連載小説【帝冠】7/25
正妻の若子は東の宮に、側室の小月蘭は西の宮に、妾のおり雨は南門の端にある花園の奥屋敷を設けられていた。
盲法師はどこにいるのか?雲下の者たちは多様に想像力をかきたてられ、いくつもの物語が巷では流行した。
事実、正妻の若子も側室の小月蘭も妾のおり雨も、宮中の雲間から時々姿を見せることがあった。お出ましというような儀式ばったものではなく、覗き見できた程度のことであるが、それでも雲の下の人々にとっては大いに感嘆するありがたい奇跡だったのだ。
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