ペダルボード構築 その① ~準備編~
こんにちは。「きざいをいじるのが得意なフレンズ」のみんてぃあです。
今回はバンド用に新しく組んだペダルボードの解説をしていきます。
(※見出し画像は過去のボードで、今回の新ボードとは関係ありません笑)
元々は備忘録としてメモ程度に書き留めようと考えていたのですが、せっかくあれこれ悩んで作ったのでどうせなら拘りや美学を少しでも知ってもらおうと思い、Noteにまとめて公開することにしました。
機材にちょっとでも興味がある人は読んでいただけると嬉しいです。
【追記① 8/5】
ライブ前の最終調整を経て、最終的に下記のようなボードになりました。
持ち運びを重視したはずなのにペダルが外付けになっている、、、
▼ 構想
・ボードの構想について
新しくボードを作るにあたって、まずは「どのような音を出したいか」「どのような動作を実現したいか」をリストアップする必要があります。今回は自分が参加しているRoseliaのコピーバンド用にボードを新調するというコンセプトなので、実際に演奏する曲の音色の切り替えやライブでのアクションを想定しています。まとめるとだいたいこんな感じです。
ほぼドライブサウンドがメインになるので、なるべく良い音にしたい。
クリーントーンの使用は1割未満なので、頻繁な切り替えは必要ない。
ギターが1本なので、所々オクターバーを使って厚みをカバーしたい。
ハーモナイザーを使用する曲あり。モメンタリーでON/OFFしたい。
ワウも少しだけ使う可能性がある。
コラボペダルを載せたい。
ギターソロの前に一回転したい。本家パフォーマンスの再現。
これに加えて、昔からボードを作るときに必ず意識している「自分ルール」も盛り込んでいきます。
アウトプットボリュームを足で操作できるようにする。
信号・電源をそれぞれまとめて、最速でセッティングできるようにする。
手持ちで運べるサイズ感に抑える。
推し色に光らせる。
やりたいことがリストアップできたら、次は機材の選定を行っていきます。
▼ペダル選び
・アンプシミュレーター
まず、出したい音はハイゲインのドライブサウンドがメインとなります。自分のようにマイアンプを持ち込む気力や余裕が無い人はディストーション系の歪みペダルやコンパクトサイズのプリアンプを使うのが一般的かと思いますが、今回は曲によって歪みの質感やゲイン設定を変えたかったのでデジタル制御のアンプシミュレーターを採用することにしました。せっかくなので実験の意味も込めて話題の新製品「Tonex Pedal」をチョイス。
本物のアンプの音を解析してデータとして取り込むことで、サウンドを再現できる最新のアンプシミュレーターです。これ一台あれば、何十万もするような高級ブティックアンプから入手困難な激レアのアンプまでまとめて持ち運ぶことができます。歪みのサウンドも選びたい放題です。今回はこの機材を中心にしたシステムを組んでいこうと思います。
このペダルにはフットスイッチが3つ用意されていて、異なる質感の歪みやソロ用の音色などをそれぞれ割り当てることで、直感的に足で音を切り替えることができます。しかし、この切り替え動作時に他のエフェクターも動作させようとすると単純なON/OFF程度しか設定することができず、「ギターソロのときにはディレイの深さとタイムを変えて・・・」等の複雑なコントロールができません。そこで今回は、このアンプシミュレーターを直接足で操作するのではなく、別の機材と連動させて色々なパラメータをまとめてコントロールできるように設定していきます。
・フットコントローラー(兼 マルチエフェクター)
白羽の矢が立ったのは、以前から愛用しているBOSSのマルチエフェクター「GT-1000 CORE」です。フットスイッチの数は「TONEX」と同じ3つですが、こちらの方が内部設定の自由度と拡張性が高く、コントローラーとして非常に使いやすい性能なので、メイン機材の一つとして導入することにしました。(ついでに左隣に写っている縦長のデュアルフットスイッチ「BOSS / FS-7」もセットで採用します。)
先述の「TONEX」をこの「CORE」のセンド/リターンに接続してMIDIケーブルで同期すると、COREを操作するだけでTONEX側の音色も切り替えることができるようになります。また、この「CORE」はオクターバー・ハーモナイザー・ワウなどの必要なエフェクトをすべて内蔵しているマルチエフェクターなので、サウンドメイクに関しては上記の2台だけですべて完結することができます。この後も何台かペダルを増やしていきますが、今回のペダルボードで実際に音の信号が通るのはほぼこの2台だけです。信号ラインをシンプルにすると、音質劣化を防ぐだけでなくトラブルにもスムーズに対処できるようになるのでオススメです。
【追記② 08/05】
何度かスタジオで使用感を確かめた結果、マルチエフェクターの「H9 Harmonizer」とオーバードライブペダルの「Fountain」を追加しました。
・ハーモナイザー
元々「CORE」に大量のエフェクトが内蔵されているので、他のエフェクターを使うつもりはありませんでした。しかしとある楽曲でハーモナイザー(あらかじめ設定したKEYにそってハモリを付け足してくれるエフェクト)を使用した際、内蔵のエフェクトが思ったほどきれいに追従してくれなかったので、急遽手持ちの「H9 Harmonizer」を追加することにしました。
