NISEKO EXPEDITION 2023~蛇走の軌跡:第4章 雷電の悪魔
藪の先も藪
何とか沢登りを終えたteamKOKAJI JASO。休憩をしている間に、teamKOKAJI Legendに先を越される。
が、この時はもはや時間的に最後のTAまでは行けないという気持ちになっており、これから長い縦走が始まるため、しっかりと気持ちを整えることが重要だと考えていた。
相変わらず、私の準備が遅い。
皆をイライラさせてしまっていたかもしれない。
ただ、そんなことはお構いなしの私。「さて、行きますか!」
JASOが動き始める。
今一度、CP12からTA4までの道のりをおさらいしておこう。CP12の朝日温泉から雷電山、目国内岳、前目国内岳を縦走し、新見峠へ下りる。総距離約25km、累積標高は約2000mだろう。
ここからは、オーリーさんが隊列を引っ張る。
次いで泉さん、私、双樹さんという順番。
オーリーさんと泉さんは元気であった。
私と双樹さんはゆっくり。
そして、徐々に登山道がなくなってきた。
藪漕ぎである。足元も見えない。
オーリーさん曰く、「雷電までの道のりはかなり険しいと聞いてます。」
ただ、あれほど藪が深いとは想像もしていなかった。また、天候もあまり良くはなく、小雨や風が出てきて、沢登りからのカラダの濡れが解消されない。
なかなか厳しい行軍であった。
完走の分岐
夕方に差し掛かり、teamKOKAJI Legendに追いつく。雷電山手前の小ピーク。
どうやら藪が深く、進道がわからないとのこと。我々もLegendチームが行き止まったところまで行ってみたが、確かにわからない。無理やり突っ込んでみようとしたが、藪が濃すぎて進めない。
双樹さん曰く、「登山道であれば、藪が刈られている形跡があるはずだが、ここにはない。この辺にはもうないから、一旦戻ろうと。」
刈られた形跡がある地点まで戻った。
そして、そこで地図を見比べ、もうちょっと左の方に道があるのでは?
そう言って、双樹さんが「少し見てくる」と言って左の藪に突っ込んでいった。
数分後、双樹さんが無言で手招きをしたので、メンバー全員、無言でそちらに突っ込む(笑)。私は、鈴の音をすぐさま消して、突っ込んでいった。
悪魔に心を売った瞬間である。
これが完走の分岐。
双樹さんのナビゲーションは天才的であった!
同時間帯にいたチームはそこにたどり着くことができず、元来た道を下山。
トラッキングを見る限り、その後雷電を超えてきたのはChateaubriandの1チームのみ。
水場
藪を超え、これからというところ、2日目の夜を迎え、私の眠気はピークに・・・徐々に睡魔との闘いが始まった。
沢登りの疲労やら藪漕ぎの疲労やら、ずーっとカラダが濡れて、寒さも感じるようになり、低体温も重なり、行動も遅くなる。
何度も意識が飛ぶ。下りで踏ん張ることができずに、何度も滑って転ぶ。
何とか雷電山に到着しそこから稜線を下りていく途中、水場を発見。
さすがに私のフラフラ具合を見かねた泉さんが、「ここで一旦休憩しましょう」と言ってくれ、休憩することにした。
泉さんはすぐにエマージェンシーシートを出してくれて私に巻きつけてくれた。
やはり女神さまじゃ(笑)。
水場で水を汲み、お湯を沸かし、みんなで暖を取った。私はエマージェンシーシートにくるまっているのでまだいいが、待っているオーリーさん、泉さん、双樹さんはみな寒そうであった。
本当に申し訳ない気持ちで一杯であった。
ただ、今は回復に集中すべきだと思い、カラダを休め、自分のできることをやった。
1時間程、休息し少し回復した。
そこからは、泉さんのポールを1本借りて、進むことに。
正直、雨が降っていなければ、もっと早く仮眠をとる選択をしていたであろう。しかし、今回は雨でトレイルが濡れていたことや、若干、風があり、停滞の方がリスクが高いと思い、なかなか休息を取る判断ができなかった。今でも、どのタイミング取るべきだったか?悩ましい。
TA4
水場から再度動き始めたJASO。
フラフラであることには変わりはないが、途中、綺麗な月が我々を照らしていた。深夜帯に入り、雪渓を通過しながら、縦走を続ける。
こんなことアドベンチャーレースじゃないとやらないなぁと思いながら、目国内岳、前目国内岳を通過。
朝日温泉から約11時間。ようやく、ロードに出てきた。
ここまで長い長い藪多きトレイルを進んできたので、すこし安堵感がある。しかも深夜なので車なんて走っていない。
私は、ここで目を閉じたり開けたりしながら歩いたり走ったりしていた。ロードだからできる技であるが、だいたい8歩目を閉じ、一瞬目を開ける。そしてまた8歩目を閉じる。これをすると少しは睡魔が飛ぶのである。
ロード区間も長かったなぁ。
TA4の手前でエイドの方々出迎えてくれた。
「CP14はこの先です」と・・・CP14だけでも取って戻ってきたらという促しに対して、メンバーは「もう無理!」という反応であった。なので、若干の悩みはあったが、CP14をスキップする決断をしてTA4に入ることにした。
ここでは強制的に1時間の休憩を強いられる。
7月2日(日)am3:08。TA4に6番目に到着。経過時間は27時間8分。
到着するとSleeping Sheepが出発の準備をしていた。エイドの方々との話をすると、思ったより到着チームが少ないとのことで、かなり厳しい状況だということがわかる。
そして、ここに到着した時点で、我々のレースはほぼ終わりを迎えた。
ちなみに、次のセクションは
Leg6 マウンテンバイク
距離:約17km 累積標高:300m(+) 700m(-)
CP20:林道終点
CP21:分岐
CP22/TA5:林道
次のTA5には3時までにつかなければいけないが、TA4に着いた時点で3時8分。タイムオーバーが確定した。
一方で、TA5の撤収が8時までなので、そこまでに到着できなければ、TA5の60ポイントをゲットできない。
前回もそうであったが、最後のMTBセクションがどうも中途半端で終わってしまう。まぁ仕方ない。
オリエンをできる限りやって、8時までにTA5を通過して、あとはゴールに戻りましょ。という予定を組んで進むことを確認した。
次回、最終章、余韻。
最後までお読みいただきありがとうございました。