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サウナ大使 タナカカツキ先生インタビュー


 マンガ家でありサウナ大使でもあるタナカカツキ先生にサウナの効能や喜び、楽しさ、近年のサウナ事情を伺いながら、自然環境に恵まれた長崎県島原半島のサウナ施設をはじめとして、今後どうすればより良いサウナ体験ができる島原半島が実現できるのか、その方策を探ります。

── サウナ大使として日頃どのような活動を行われていますか?

大使:特にないです。任命された日本サウナ・スパ協会からこれをやるようにとかそういうのも全くありません。言われなくてもそこらじゅうでサウナの話はしますし、マンガも描きますので。まあ大使として一番重要な務めというと、サウナ室で死なないことですかね(笑)。サウナ大使がサウナ室で死んだらマズイじゃないですか。だから、長生きして健康でご機嫌であることっていうのが務めかもしんないですよね。

── サウナ大使とサウナの出会いについて教えてください。

大使
:私は大阪で生まれ育って昭和を生きた人間ですので、銭湯文化ぎりぎりの世代なんです。銭湯も多く残ってて、その銭湯で風呂に浸かって炭酸飲料飲んでゲームして遊ぶっていう文化があったんですよ。当然そこにはサウナもあったんですけど、子供だったのでよくわかりませんでした。入り方もわかんないし、暗いし、怖いし、おっさんが汗だくじゃないですか(笑)?大阪特に怖いんですよ、全身和彫りのおっちゃんとかいますから。子ども時代はサウナ=おじさんが汗、怖い、とあまりいい印象はありませんでした。それからずいぶんと大人になって40越えたあたりだと思うのですが、当時はパソコンに向かって一日中仕事してて、筋トレも何もしてないから消しゴムかけただけで攣るぐらい運動不足で不規則な生活をしていました。すると自宅の目と鼻の先にスポーツジムができたので、これはもう神の啓示だと観念して入会したんです。ジムで運動すると程よく汗もかきますしリフレッシュできてアイデアも湧くんですけど、同時に疲れてしまって家に帰ってから執筆できないんです。ある時、プールを泳いで浴場に向かったところに木の扉のサウナ室が見えたんで何となく入ってみたんです。平日の日中で誰もいなくて、できたばかりのサウナ室なので木のいい香りがするんですよ。しばらくボーっとしてたら汗かいてきて熱くなったので出て、浴槽の隅で腰かけてクールダウンしてたんですけど、火照りがとれないから水風呂に足だけ浸けてみたんです。もちろんそれまで水風呂なんて入ったことないですから足だけ。そうしてると、また寒くなったのでサウナ室に入って、また汗をかいたら水風呂に浸かってというのを繰り返しているうちに全身水風呂に入れるようになって、むちゃくちゃ気持ちよくなってきて、その時にすごくリラックスできて気持ちが広がっていくような明らかに脳内から快感物質が出ているような体験をしたんです。それがサウナとの出会いです。

── サウナの入浴方法を教えてください。(一般的なサウナ体験の仕方)

大使:「温冷交代浴」というような入り方で、サウナ室に汗をかくぐらいまでいて、水風呂で体を冷やす、というのを数回繰り返すのが一般的な入浴法です。人それぞれ体格や体重、健康状態やその日の体調もちがいますから、自分でやってみるしかないですね。この入り方が正しいというのも無いと思うので、その人にとって気分の良くなるような入り方を見つけるのも、サウナの面白い所だと思います。

00-09(サウナ)サウナ室で発汗中

── サウナの魅力とは、何でしょうか?

大使:サウナの魅力は「気分が良くなる」ことだと思います。このサウナの魅力って近年ますます高まっていると思っています。人が家の中に閉じこもるようになり、今後もその傾向は増してくると思います。私たちの体は、もともと狩りや農耕をしてきて、そのなかでの体つきになっているので、現在の無機質な物に囲まれて部屋の中で仕事をするっていうのは、とんでもない事態に突入したなと思っています。今のこの状況は10年前と比べたら違うでしょうし、20年前30年前と比べても全然違うと思います。しかし、人間の体は10年やそこらではなかなか進化しません。このような中で、一日何をやっているかというと、多くの人はただ座っているだけで、運動もせず汗もかかない状態なのかなって思うんです。そういうときにサウナって敷居が低くて、道具も不要でじっとしているだけで汗をかけるんです。そして、サウナ室や水風呂で熱い冷たい思いをすると何も考えられなくなるんです。普段の思考や意識、そういう頭の中でぐるぐる考えていることから一旦離脱して、感覚的な世界にいながら汗をかけるっていうのがサウナの魅力だと思いますし、今後ますます人には必要で或いは避けて通れないと思っています。

── サウナの効能・効果は何でしょうか?

