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連載小説【HAPPY KIDS】

※Tipsで既刊済みの内容です。

いじめられっ子の典型的な人間だった。誰かに悪く言われたり陰口を言われてもずっと黙っていた。子供時代はすごく不幸だったと思うけれど、あの時代があってあの青春につながっていたことはよくわかる。

私たちのあの時代、あれは間違いなく青春だった。間違いなく「幸せなこどもたち」だった。

当時私たちは30前後で、男の子たちは戦い方をある程度知っていたけれど、世間ずれしていない私は常に誰かの影に隠れているような子だった。間違っても人をいじめたり陰口を言うようなメンタリティはなかった。

「強いものにはかじりついてでも向かっていけ。負けるな」と、父親は口癖のように言ったのに。父親が私を守ってしまったからよくなかった。でもそうやって守られたから私は女としての需要が絶え間なかったのだと思う。

髪を切った。コンタクトにした。世界が変わった。

生まれ変わった私は彼らと戦うようになった。一度勝利を味わった成功体験を彼らは祭り上げるように褒め称えた。褒めて褒めて褒めて、自信をつけさせてくれた。

ある時から怖いものがなくなった。

アイプチブスに睨まれたこともあった。元カノを自称する女に文章を悪く言われたこともあった。挙げ句の果ては「あなたの恋人盗んでしまってごめんね」とよくわからないマウントを取られたこともあった。

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