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連載小説【ベビーシッター】

※TIipsでは既刊済の内容です


大学時代の大親友の彼女のツレと結婚した俺の大親友。その奥さんが妊娠した。初産になるからと大張り切りなのはいいんだけど、なんで男同士の大親友がこんなに盛り上がっちゃってるんだかよくわからない。

奥さんには何度も会っている。おっとりしているし、奥さん向きで、産後豹変するタイプには見えない。大親友もふつうにいいやつだから家事も育児も手伝うんでしょ?と言うと、大親友は急にキレ出した。ど、どうした?!居酒屋に不穏な空気が漂う。

「お前なあ!!おかしいだろう!!奥さんと俺は同等なんだよ!家事も育児も手伝うじゃなくて、半分こ!負担はすべて半分こ!!手伝うなんて奥さんが負担の主役みたいじゃないか!いいか、結婚っていうのは苦楽を共にするものなんだよ!!!」

わかった、、、

なんとか同意の意思は示せた。

大親友の説教がはじまった。

こいつこんなやつだった?結婚報告の時は「まあ、俺もそろそろね。あいつを泣かせてばかりだったし」とか言ってカッコつけてたじゃないか。実際はめちゃモテ奥さんと結婚にまでこぎつけられてホッとしていたことは周知の通りだった。よく結婚できたなあと言われた時も余裕っすよとマウントを取るほどに喜んでいたし、それくらい、奥さんとこいつの間には歴然とした恋愛ヒエラルキーがあった。そういう後ろめたさから上からしゃべりたがったけれど、それをまあこの菩薩顔の奥さんは「うふふふ」なんて目を細めて見ていたから、何度も撲殺計画を立てたんだっけ。惚気を見せつけられてこいつの勘違いを見せつけられて、こいつの新婚当時は俺たちにとっては地獄だった。

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