【10月9日「聖書の語りかけ」ローマ人への手紙1章1節⑥】「切り離された者、神の特殊部隊」
"キリスト・イエスのしもべ、神の福音のために選び出され、使徒として召されたパウロから。"1章1節
Paul, a bond-servant of Christ Jesus, called as an apostle, set apart for the gospel of God,(NASB)
さて、「使徒として召されたパウロ」の後に続くのが「福音のために選び出された」とあり、「この選び出された」という言葉は、ἀφορίζω(アフォリゾ)となる。
福音のためにパウロを選び出したのは神だ。それではパウロはいったいどこから選び出されたのだろうか。ここで再びその「from」に目を留めたい。そこでヒントになるのが同じくἀφορίζω(アフォリゾ)が使われている使徒の働き13章2節だ。
"彼らが主を礼拝し、断食をしていると、聖霊が、「バルナバとサウロをわたしのために聖別して、わたしが召した任務につかせなさい」と言われた。"
While they were serving the Lord and fasting, the Holy Spirit said, “Set Barnabas and Saul apart for Me for the work to which I have called them.”
日本語では、このἀφορίζω(アフォリゾ)が「聖別して」となんだか分かりにくい訳語になっているが、これは英語で「set apart」とあるように「切り離す」というのが正しい。それではバルナバとサウロは、いったい何から切り離されたのか?それは当時彼らが身を置いていたシリアのアンテオケ教会からだ。
このアンテオケ教会から切り離された別働隊は「パウロの一行」(使徒13:13)と呼ばれた宣教のプロ集団である。信じて間もない信者の養育もするアンテオケ教会を「正規部隊」とするなら、パウロの一行の場合、構成員にはある程度の献身度が要求されるプロ集団の「特殊部隊」ということになる。これがいわば、カトリック教会の修道士会、プロテスタントの宣教団体に当たるものの原型である。
16世紀の宗教改革以降、世界宣教に関して、プロテスタントが無関心かつほとんど着手しなかった二百年の間に、カトリック教会は世界中に教勢を拡大して、次々に信者を獲得していった。その宣教を推し進めたものこそが、まさにカトリック教会の宣教のプロ集団である修道士会なのだ。
破竹の勢いで全世界に拡大していったカトリック教会に遅れをとることおよそ二百年、19世紀になって、ようやくプロテスタントによる世界宣教の花が開く。この功績の立役者もまた、プロテスタントのプロ集団である宣教団体の活躍があったのである。聖書的モデルによる伝道と宣教は豊かな実を結ぶのだ。
主なる神よ、教会と宣教団体の両者は、どちらも宣教の実を結ぶために必要です。両者が優劣の関係でも、支配と被支配の関係でもなく、互いに尊重し合い、助け合う中で、あなたの福音が、なお全世界に満ちるように導いてください。主イエスの皆によって。アーメン。
文責 MJH石野博
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