ピッチ系のエフェクトはデジタル処理の際に複雑な演算が必要となるため、できるだけ高性能なものを単品で用意してあげた方が動作が安定します。
・オーバードライブ
「H9」を追加した時点でボードのサイズ的にボリュームペダルを外に出すことが確定したため、さらにコンパクト1個分ほどのスペースが空いてしまいました。自分はボードに隙間があったら極力埋めたい性分なので、空いたスペースに「Fountain」というドライブペダルをマウントしました。このペダルは「TONEX」で作ったドライブサウンドにゲイン感とコンプレッション感を足す用途で使用しています。
・ボリュームペダル
メインのペダルが固まったので、あとは操作性を向上させるペダルやアイテムを追加していきます。まず、コンセプトの一つとして挙げたコラボペダルですが、こちらは「Perfect Volume "SAYO"」というプロ御用達のボリュームペダルを採用。コラボアイテムということで、Roseliaのギタリスト「氷川紗夜」の所有するギターと同じブルーカラーを基調に、バンドのトレードマークである薔薇があしらわれた限定デザインとなっています。(しかも通電すると筐体サイドがイメージカラーのターコイズ色に光ります!!←ココ重要)
今回はギターからの信号の直後/アンプシミュレーターの直前に配置して、歪み量をコントロールできるように設定します。
また、自分ルールの一つに挙げた「アウトプットボリュームの操作」には「EV-1 WL」という別のペダルをあてがいました。これは「CORE」の外部コントローラーとして接続する機材なのですが、一般的なエクスプレッションペダルとして接続できるだけでなく、MIDIコントローラーとしても接続できる便利な代物となっています。これにより「普段はボリュームペダルとして使いつつ、踏み込んだときにワウとして使用する」といった細かな設定をアサインすることができます。
・ジャンクションボックス
さらに、セッティングを少しでも早く済ませるためにジャンクションボックスの「JCB-4S-Flat」も追加します。これをボード内に設置すると「ギターから伸びてくる入力ケーブル」と「アンプへ伸ばす出力ケーブル」の接続位置を一か所にまとめることができるので、見た目にも機能的にもよりスマートなボードになります。同社のジャンクションボックスは本来もう少し大きなサイズなのですが、今回はワイヤレスシステム「WL-60」の土台としての役割も持たせるために高さを抑えたフラットタイプの方を採用しました。
・ワイヤレスシステム
ギターからペダルボードまでの信号をワイヤレス化することで、立ち位置の制限がなくなり自由にパフォーマンスできるようになります。(やるかどうかはその日のテンション次第ですが…) また、ケーブルが1本減るのでスタジオやステージでのセッティングの時短にも効果的です。さらに今回は傍にジャンクションボックスを併せて導入しているので、万が一ワイヤレスが正常に動作しない場合でもそのまま下のボックスにシールドを挿すだけでボードが動作するようにしています。(トラブルを想定した設計、大事です。)
・パワーサプライ
最後に、各エフェクターに電源を供給するパワーサプライというアイテムが必要となりますが、今回の構想にベストマッチする製品はあいにくまだ国内で発売されていないため、ひとまず手持ちの「Ojai R30」で代用しようと思います。(お目当ての製品は為替相場を見つつ個人輸入を計画中。)
コントローラーの「FS-7」とボリュームペダルの「Perfect Volume」はアナログエフェクター、それ以外の4台はデジタルエフェクター(※ジャンクションボックスは電源不要)なので、今回のボードではアイソレートタイプの電源が有効です。ただ、システムの中核である「CORE」は消費電流が670mAと大食漢で、そのまま接続すると1つのポートの供給電流が500mAの「Ojai」では賄えません。そこでまず、「CORE」をカレントダブラーケーブルで接続して500mA×2ポート=1,000mAの電源を供給して、残った3ポートで他のエフェクターを動作させることにしました。まとめると、電源まわりは下記のような配線となります。
ポート1+ポート2 → GT-1000 CORE (カレントダブラーケーブル使用)
ポート3 → TONEX PEDAL
ポート4 → EV-1 WL
ポート5 → WL-60 [→ Perfect Volume]
ここで良い仕事をしてくれるのがワイヤレスの「WL-60」で、この製品はアダプター駆動させると他のエフェクターにも電気を"お裾分け"できるように設計されています。なので今回はこの機能を使って「Perfect Volume」にも電気を回すことにしました。(これで推し色に光らせることができます。)
この時点で5ポート+αをフルで使用しているため、もう一つのアナログペダル「FS-7」には全く電源供給できない状態になってしまいますが、このペダルは動作確認用のLEDにしか電気を消費しないので、電源供給無しでも問題なく動作させることができます。これで必要なペダルの電源は「Ojai」一台ですべてカバーできるようになりました。
【追記③】
