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7/22 【To be free】日誌
あたしはあたしの人生を生き始めた。
基実くんと卓さんと忠兼さんと、智柚子(ちゆづ)のおかげで。
たったひとり呼び捨てにする智柚子が男女の感覚を喪失させてくれた。
あたしが男らしさとか女らしさみたいなもので悩んでいるときに大切なことを教えてくれた彼は、基実くんよりも若くて、あたしよりも大人で、でも不器用で情熱的な人だった。(余談だが、アンダルシアに出張に行くと必ずポルボローネを、フランスに行くとウイスキーボンボンを、アメリカに行くとベロが真っ青になるキャンディーを、東南アジアやアンデス地方に行くと何種類ものビールを山のように買ってきてくれる。あたしを餌付けするのがこの世で一番うまいと思う。)
炎という言葉が似合うけれど、真っ青な炎を抱いている人だと感じている。
青い炎は今も青いのかなあと気になっている。少し疎遠になっているから。
FlagMaker’zの旗がお披露目された。
あたしに渡された旗印はふたつあるけれど、ひとつは卓さんが、ひとつは基実くんが考えてくれた。
素敵だなあとお礼を言いたかったのに疲れてしまって、無駄な喧嘩をしてしまった。
内弁慶で家族の前と他人様の前では人が変わってしまうあたしは自分でも気難しい人間だと思う。
人見知りというよりも信じる範囲が狭くて深い。
信じる練習をするためにクリスチャンになったのに、うまくいかない。
宗教は信じることの訓練学問。献金なんかで信仰が測れるのならそれは営業職だ。
右翼だとか、左翼だとか、赤だとか、青だとか、クリスチャンだとか、仏教徒だとか、そんな陣取りゲームをしているからフラれるんだよって基実くんに言うと渋い顔をした。
自分があたしが言及する範囲にいるかと思ったのだろう。
高潔さとはそういうことだと思う。
「もしかしたら自分にもそういうところがあるかもしれない」と必ず自分が加害側に分類されるという立場に着地してから物事を考えることだと思う。
どう、声をかけて誤解を解くべきか色々思い巡らせた。
「あたしならどうしてほしいか?」
着地点は自分を同じ立場にピン留めすることだった。
だから基実くんにこう伝えた。
「あたしが知っている限りの基実くんで嫌いなところなんかひとつもない。いつもありがとう。難しい言葉の表現で振り回してしまってごめんなさい。いつもありがとう。今日もありがとう。明日もよろしくね」
あたしはあたしの人生を生きていかなければならない。生きられる環境に生きている。だって隣にはいつも誰かしらいてくれるんだから。
お姉さんたちが「もう寝な?」「お疲れ様」「また明日にしよう!」と言ってくれてもまだPCに向かうあたし。
基実くんと卓さんが苦笑いしている。「スイッチ入っちゃったな」と。
忠兼さんと智柚子が呆れている。「早く寝ろや」と。
糸成くんと憲ちゃんが「まあいいんじゃない?」とお部屋に帰っていく。