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診断士 豪一郎の『社長っ、共に経営を語ろう!』⑯

新興国進出成功事例

翻訳会社社長と中小企業診断士という二足のわらじを履く豪一郎。

本日はアマタナコン工業団地内の日系企業2社との面談である。移動の車中で、現地の日本語新聞に目を通す豪一郎。ある記事に目が止まった。

アマタナコン工業団地とアマタシティ工業団地を運営するA社社長に対するインタビュー記事である。ちなみに、ナコンとは、都市を意味し、タイ初の工業団地ナワナコン工業団地の名にもこのナコンが見られる。

さて、北部工業団地の洪水に加え、自動車産業の継続的な発展により、A社は更なる拡張を推し進めている。

洪水の不安はタイ国内どこにでもあるが、アマタナコンは海に近く、アマタシティは山がちで勾配を取りやすいといった立地条件により、排水に有利だと強調されている。

最近の動向としては、中小企業の入居の増加、賃貸工場の需要の伸びが上げられている。賃貸工場には、初期投資が抑えられ、迅速に稼働できるという利点がある。

さて、一社目の訪問先は、自動車部品を主力とし、金属・樹脂部品の加工を手掛けるAD工業である。タイ進出のきっかけは、玩具メーカーZ社からの新規受注であった。収益多角化を目指し、「自動車・家電・雑貨」の三本柱を掲げる同社は、このZ社からの新規受注により、雑貨部門を強化しようと意気込んでいる。

明確な経営方針の提示が、明日へ繋がる戦略の源になり、窮地に追い込まれている中小零細企業の新規受注、現状打破の糸口になるのだ。豪一郎は、そう思った。

AD工業の現地責任者からは、こんな話を聞くこともできた。「同社にとって海外進出は大きな決断であった。」「タイ人従業員との意思疎通も一苦労だった。」だが、「常にアンテナを高く、時代に求められるモノづくりに取り組みたい。」との思いが支えになっているとのことだ。

2社目の訪問先M精密は、H社系の部品メーカーだが、A精機(T系列)のインドネシア生産子会社からの新規受注に成功した。同社は、海外事業を通して、T自動車グループとの取引を拡大している。

そもそもは、T自動車が世界戦略車をタイで立ち上げた際、T自動車のタイ工場に納入したところから始まる。

その後、インドネシアでD工業(T系列)とも取引を始めたという。顧問先のO製作所をこんなグローバル企業にしたい。豪一郎は、そう思った。

M精密は、H社の二輪車の海外展開に合わせて早くからグローバル化を進めており、T自動車系の中堅自動車部品メーカーよりも海外生産で先行していたのだ。

ここから読み取れるのは、二点。海外での系列の垣根の低さと、二輪車のビジネスモデルの四輪車への応用の可能性である。二輪車の部品メーカーが辿った道と同じ道を、四輪車の部品メーカーも辿ることになるのだろう。

豪一郎は、2社との面談メモを、顧問先のO製作所への『経営改善提案書』に、祈るような気持ちで差し込んだ。

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MTC
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