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7/11[Wrote by Suguru Uemiya]

「メグちゃん、ディズニー行きたくなっちゃったなぁ、、、」

夜半のめぐみさんの甘えん坊モードのつぶやきに耳を疑った。隣で仕事をしている基実の顔を確認する。無言で頷いている。どうやら夢ではないらしい。斜め後ろにいる勇都の顔も確認する頷いている。現実らしい。彰仁は?オッケーマークを作っている。

現実だ!ついに現実だ!!

思えば俺たちはめぐみさんと普通のデートをしたくて苦手なことをしまくってきた。ディズニーなんて正直行きたくない、テーマパークで耳なんかつけてるアラフォーに寒い思いをした。でも、女の子はそういうデートコースが好きだというから。
甘いものなんて本音では食べたくない。鶏皮とか冷奴とかラーメンとか餃子とか食ってる人生を歩んできたのに、俺たちは無理して頑張ってマカロンとかケーキとかマシュマロとかフィナンシェとかパンケーキとかにチャレンジしたんだ。最初は下痢をしまくった。体がうけつけなかったんだ。でも卵アレルギーと同じように徐々に体は受け付けるようになっていった。人体の無限の可能性に感動を覚えた。
ようやく俺たちの努力が報われる。練習の成果が存分に発揮できる。これまでどれだけ練習と試験を繰り返してきたか、どれだけ血の滲む思いでミッキーやミニーやなんかわからない妖精だかなんだかの耳をつけたかわからない。
スカートなんだかキュロットなんだ年単位で変わる女性ものの服の名前も必死に覚えた、ノートに100回書いたら覚えられると忠兼が教えてくれたからそういうやり方をして色々と言語を習得した。
マスカラ、アイシャドウ、ネイルチップ、ペディキュア、ミュール、、、あとなんだったけ、修正機、、、じゃなくて、、、、コンシーラ!そう!コンシーラーとか。

歓喜の涙はまだ早い。そっと基実の背中を押す。こいつの話ならめぐみさんは大人しく聞く。理不尽な反論の危険性がないから話がややこしくならないで済む。
頼む!いけ!基実くん!!!いってくれ!!!

「え、、、あのさ、でさ、いつ、、、いつディズニー行く?」

耳をそば立てる。スケジュールをチェックする。すぐに調整してもらえるように電話も待機させる。

「夏休み終わりぐらいの平日。混んでるの嫌だから」

よし!!!よし!!!!ガッツポーズがでかけるがぐっと抑える。そして、その頃といえばハロウィンのイベントだろうか。耳は、耳はあるか!!??いや、マニュアルによれば昨年の使い回しはいけないらしい。新しくか、そうだった、忘れるところだった。

「シーに行ったことないから行ってみようと思う。お土産話たくさんになると思うからたくさん聞いてね!」

天真爛漫にめぐみさんがスケジュール帳とスマホを取り出している。

どういうことか、、、どういうことなんだろうか。基実くんのケツを押す。
早く聞け!どういうことか、お伺いをたてろ!!
勇都と彰仁の目が血走っている。さすがの基実くんも何かの恐怖を感じて、声が上ずりながら聞いてくれた。
「ひとりで、行くの?それとも!!お友達かな?長野の同級生のひとみちゃんかな?それともまた会いたいって言ってた光ちゃんかな?」

頼む!!頼む!!
神様、仏様、稲尾様!!!!!!!
ひとみちゃんで!!ひとみちゃんで!!!!


阪神ファンの勇都の祈りが声に漏れている。テストの返却のあの時から祈りのスタイルは変わっていない。

「ひとりで行くよ。だってゆっくり見たいもん」

足手まといという意味ではないよとめぐみさんが付け加える。彼女なりの思いやりなことはわかる。慮って言ってくれていることもわかる。
100%尊い優しさのゆえに言ってくれていることはわかっている。

それでもさぁ、、、めぐみさん、足手まといって。俺たち頑張ったのに、俺たち苦手だったけど頑張ったのに、、、

あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー、、、、、、、


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