短編小説【MDプレーヤー】6/18
「思い出があったらいいのにね」
夜明け前、丘から見下ろした町々。TIMEを思い出す。
いつかのメリークリスマスを聴きながら俺たちはドライブをしてここに来た。久しぶりの故郷。東京からのドライブの途中、彼女は居眠りをしたから「愛しい人よ、Good Night」も聴くことができたし、月明かりの渋さに「月光」も楽し無ことができた。
俺と彼女が会えない時期に俺たちを支えてくれた音楽には感謝しかない。はじめての互いの共通点に導かれて俺たちは昨年、晴れの日を迎えられた。ちょうどクリスマスイブだったことも不思議な縁だと思っている。
冷え切った空気は俺たちの故郷特有の美しい雰囲気を演出する。
俺たちの故郷は美しかった。はっきりと主張する四季の表情、はっきりと見せてくれる季節の匂い、はっきりと感じさせてくれる焦燥感、安堵感、そして恋心。
あの色を俺だけが恋の色だと思い込んでいた。
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