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招福楼 その2:おもてなし編

控えめで、見えない・見せないおもてなし

接待利用や宴会利用はないのでプライベート利用に限った話ですが、人的サービスは、基本的にはごく控えめで、親切な対応、という感じ。
極力顧客の落ち着いた時間を邪魔せず、黒子に徹する姿勢がベースです。

一方、何気に落ち葉一つない砂利敷きの庭、毎回趣向のちがう床の間のお花選び、昭和らしいあの少しゆがみを感じるガラス戸で、室内はぬくぬく暖かく、結露一つない、こっそり気密性の高い設えとか、そんな見えない・見せないところにむしろおもてなしを感じます。

変幻自在なおもてなし①女友達編

これまで3回伺っていて、サービスの在り方もお花の趣向も毎回結構違います。一回目、カチコチの30代女性二人でうかがった際は、おばあちゃま!という感じのベテランさんがついてくださいました。

「こんな敷居の高いお店初めてで、和食のマナーとかお勉強させていただきたいんです💦」

とお話ししたところ、

「私なんぞお教えするなんて滅相もない~」

とニコニコかわしつつ、

「こちらのお椀は、私ども「煮物椀」と申しておりまして、板場のものが、だしの味を是非味わっていただきたいと申しております~」

なんて、決して説明・教育目線になることなく、さらりさらりとトークに豆知識を差し込んで、お勉強させてくださいました。

30代女性二人で初めて伺う、と伝えていた4月のその日、花入れに活けられていたのは、直系10センチあろうかという今にもはじけそうな真っ白なつぼみ。ユリのつぼみがまん丸に膨らんだみたいな。なんの花かいまだに謎ですが。
みずみずしくて、つぼみなのに今にも開こうかと美しくて、招福楼の普段の感じとは少し異なる。今思えば、私たちの年齢と料亭に行ってみたいという気持ちを汲みながら、お花を選んでいただいたのだと思います。

その後、夫と2人で、今回は親子ほど年の離れた同業者の美食家のおじさまとご一緒に。シーンを変えるたび、サービスの在り方もお花も違います。

変幻自在のおもてなし②夫婦編

これが夫婦になるとどう変わったか。お花はすっかり失念してしまいましたが、確かお茶席にふさわしい感じの季節の花を、野にあるようにいけていただいていたような気がします。ついてくださった仲居さんは30代後半くらいの落ち着いた明るい方で、一つ一つ丁寧にお料理の説明をしてくださり、少し質問したり、会話が弾むと、

「板場のものが、この八寸の組み合わせの妙を楽しんでいただきたい、と、申しておりました(Smile!)」

など、楽しく会話を盛り上げてださり、頭と五感の両方でゆったりお料理を堪能することができました。

変幻自在のおもてなし③夫婦でなさそうな男女編

こういうお店に夫婦で毎回行くと、家計から二人分出ていくわけで、一般人の我が家にはツライ・・。夫はそこまで美食にこだわりもない。
そんなわけで、同じ趣味の人を見つけると男女問わず一緒に行ったり、一人でいったりもしばしばです。
今回は、一緒に仕事している20歳ほど年上の男性と美食の話で盛り上がり、今の仕事の打ち上げも兼ねて、招福楼のお夕食一緒に行きましょう!と、この度3回目の招福楼に至ったわけでございました。

予約のお電話にて、今思えばちょっと失敗。何かのお祝いでしょうか?的な会話で、お食事の趣旨を聞かれるのですが、何も考えていない私は、

「おいしいものが食べたいですね、という話になって、美食家のおじさまと伺います―」

と、そのまんまお伝えしてしまったわけです。

その結果、お花は、清楚で控えめな一輪の水仙。
50代くらいのキャリアのある非の打ちどころのない仲居さんについていただき、話の腰はおらず、黒子に徹し、話しかけられれば親切丁寧に対応するけれども決して出すぎずに早々に引く。前回のような会話を弾ませる余計な一言は加えず。

‥だって、ポロッといらん事言うと、女性の前でかっこつけていろいろ講釈している男性のプライドを傷つける結果になりかねないですもんね。そもそも、どっちがホスト側かも分からず、入りようがなかったと思われます。

おもてなしは、予約が9割!

今回の経験を経て、自分に本当にあったおもてなしをしていただくには、予約時のコミュニケーションがめっちゃ大事!ということを学びました。
予約の内容に応じて、場合によってはお料理も変わりますし、お部屋の雰囲気、サービスのスタイルまで変わります。私が気づいていないだけで、もっといろいろな点で微調整もあるでしょう。先方も、まさか、「お二人はどんな関係で?」など聞けるはずもなく、毎回、誰と、どんな目的で食事に行くのか、予約の際にそれとなく多めに情報を出しておくとよいと思います。

今回は、おそらく「年配の男性が年下の女性におごってあげていいところをみせたい系」のサービスパターンだろうなと推測します。

ふたを開けてみたら、なぜか若造の方がちょこんと上座に鎮座しちゃってるし、親子ほど年が違うのに完全お友達ノリでトークしてるし、、、???
おはじめの盃にお酒を注いだ大女将が、どう言葉をかけて始めるのが適切かと、ちょっと目線が泳いでおられました……なんだかごめんなさい。。。(^^ゞ

とはいえ、お支払いの段になって、

「あのー、割り勘で、Go To Eatで払っていいですか?」
「いや、僕が飲んでるからお酒は出すよー。」
「じゃあすいません、お酒代お言葉に甘えます―♪」
「あ、一部Go Toでのこり現金ってできます?」

と、居酒屋のごときやり取りを始めると、仲居さんの中で何かが腹落ちしたのか、

「もちろんです~!。あ、ちょっと電卓とQRコード持ってきますね~♪」と

と、肩の力が抜けた素敵な笑顔で奥に戻られ、

「なんだかややこしいお支払で、ほんとすいません~💦」
「とんでもございません~♪」

と、和やかにお見送りいただいて砂利の太鼓橋を渡ったのでした。

いいところを見せるために男性にいい店に連れていかれた経験がなさ過ぎて、むしろ新鮮やったわ。。。。こういうケースの接客って、ものすごーく気を遣うのですね、きっとね。いらぬ気を遣わせて、こちらも申し訳なかったです。

招福楼のおもてなしに、賛否両論!?

クチコミを読むと、招福楼のサービスには評価の高いものから低いものまでさまざま。わたしの周囲でも、実際に行って「物足りなく、料金に見合うサービスではなかった」という人もいらっしゃいます。

京都の老舗・有名店と比べても、特に招福楼は茶道の流儀を濃く残しておられ、基本は静かで・控えめ、主張しないスタイルです。
特に京都は海外・関東地方はじめ異文化圏からの観光客も多く、華やかな盛り付けや誰が見ても贅沢な食材、お料理の詳しい説明がスタンダードで、そちらに慣れていると、控えめな接客ぶりは物足りなく、もう一歩踏み込んできてほしいと思うのも正直なところ。

こちらもこわごわですが、もてなすお店側も、きっと毎回、どうお客さんを満足させればいいか、迷いながら対応してくださっています。
人と人の基本に戻って、難しく考えずに、こちらのメンバーや用途、「初めてで緊張しています」など、正直にお伝えすると、もっとも満足のいく時間を作っていただけるのではないかと思います。

みなさんの招福楼での時間が、忘れられない素敵なものになりますように♡


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