鑑定機関について(1)
前回までが「偽造」の話だったので、今回はソレの対抗馬である「鑑定機関」のお話。
「鑑定済」って紙切れを信頼しきっちゃいけないのは、どの世界でもおんなじ。
まず最初に頭に置いておいてもらいたいのは、「カード」のコレクションという趣味はアメリカでかなりの歴史をもっております。ちょっと前にマジックが「10周年〜♪」とか喜んでましたがそんなもんじゃない。数十年は余裕です。その前になると「切手」などのコレクションもありましたが、そこまで溯るとちょっと違った話になってしまうので、今回は「カード」のコレクションに話を限定します。
そもそも「カード」のコレクションは、いわゆる「ベースボールカード」のコレクションから始まります。さすがアメリカですね。で、それらのカードにはもちろん「プレミア」が付きますので、そうなると当然その価値を判断する必要がでてきます。ホンモノ・ニセモノはもちろんのこと、第三者の目で公平に判断した「カードの価値」…いわゆる「状態」というものを判断する需要があったわけです。それがいわゆる『PSA』社によって行われている鑑定のお仕事です。
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と、まあ、クソ退屈な話を長々と薀蓄たれましたが、重要なポイントは1つだけ。
『カード鑑定機関による鑑定は状態の鑑定。ホンモノ・ニセモノの鑑定は(本来は)専門外』
ということ。
いや、本来なら一番きちんとしなくちゃならんところなんでしょうが、これがまあよく騙されてくれるわけです。何度も見聞きしてますよ。CEフェイク(前回の日記参照)がケースに収まって「ランク9」とかついてるヤツ。あほかと。
彼らの世界では「偽造」はそれほど多くなく、また彼らにはマジックに関してのそれほど多くの知識もありません。一般的な「カード」として状態を鑑定するのが彼らのお仕事。誤解を恐れずに言えば、彼らはマジックに関しては「素人同然」です。PSA鑑定済みのカードだからって安心するのは大間違いです。
頻発するミスは「アルファのカードをベータと鑑定」「もしくはその逆」。
また、エラーカードであるサマーマジックを(本来PSAはエラーカードの鑑定を行っておりません)を通常のカードとして鑑定したり、これまたその逆もあったり。
カード鑑定機関による「鑑定」は、結局のところ手作業です。
やってるのは人間です。
ミスも多いです。
また状態の鑑定も担当者によって随分変わります。
こちらの目で見てランク9は確実なので、鑑定依頼したら「ランク8」。どう考えても納得いかないのでプラスティックケースをこじ開けて、そ知らぬ顔で再度鑑定を依頼したら「ランク9」とか。
結局のところ、たとえ「PSA鑑定済み」のカードであっても、購入する際には自分の目で確かめるのが一番です。自分の目に自信が無ければ、多少の手数料を払ってでも信頼できるディーラーを通して(手数料を払っての代理購入の依頼なら大抵のディーラーは快く請けてくれるでしょう。彼らの目を信頼してる証ですから)買ったほうが無難です。
ただ、これらの鑑定機関がものすごく優れている部分もあります。
「センタリング(Centering)」と「インクド(Inked)」。この2つは、一般のマジックのディラーよりも遥かに正確な判断を下します。
「センタリング(Centering)」とは、カードの印刷がきちんと中央にされているかということ。
左右・上下の縁のバランスが異なったりしていないかということを、きっちり測定して判断します。
もともとのベースボールカードの価値はコレによって大きく左右されるところもありますから、まさに鑑定機関の本領発揮といったところです。
「インクド(Inked)」とはインチキの一種。ものすごく広い意味では「偽造」に分類されることもあります。
その内容は、ようするにカードの白くなってしまった部分等に「黒インク」などを塗って誤魔化すこと。マジックのカードは背面が「黒枠」な多いため、このインチキなカード復元法がそれはそれは多く広まっています。ようするにですね、黒枠が白くはがれた部分に黒マジック(もしくは黒鉛含有率が高い鉛筆。2Bとか)で黒く塗る、と。
これ、一見すると綺麗な黒枠に見えて「わー、価値があがった」などと喜ぶあほうも多いですが、カード鑑定にかけると「鑑定拒否」の烙印を押され、ケースにも入れられずに戻ってきます。ようするに、正式なカードとして扱われません。いわゆる、ゴミ。
コレクション対象としてカードを見る場合、あとから人為的な手が加えられたものなど論外なんです。
PSA社の鑑定ではこのインクドが非常に綿密に検査されます。顕微鏡くらいの解像度でチェックされているのは間違いないかと。
さて。
今回の話では「PSA」鑑定を例として用いましたが、他にカード鑑定機関として現在有名なのに「Beckett」というのもあります。
次回はその違いなどを含めた続編を。
PSA社の新サービス「DNA鑑定」についても触れましょう。
免責(?)
この記事はリバイバル記事です。元の記事は、とっくの昔に更新停止したDiarynoteのブログです。このNoteの内容は昔に書いた内容をコピペしてますが、ところどころ修正してたりします。で、たまに当時は書けなかったことや裏話を追記しています。まあ、基本的には手抜きです。楽なことは大事。
2023年追記
文中の「10周年~」が時代を物語っています。あれよあれよという間に、30周年ですね。
鑑定機関については全4回で、これはその1回目ですね。最初なので、カード鑑定についての紹介だけで終わっています。なので、あんまり追記できる面白い話が無いですね。
PSAやらその他の鑑定機関が偽物を鑑定しちゃったというのは、何度か見聞きしたことがありますね。実際に見たのは1枚だけで、CEフェイクだったと記憶しています。その他に聞いたことがあるのは、アルファカット・フェイクとアンカットシートのリカットですね。ただアルファカット・フェイクについては、ひょっとするとひょっとするとカットエラーである可能性もゼロではないので、そうだとすると偽物ではないですね。実際、ベータのスターターからアルファカットのカードが出たという話は、ちらほら聞きます。ただその場合、鑑定ではベータのエラーカードとして表記されるべきですが。
表記と言えば、本文にもあるように、PSAはカードのエキスパンションを間違うことが多いのも、それなりに有名です。まあ、鑑定数が他の鑑定機関と比べてケタ外れに多いので、たまにそういうエラーが発生するだけという話であるとも言えますが。なお、鑑定ラベルに表記ミスがある場合、サポートに連絡すれば修正してもらえるようです。
いずれにしても、カード鑑定の本領は「状態」の鑑定であり、カードの名称やら、セットやら、バージョンやら、印刷所やら背景情報を探偵のように調べ上げるわけではないというのは、頭の片隅に置いておくと良いかもしれません。
それにしても、この記事を書いた当時はPSAとBeckettが主流であったと考えると、そこにもやっぱり時代を感じますね。Beckettはその後でMtGの鑑定を辞めたり&再開したりと右往左往してましたし、PSAも今は昔ほどの勢力ではなくなりました。eBayで「Grading」で検索すれば一目瞭然なほど、今の鑑定はCGCがかなり勢力を伸ばしています。
この辺の事情やらは、鑑定機関の話がもうちょっと進んでからお話しますね。