「H9」「Fountain」が追加されたことにより、ポート数が足りなくなってしまったのでパワーサプライ自体を新調しました。
ポートの供給電流は変わらず500mAのため、「CORE」はカレントケーブルで接続していますが、ポート数には余裕があります。最終的に下記のような配線になりました。
ポート1+ポート2 → GT-1000 CORE (カレントダブラーケーブル使用)
ポート3 → Fountain
ポート4→ H9 (極性・口径変換ケーブル使用)
ポート5 → TONEX PEDAL
ポート6 → EV-1 WL
ポート7 → WL-60
あえて「Perfect Volume」用の電源を引いていないのは、IN・OUTに加えてDCケーブルまでボード外に這わせるとトラブルの原因になると考えたからです。ボードの外にはみ出るケーブルは極力減らした方が安全。足を引っかけたりしたら大変ですからね! このペダルは内蔵の9V電池でも光らせることができるので、今回は最終的に「Perfect Volume」と「FS-7」の電源はつながない方向で組みました。
また、このパワーサプライには自分にとって重要な機能が搭載されています。それは"USBポート"です。USB-AとUSB-Cの2ポートが用意されており、本来は変換ケーブルを使ってさらにエフェクターを稼働させたり、ステージライト等のアイテムに使用することを想定しているのですが、自分はこのポートからLEDテープの電源を引くことで、ボード全体を光らせています。
今までは専用のアダプターやモバイルバッテリーをボード背面に取り付けて電源を引いていましたが、USBポート付きのパワーサプライなら他のエフェクターと同じところから直接電源を供給することができます。その他にも、譜めくり用のフットスイッチの電源やペダルの発熱対策用の冷却ファンの電源をここから取るというアイデアも実現できるので、USBポートを搭載しているパワーサプライは今後選択肢が増えてくれると嬉しいです。
このほかにも、パッチやDC等のケーブル類やエフェクターを固定するベルクロ(両面テープ)、ケーブルタイなどのアイテムを事前に見繕っておきます。パッチとDCは極端に安い物でなければ問題ないイメージですが、作業効率や手直しの手間を考えると「ソルダーレスケーブル」と呼ばれる任意の長さに切ってハンダ付け無しで工作できる製品が個人的にはオススメです。
今回のボードはパッチ・DCケーブルをすべて「Free The Tone / CU-416」で統一しています。
これで必要なペダルやアイテムは固まったので、次はボード本体のサイズや種類を決めていきます。
▼ボードのサイズ決め
自分の経験上、ここをなんとなくで決めてしまうと後で絶対に後悔することになります() 今後の作業工程を踏まえて慎重に選びたいところです。用意するエフェクターのサイズや配置順など悩んだ末に、今回のボードでは下記の製品を採用しました。
このような「すのこ型」ボードは、ケースの蓋がそのままボードになる従来のペダルボードと比べて耐久性が劣る分、運搬性に優れています。ほぼ電車移動の自分にとって「手持ちで運べるサイズ」というのは非常に重要な要素の一つです。今回はケースのサイズを決める時点ですでに設置するエフェクターの数や種類は吟味していたので、実際の配置やバランスをシミュレーションした結果、横幅を抑えたデザインのこちらを採用しました。
この"事前に配置をシミュレーションする"という作業、実はめちゃくちゃ大事です。これをやらずになんとなくでペダルを配置していくと、だいたいジャックやフットスイッチなどが干渉して修正を余儀なくされます。場合によってはケースのサイズから選びなおしです。新しくボードを構築するときは、まず最初に各ペダルの実寸を測って、それぞれ余裕をもって配置できるサイズ感のボードを選ぶようにしましょう。
自分はPCで簡単な設計図を引いてイメージを固めてますが、最近はこんなサイト(https://pedalboardplanner.com/)でも簡単にシミュレーションできます。
ちなみに、意外と見落としがちな「すのこ型」の特徴の1つに「ボードの傾斜や高さがキツい」という点が挙げられます。傾斜のついたボードにワウやボリュームなどの足で操作するペダルを設置すると、平らな地面に設置した時よりも踏み込む角度がキツくなってしまうわけです。また、各エフェクターがすのこで底上げされる分、フットスイッチの位置も少し高くなるので、従来のペダルボードよりも若干踏みづらくなってしまいます。今回は自分のプレイスタイル的にペダルの踏み込み操作よりもフットスイッチの切り替え操作を優先したかったので、操作性の面も考慮して手前側(フットスイッチ側)の高さが抑えられたデザインの「MONO」を採用しました。逆にペダル操作を頻繁にされるという方は、傾斜の無いタイプのすのこボードを採用するか、ペダルだけ外付けで床に設置するようにすると良いと思います。
ここまでがペダルボード構築~準備編~です。おそらく最後まで読んでいただいた方の半分以上が「アマチュアがペダルボードごときにそんなに拘らなくても…笑」と引いていると思いますが、演奏の上手下手やプロアマ云々とは関係なく自分の拘りをアピールできるのがペダルボードの魅力の1つだと自分は思っているので、これからも納得いく物が出来るまで時間とお金をかけていく所存です()
次回、作業編に続きます。