのコントを見ているのでライブで経験できて本当に感激。
ちなみにこの二つのコントの間にはいくつか違うコントが挟まれていて、九月さん曰く続けてやるのは恥ずかしいことらしい。大好きな群像劇を見ているみたいですごく楽しかったし興奮したな。

・Bluetooth抱っこ。カップルの彼氏側がすごく気持ち悪い感じで彼女に絡んでいくコント。いちゃいちゃしている途中で一時中断された後、元のテンションに戻れず彼女を置き去りにして素面に戻ってしまう彼氏。今年イチの「おまいう!!!!」が出てしまった。めちゃくちゃ面白い。
https://youtu.be/HxLc-H1bqlE?feature=shared

・旅行の予定を延期してほしい彼女と、わけがどうしても知りたい彼氏のコント。親しき仲でも知らなくていい事があるというのが濃い目に描かれていた。
九月さんが演じる女性すごく好きだな~。声色とかちょっとめんどくさそうな感じとか。

・彼氏がゲームをしててちょっとした質問にも答えてくれなくてムキーっとしている彼女のコント。「付き合って行くほど聞きたいことは重くなっていくじゃん!」というような言葉にぐっと来た。浅瀬でピチャピチャ遊びたいわけじゃないもん、好きだったら一緒に深海まで潜っていきたいよね。私の「寂しい」の音は荒々しい水の音かもしれない。

他にも、「ノープランってプランあるよな」と言って友達を失ったコントや、友達になりたいのに組織の拷問担当になったおじさんのコント、自転車工場の巨人のコントなどいろいろあった。
あまりにもいろいろあって、きっと忘れてしまったものもあるんだろうと思うと悔しい。

観客の方のなかに、メモ帳を持ってメモを取りながら見ていた人が何人かいて、お笑いにはそういう文化があるのかな?と不思議に思ったりしていたけど私も取るかは置いておいて持っていくくらいはしてもいいかもな~。
取らないかもしれない。没入型観客だから。

コントの合間にも近況や小話を挟んでくれて、その時の九月さんはコントをしている時より親しみやすくて、人だという感じがした。
笑顔がえへへって感じで、小学生の頃に視聴覚室に話しに来てくれたボランティアの近所のおじさんを思い出した。

コントライブって初めてだったけど行って本当によかったな。
楽しかった~!

***

以下は九月さんを知った時の事。メモ書きです。

私は今年に入ってから九月さんを「九月の読むラジオ」で知った。
これは、九月さんがリスナー(フォロワー)から寄せられたあらゆるジャンルの質問に対してツイッター上で答えるという名前の通り読むラジオで、確か私が九月さんを初めて見たのは「少し調べればわかるのに読むラジオさんとか9月さんとか書いてくるやつがいる」という趣旨のちょっと怒った(?)答えの時だったと思う。

それで九月さんを知って、数ヶ月後になぜか忘れたけど「春と示唆」を見た。
https://youtu.be/tcBANDd3XgE?si=cVPuaHXZM-kvQScS

約11分のコント。
最後に登場人物たちが桜を見上げる場面があって、不思議な話だけど桜の花びらが舞い込む一階の教室が思い浮かんだのだ。
座面が丸くて重ねられる椅子に座った九月さんと同級生の友達が、ベージュ色の張りのあるカーテンがかかった授業の名残がありつつも清潔な教室に居た。
映画の幕引きのような美しい情景描写。たった11分という映画と比べるととても短い時間だったのに見た後とても満足感があった。

春と示唆は大学生のコントだけど、私は大学に行ったことがないのでなんとなく高校や中学で見た光景が溶け合ったようなイメージが浮かんだ。

この体験をした時、私は九月さんのコントを好きになった。
この人は本当にすごい、体一つで何役も演じ分け、観客の没入感を引き出して笑いを起こしてしまう。演技力が鬼レベル。
なんでこんなに人を良く知っているんだろうと思いながら九月さんのエッセイを読んで、九月さんは人が好きで面白く思っていてよく見ているのかもしれないなと思った。

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