7/18[Wrote by Tadakane Sanjomiya]
「忠兼さん、おじさんだね」
まじまじと俺の顔をみてめぐがそう言った。普通にショックなんだけど。思えば喧嘩のたびに俺はめぐにひどいことを言われてきた。
「あんたのことなんか別に知らないし!何様なの?チヤホヤされているのは職場だけ。勘違いすんな」
違う、勘違いじゃないんですよ、、、なんて言い訳さえさせてもらえない。
同期の連中に同じようなことを言われたか確認した。
和人いわく
「俺はヤリチンって言われた。もう長らくそれらしく燃えてないのに」
栗生いわく
「言われるのわかってるからキレてるときはとりあえず沈黙に徹してる」
卓いわく
「俺は別にないよ。いつでも構ってもらえると思うなよなんて言われるけどそれは別に、、、ねえ?」
同期以外にもアンケートを取ってみた。
横田さんいわく
「うーん、ない」
文麿さんいわく
「いつもニコニコしてくれてるよ、時々気弱になるけど、基本的にいい子だよね」
糸成くんいわく
「いやあ、逆にすげえ褒めてくれるよね。感受性高いんだなあって思う」
基実くんは、、、
「あー、言われることもあるけど、いいじゃん、別に。女の子だもん」
最後の基実くんの言葉はとどめの一発だった気がする。
つまり俺たちの器が大きいか小さいかなんじゃないかって言う。。。
彼女の強烈な一言を覚えているだろうか。
「遊びとか本気とかそういう概念で恋愛していないし、そういう恋愛観の男と付き合うことは女の生き恥と同義語だ」
本命といえばめぐが喜ぶと思っていた。遊びと比べたらめぐは俺を認めてくれるかと思っていた。そんな俺のことを知ってか知らずかそう言った夜が忘れられない。
基実くんと卓に相談しようかと思ったこともあった。
知ってか知らずか、めぐは俺にこんなことを言った。
「ひとりで決められない男、ひとりで行動できない男がひとりの女性と対等に付き合えるなんて思うな。精神成熟レベルに合わせて恋愛しないとうまくいかないことは私は嫌と言うほど経験してきた」。
頭を鈍器で殴られた思いがした。
「嫉妬を煽ることを恋愛手法のひとつだと思っているなら、2度と関わらないで。迷惑」
そう言われたこともあった。
じゃあ、基実くんと結婚しながら俺や卓にもふらついているメグはどうなんだよと言いたくなった。
それを基実くんが解説してくれちゃうから、俺の沽券がまた下がるんだよな。
「めぐが今1番に考えているのは仕事だよ、忠兼くん。見てわかるでしょ?死ななきゃいつか誰かひとりを選ぶ時が来るって。あの子は高潔なほどに真面目なことわかるでしょ?今だってひとりに決められないことで時々悩んでるんだから」
わかってる。そんなことわかってる。
順番を待って10年列に並んでいた卓や基実くんに穏やかに言われたら俺は何もいえなくなった。俺も列に並ばなきゃならないのかと思うと諦めようと思ったこともあった。
「あたしはね、メンヘラで仕事人間。仕事ができないことが一番むかつく。でも、みんなの活躍も見たい、でも、あたしはみんなと一緒にいたい。仕方のないことだってみんなが言ってくれたらいいのになあ」
2021年9月。
そうやって人生初めてのお願いをしたんだよってめぐが白状した。
泣いて笑って喧嘩して、むかついて誰よりも俺を粗末に扱う女性、伊織恵。
でも忠兼さんがいなくなると泣いて立ち上がれないこと多いの。一緒にいたときの思い出は全部楽しいから。
怒ってわがままを言って、喜んで誰よりも俺を勝たせる女性、伊織惠。
願わくば、彼女がリアルで基実くんと離婚しますようにと今日も祈っている。