
どうして今まで田名網敬一を知らなかったのだろう?【田名網敬一 記憶の冒険@新美】
作品は絶対に見ているのに、今までその人の名前を知らなかったことを悔いた。ここまでの大規模個展は初だという「田名網敬一」だ。国立新美術館でこの展覧会が始まったのが8月7日、その2日後の8月9日、会場を訪れることなく彼は88歳で亡くなった。やり遂げたからとか、ホッとしたからとは思わない。いや、思えない。そんな熱量でつい最近まで膨大な作品を生み続けていたからだ。

コワかわいい…♡
「記憶の冒険」というタイトル通り、田名網さんは自分の戦争体験の記憶や、夢の記憶、若い頃に自分が心奪われたものの記憶…ときにそれが事実に基づかなくとも…増幅する記憶を綯い交ぜに行き来するように作品に落とし込んできたのだそうだ。初期からつい最近まで時系列に変化しながらも淀まぬ世界観を追っていくのは私にとっても冒険のようだった。


それは、どぎつい配色とあまたの目玉が容赦なく無音の大音量に迫り四方八方から覆いかぶさってくるなかなか過酷な冒険で(笑)もっと見たい、もっと見たいと興奮している反面、もう見れない、もう見れないと集中力が切れてきた。そこで一旦退場して同日に開催されたシンポジウムを聴きに行くことに。

美術史家の池上裕子さん、映像研究者のジュリアン・ロスさん、小説家の朝吹真理子さん、美術作家で芸大で田名網さんの教え子でもあった束芋さんの4人が登壇し、田名網作品や人柄についても話してくださった。
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