【10月10日「聖書の語りかけ」ローマ人への手紙1章1節⑦】「生まれたときから」
"キリスト・イエスのしもべ、神の福音のために選び出され、使徒として召されたパウロから。"1章1節
Paul, a bond-servant of Christ Jesus, called asan apostle, set apart for the gospel of God,(NASB)
さてパウロは、福音のために教会から切り離されて「パウロの一行」として使命を遂行した(聖書の語りかけロマ1:1⑥参照)。そこで着目したのが「切り離す」という意味のあるἀφορίζω(アフォリゾ)だ。
同じἀφορίζω(アフォリゾ)が使われる使徒13:2では、「何から(from)」切り離されたのかに着目した。パウロはアンテオケ教会から切り離され「パウロの一行」というプロ集団の特殊部隊として従事したのである。
一方、同じἀφορίζω(アフォリゾ)がガラテヤ書の1:15-16ではどのように使われているのか、目を留めてみたい。
"しかし、母の胎にあるときから私を選び出し、恵みをもって召してくださった神が、
異邦人の間に御子の福音を伝えるため、御子を私のうちに啓示することを良しとされたとき、私は血肉に相談することをせず、"
ガラテヤ人への手紙1章15~16節
But when He who had set me apart even from my mother’s womb and called me through His grace was pleased to reveal His Son in me so that I might preach Him among the Gentiles, I did not immediately consult with flesh and blood,(Gal1:15-16 NASB)
この箇所で着目したいのは「いつ(when)から」選び出されたのかだ。それ知るとき、そこに神の深い摂理を認めることができるのである。
ペテロが同国人であるユダヤ人への使命を担った使徒だったのとは対照的に、パウロの使命は異邦人世界に福音を運ぶことだった。
それはまるで、彼がキリストに出会う以前から、もっと言うと、生まれる前の母の胎にいるときから定まっていたかのように見える。パウロの出生から、その後の人生の歩みに至るまで、そこには鮮やかな神の摂理を認めることができるのだ。
パウロは、タルソ生まれで、生まれながらのローマ市民だった。彼はこのローマの市民権を用いて、伝道旅行中に降りかかったいくつかの危機を乗り越えた。
またタルソという非ユダヤの離散の地(ディアスポラ)に生まれた彼は、ギリシャ語とヘブライ語を流暢に話す国際人として育った。これは言語面だけでなく、異邦人とユダヤ人の異文化理解にも及び、これが彼の異邦人伝道を助けた。
パウロのテント職人として一面は、巡回奉仕の絶えない彼の生活を、どの町に行っても支えたことだろう。
高名なパリサイ派のラビであるガマリエルに師事してラビ教育を受けたパウロは、自身もパリサイ派のラビであった。このような背景なしに、パウロは、旧約から紐解いて理路整然と説明する13もの書簡を書くことはできなかっただろう。これら13の書簡の影響力たるや、一部の識者をして「キリスト教とはパウロ教である」と言わせるほどだ。それほどまでに影響力を及ぼしたパウロの書簡は、彼のガマリエル門下生としてのバックグラウンドなしには書きえなかっただろう。
パウロが、迫害者の立場から救われた背景は、彼を誰よりも謙遜にさせ、パウロを「恵みを伝える伝道者」にしたことだろう。
このように、彼の人生を俯瞰してみると、生まれる前から「選び出された」パウロは、なるべくしてそのようになったことがよくわかる。
主の御手は、胎児のときからある人の人生に置かれており、その人の計画が定められている。ここにキリスト者たちの「何があっても胎児を殺めることをやめてほしい」という強い願いがある。
あなたの出生や今まで歩んできた道のりは、あなたがあなたになるための道程であり、それはあなたが胎児のときから「選び出され」ていたことを告げる。その召しは、あなたにしかできない特別な使命であり、他の誰かと比べる必要も似る必要もないものである。他と区別して「選び出された」とはまさにそういうことだ。
"あなたの目は胎児の私を見られ、あなたの書物にすべてが、書きしるされました。私のために作られた日々が、しかも、その一日もないうちに。" 詩篇139篇16節
主なる神よ、感謝します。あなたは我ら人の子に、くすしいことをなさって恐ろしいほどです。それは到底、私の知性では理解の及ばないことです。私はあなたを讃えます。
私の歩んできた道が、神の計画の中で昇華され、主ご自身の栄光とされますように。主イエスの御名によって。アーメン。
文責 MJH石野博
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