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連載コラム小説【First Husbandという生き方】

専業主夫という生き方よりも僕が選んだのはファーストハズバンドという生き方だった。
ドイツの前首相、メルケル氏のご夫君然り、イギリスのフィリップ殿下然りである。
公の仕事を任されている妻のために影に日向にと、時に秘書業務を、時に外交の下支えをする重要な役割であるが、僕は実際事務畑を長年歩んできた経験から向いていると感じている。それに、表に出る度胸も最近ではかなり身についてきた。彼女を、妻を、ファーストハズバンドとして支える事が最近は生きがいになっている。
表に立つ人間は組織を牽引できるのであれば男女のこだわりを持つべきではない、そのことを教えてくれたのは実際妻だった。

妻はスーパーウーマンと言われるような豪傑だ。しかし一歩家に入ると誰よりも、午後のファミレス、主婦たちの愚痴大会を聞くだけでも精神病を再発してしまうようなところがある。

二面性があると言われることも多々ある。表に立つことは得意としてない。しかし彼女がやらなければならないことがある。僕が誰よりもその職務で活躍してほしいと先見の明で白羽の矢を立てたこともまた事実である。

僕はこの生き方を気に入っているし、広く世の中に流布したいと思っている。決して妻に生活を支えてもらっているような劣等感に苛まれることもないし、社会につながることを遮断されるわけでもない。そして、どちらが社会的地位が上か下かというような男特有のプライドも傷つけられるわけではない。

ファーストハズバンドとはいわばプロデューサーである。妻が仕事をしやすいように、プロデュースする。時にメンタルを守るために盾となり、時に追い風となるように援護射撃の兵員を増強するために東奔西走する。
そして輝く彼女を最後尾で見守り、家に戻ると同時に優しく抱きしめてやる。僕は妻のファーストハズバンドという職務について以来これほど男冥利に尽きる仕事もないとさえ思っている。

女性活躍が叫ばれて久しい昨今であるが、本当に才能のある女性に出逢い恋をしたのなら、一度考えてほしい、ファーストハズバンドという生き方を。そして、その参考になればと思い今このコラム小説の執筆に取り掛かっている。

いわば僕と妻の軌跡のようなものになってしまうかもしれないが、それ以上にご自身の奥方に可能性を感じておられるのなら、ぜひ継続して購読していただければと思う。

序章の最後に、
上梓に至る細部に、MT SECOND全体の支えがあったことに感謝の意を示したい。僕だけでは妻の才能を引き出し切ることはできなかった。時に強引なメンバーがいたこと、時に僕だけでは支えきれなかった彼女の心を支えてくれているメンバーがいること、そのどれもこれもがうまい具合に支え合い絡み合いこの高みを見せてもらっていると思っている。
ありがとう、妻をここまでにしてくれて。ありがとう、妻を支えてくれて。

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