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短編小説【文人】6/20

文人ー自分の弱さや愚かさを正当化するように、夜な夜な悩まされる悪夢を現実だと理論的に流布する目的のために物語を作り続ける淫夢魔の奴隷。
奇々怪界な趣向に傾倒するのはそもそもこの世に対してあからさまな懐疑心をむき出しにできない姑息な弱さがあるからだ。
結論、文人とは不信を友とする。

君は文人という言葉を好んだ。俺のために見ている世界だと思い込ませることがうまかった。
裏切られた俺が君を閉じ込めるために人生を使い果たしていることを知っているだろう。それでも君は俺を騙している。文人だということを隠している。君のやっていることは恐ろしく妖怪の類に近い。この世のものではない。
冥界に足を突っ込んでいるとしか思えないんだ。

ブルガリの香水と電子タバコの匂いに包まれた君はいつも赤い口紅をしている。自分を縛り付ける鎖だと君は自傷する。
「死ぬことなんて怖くない」
泣き腫らした目を歪めて俺を煽ってくる。
かける言葉を失わせることにかけては君は相変わらず天才的だと思う。

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