大使:「気持ちいい」ということだと思います。その気持ちいいの仕組みは思考から離脱でき、リセットできます。リフレッシュという言葉では足りないぐらい意欲も回復するし、元気にもなるし、地上最大の気晴らしができます、それも瞬時に安価に。その副産物的なおまけとして、安眠効果とか美肌効果、自律神経の回復とかですかね。あくまで、気持ちいいという快感によって健康寿命が長くなるということが最大の効能だと思っています。

── サウナ未経験者やまだ気持ちよさが分からないと思われる方にとっては、サウナ室は我慢大会で、水風呂はバツゲームだとネガティブなイメージを持つ人も少なくないと思います。サウナの良さを知ってもらうにはどうすればいいでしょうか?

大使:これは最初の意識、マインドセットを「サウナは気持ちいい」に書き換えていただければいいなと思います。そして一番乗り越えるべきポイントは「水風呂に入れるか」です。「私、水風呂苦手なんです~」っておっしゃられる方多いんですけど、どんな人も水風呂は最初は苦手ですから。これまでの習慣に無いようなことを人はやっぱりしたくないし、できれば避けて通っていきたいわけです。でもその先に「気持ちいい」があるのであれば、たとえばお寿司のワサビみたいなもので、最初は辛かったり鼻にツンとしたりとつらい経験を乗り越えてワサビの良さを知ってしまうと、お寿司を引き立てるワサビがあるからお寿司は美味しい、という風になります。サウナの水風呂もその冷たさの先に元が取れるような快感があるんだと思いながら入っていただけるといいなと思います。結局慣れてきますから。フィンランドの人は湖の氷に穴開けて0度の水に平気で浸かりますから。

00-10水風呂入浴中

── マンガ家でもある大使著作の「マンガ サ道」の影響で、「ととのう」という言葉が流行語大賞にノミネートされるなど、ここ数年サウナはブームになっています。大使がサウナに関する書籍「サ道」書き(描き)始めた当時(2011年頃)と比べ、どのようなところ(施設の環境や利用客の需要)が変わってきたと思われますか?

大使:一番変わったのはサウナに行くと混んでるということですね。全裸の男の人がサウナ室の前で並んでるなんて異様な光景ですからね(笑)。あと、年齢層も若くなりましたし、サウナへのイメージも変わりましたね。当時は「サウナ」って名前で本なんて出しても誰も避けて買わないだろうから「サ道」って造語にして本を出さなきゃいけなかったくらいですから。なんでもないというより、マイナスだったところから今やブームになってるというのは一番変わりましたね。それとサウナ施設も変わりました。当時はカラカラのドライサウナばっかりだったんですけど、ロウリュ(※1)のサービスをする施設が増え、サウナ室の湿度を重視するようになりました。心地よいサウナ室であるために「温度」から「湿度」に変わっていると思います。そもそも心地いいサウナ室って昔はなかったですから。今はいい香りもするし、女性客もすごく多いです。

── 大使にとってサウナとは何でしょうか?

大使:私にとってサウナとは、地上最強の「遊び」です!めちゃめちゃ楽しいです!

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【地域をサウナでPRするために大切なこと】
── サ旅という言葉もあるくらい、遠方の施設のサウナ体験を目的とした旅行を行うサウナ愛好家の方たちがいらっしゃいます。多くのサウナ施設を見て体験してこられた大使にとって良いサウナ施設とは何でしょうか?

大使:一番は「清潔」であることです。古い施設でも清掃が行き届いているのは美しくて心地いいから、まずはそこが基本だなと思います。サウナは水に触れて水で浄化するような場所ですから、浄化するためにはその場所が清潔でないとできません。たとえば神社に行ってお祈りするときも、きったない神社ではお祈りできないですからね。サウナは気持ちをリフレッシュしたり再起動したりするような場所ですから、やっぱりそこはきれいで美しく清潔であることが、いいサウナ施設の共通点です。さらに付け加えるなら、サウナのその地域の独特のルールやマナーを利用者とともに作り上げていくような存在感のある施設はいい施設だと思います。今ちょうどサウナがブームと言われてますが、そのサウナも転換期にあると思います。他とは違う、地域に根差した独創性といった切り口がその施設にあるかどうかというのは、利用者の関心も高いので、そういうサウナ施設にこそ「サ旅」に行く価値を感じるし楽しいと思います。

── サウナは1年中がシーズンであり、天候にも左右されません。観光業界から見るとまだ本格的に掘り起こされてない隠れた旅行商品だと思います。先進的な取り組みをしている他地域、他国の取組等ご存じであればご紹介ください。

大使:そこが一番進んでいるのはフィンランドだと思います。フィンランドでは「サウナ=SDGs」なんです。サウナ室の熱源は近くの山の木を切った薪を燃やしますし、食事の食材も現地で調達します。最初から最後まで全部そこの自然物で成立してしまいます。地産地消でいかに人を幸せにして地球環境にもやさしいか、つまりみんながハッピーかっていうことですよね。そういうサウナを通じた自然体験は世界でも高く評価されています。

── 長崎県島原半島には、雲仙温泉、小浜温泉、島原温泉をはじめとして多くの温泉入浴施設があり、中にはサウナ設備を備えた施設もあります。多くの施設では優れた設備があるわけではないのですが、雲仙山系の地下水による良質な水風呂や有明海を一望しながら外気浴ができるなど、サウナを体験するうえで優れた天然資源があります。これから地域でサウナによる地域活性化を取り組む際に、重要なこととは何だと思いますか?

