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私の見てきた事業再生の世界~§5. 将来計画の策定(その1)

前回までで、現状分析について説明させていただきました。今回からは、将来計画の策定について説明させていただきます。

この将来計画の策定では、事業再生計画書(案)が作成されます。これは、金融機関に対し金融支援をお願いするための直接的な資料であり、この資料を下に、金融機関が支援に応じるか否かを判断するため、とても重要な資料と言えます。

今回は、この将来計画を策定する上で、事業再生計画書(案)の構成とその中で、特に重要なアクションプランの策定ポイントについてもふれていきたいと思います。

事業再生計画書(案)の一般的な構成

● はじめに
● 会社の概要
● 窮境の原因と支援に至った経緯
● 事業再生計画(案)

● 金融支援の依頼事項
● 経済合理性
● その他事項
上記の内、今回は、事業再生計画(案)までを説明し、それ以降は次回にしたいと思います。

はじめに

これは、事業再生計画書(案)を説明する前に、会社(社長)から各金融機関への挨拶文になります。

事業再生計画(案)はアドバイザーが勝手に作るものではなく、会社(社長)が作成するものです。あくまで、アドバイザーは、会社(社長)の想いをくんで、体裁を整えていくという役割が理想的だと思います。

はじめには、誰も読まない部分かもしれません。しかし、唯一社長の想いを直接的に記載できる部分でもあります。だから、私は、必ず社長の想いを入れるようにしています。

会社の概要

ここでは、財務DDや事業DDでまとめられた情報が記載されます。内容的には、会社概要、沿革、組織図、ビジネスモデル、業務プロセス、SWOT、過去の業績推移などになります。

窮境の原因と支援に至った経緯

基本的には、財務DDや事業DDで触れた内容ですが、スライドにして2~3枚にまとめることが多いです。したがって、財務DDや事業DDでの報告事項の要約版になることが多いです。

事業再生計画(案)

まず、(案)としているのは、この事業再生計画が金融機関の同意を前提にしているということを意味します。

つまり、「この事業再生計画は、会社(社長)の一人よがりで作ったものではなく、これからの金融機関調整の過程で、金融機関の皆様の意見も取り入れながら確定にしていきたい」ということを言いたいわけです。

ただ、実際に変更を求められることはしたくはないですが・・・

なお、事業再生計画(案)の一般的な構成は以下の通り。
● 事業再生計画の骨子
● 数値計画(成行PL含む)
● アクションプラン(概要と詳細)
● その他

まず、事業再生計画の骨子として、計画期間、アクションプラン、経営責任・保証責任、株主責任、計画目標、再生スキームなどを要約した内容が記載されます。

次に、数値計画、成行PL、アクションプラン(*)の概要と具体的な内容へと展開していきます。

(*)アクションプランについては、サンプルの事業再生計画上は、「財務・事業の再構築」という名で説明されています。

その他、必要事項を説明していきます。サンプルでは、保証責任について、詳細に記載しています。

アクションプランの策定ポイント

事業再生計画を策定する上で、とても重要なパートです。ここが無ければ、支援をお願いすることはできないでしょう。

アクションプランを策定する上で、誰が(Who)、いつまでに(When)、何を(What to do)、どのように実行し(How to do)、その効果はいくらか(How much)?を具体的にすることが重要です。教科書的にもそんな指摘はあると思います。

これが明記されていると、現実的かどうか?実行可能かどうか?等がわかってきます。

一つ一つのアクションプランを吟味すると共に、全体として現実的で実行可能かを検討します。仮に、一つ一つのアクションプランは良いとしても、全ての行動主体(Who)が社長だと、全て計画期間内で実行できるのか?という疑問が生じます。

そのため、別紙などでアクションプランのスケジュール(工程表)なども作成したりします。

もう一つ大切なことは、自助努力が反映されているか?です。

自助努力とは、簡単に言うと、自分たちの身も切っているか?ということです。例えば、役員報酬を減額したり、資産売却をして債務を少しでも返済することを検討しているかどうか?ということ。

上記は、アクションプランの内容面についてですが、その前提として、「会社(社長)がこれならできるかも!?」と思えるものにしないといけません。この辺は理屈ではないところもあります。

実際、中小企業の場合、人材が豊富にいるわけではありません。少ない人員で多くの事を行っている現状があります。現場は日々刻々と状況が変化し、その日、その日対応しなければならないことが多いものです。

特に、「これまでのやり方を変える」、「通常業務と異なることを行う」、といったことは敬遠されたり、後回しにされがちです。そうならないためには、強いリーダーシップが必要であり、会社(社長)のコミットメントが無ければ実現できるものもできません。

以上のことから、アクションプランの策定ポイントとして、

① 具体性
② 自助努力
③ コミットメント

の3点に注意して作成いただければと思います。

事業再生計画書サンプル

会社の概要、窮境の原因と支援に至った経緯、事業再生計画(案)までのサンプルを作成しましたので、以下よりダウンロードしてご覧ください。

次回、将来計画の策定(金融支援の依頼)ご説明させていただきます。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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