大使:まずはサウナへの理解だと思います。サウナはそれだけ楽しくって日本の蒸し風呂文化にも通じる、日本人が大切にしてきた古来からの入浴法だと思うので、もちろん温泉もそうですけど、島原半島は島原半島の入浴法というのがあって、たとえばクールダウンするときに有明海を一望できる、こういうのはとてもすごいじゃないですか。ですので灯台下暗しなものってまだたくさんあると思うんです。自分たちにとっては当たり前の風景や資源を改めて楽しむということにサウナはとても貢献できると思います。

00-11(サウナ)椅子に座って外気浴

── よりよいサウナ体験のために、施設側がローコストでも取り組める方法があれば教えてください。

大使:ととのい椅子は必要です。サウナで休憩はすごく大事で、というより休憩が本番みたいなものですので。あと、清掃や、空間に何もないほうがいいので物をごちゃごちゃ置かないとか。それと、女性用のサウナ室の室温を男性用より下げるというのも誤りで間違った慣習だと思います。このようなことはまだサウナの情報が不足していることが原因で、そこは私が頑張る部分です。そういったところをマンガとか読みやすい方法で表現するということをやり続けていこうと思います。

── 島原半島は長崎県を代表する農業地帯であり、また、半島の大半が海に面しているため、漁業資源も豊富です。さらに、「具雑煮」や「そうめん」といったおいしい郷土料理もあります。サウナの視点から「食」は関連性があるのでしょうか?(サ飯について)

大使:サウナ後は感覚、味覚も立ち上がっていますし、おなかも減りますから食事をおいしく食べられると思います。感覚が立ち上がっているということは、素材が持っている味に気付きやすいということですから、地元のおいしい食材がしっかりと評価されると思います。

00-07具雑煮

【キャラクターについて】
── マンガ家でもありますタナカ先生には、島原半島のサウナをはじめとして地域をPRするためのキャラクター「アマクサくん」を制作していただきました。制作にあたって注意された点、特徴等ございましたらお聞かせください。

大使:簡単な線で明るく健やかなキャラにしました!

00-01メイン

【最後に】
── より良いサウナ体験を目指して、今後取り組みを進める島原半島のサウナ施設をはじめとした関係者の方々に励ましの言葉をいただけますでしょうか?

大使:フィンランドもそうなのですが、サウナ体験を目的として観光客がフィンランドに行っているんですけど、サウナが当たり前にあるフィンランドの人はそれが旅行のきっかけなるなんて気付いてなくて、ようやく今気付き始めてるんですよ。島原半島もすごくそういうのがあると思います。サウナって自然体験なんですが、自然体験なら島原半島は山もあって海もあります、それに島原半島でないと体験できないこともあると思うので、そこにサウナの喜びや楽しさを織り交ぜて無尽蔵に提供していただきたいと思います。

【余談】
── コロナ禍でもうまくサウナと付き合うことはできますか?

大使:コロナってつまりウイルスですから、風邪をひくのもウイルスが原因で、色々な病気になるのも病原菌が原因です。今後コロナが落ち着いたとしてもウイルス・病原菌との共存は続きます。そのためには、いかに免疫力を高めるかが重要になると思うのですが、免疫力はサウナで上がるし、ウイルスと病原菌は湿度と高温に弱いんです。楽しんで喜びながら「気持ちいい~!」って言いながら丈夫な体がつくれる、病気に負けない体がつくれるってどんだけいいことしかないのって思います。

── 日本と海外(フィンランドなど)ではサウナは違うのでしょうか?

大使:日本には蒸し風呂文化が昔からあるんですけど、なぜかサウナって言うんですよ。自国の言葉で既に「蒸し風呂」という言葉があるのに、外国の言葉・文化を受け入れています。フィンランド語である「サウナ」を受け入れ、ドイツ語の「アウフグース(※2)」、最近ではバルト三国の「ウィスキング(※3)」のサービスを受け入れる、他国の文化を安易に受け入れてしまう日本という国はすごく面白いです。こういった日本の気質は世界平和につながると私は思っています。よその文化を取り入れてオリジナルにする、時にそれが間違ったりもするんですけど、それがまた独創性を生んだりと、日本のクリエイティブサウナっていうのがたくさんある、そこが日本のサウナの面白いところです。ですので、島原半島のオリジナルのサウナが出てくるのを私は楽しみにしています!

00-12(サウナ)ととのう(トランス状態)


※1 ロウリュ:フィンランドに伝わるサウナ風呂の入浴法の一つである。熱したサウナストーンに水をかけて水蒸気を発生させることにより、体感温度を上げて発汗作用を促進する効果がある。
※2 アウフグース:ロウリュによって発生した蒸気を、施設のスタッフがタオルなどであおぎ、入浴者に熱風を送るサービスのこと。
※3 ウィスキング:白樺などの枝葉の束を使って身体を叩く行為のことで、マッサージや血流促進、殺菌などの効果が期待できると言われている。

取材:アマクサくん活用実行委員会(仮)


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