連載小説【裏街道の表事業】
戦後間もない頃に俺が降臨している。
でもこれは裏街道の表事業だから、パラレルワールドの話。
戦後間もないあの時代の裏の世界、地球でもなければ日本でもない、仮称として日本も地球も出てくるけれど。
口上挨拶ー組合長 其腹 マジメー
かつて裏日本と言われた、日本海側。
山陰という表現さえも山陽が基準として対比させられたのではないかとうらめしく思ってしまう。
なにくそ精神というものが人には備わっている気がする。裏日本の活躍は歴史を振り返っても華々しい。山陽よりも山陰のほうが何人もの著名人を排出している。
裏街道の表事業もまた、なにくそ精神を基幹としながら表の事業をまとめてきた、豊かな時代の模写である。基幹精神は携わる誰しもが持っていたわけではないし、表の街道を闊歩する凡人からの印象操作であるかもしれないが、豊かな時代の模写であると伝えれば、先達の偉人たちは目を細め懐の大きさで受け止めてくれるであろう。
最後に我々ルーラー専門家組合の著作を占い総合窓口に帰属させ、我々の存在意義と存在使命を異世界に引っ張って忖度なく、正々堂々と伝えることを後押しして下さった窓口監修者ご一同より賜った推薦文を掲載し、ご挨拶とさせていただく。謝意として。
其腹マジメが俺の名前。
戦後間もない日本には取るものもとりあえずただ飯を食うために街中を彷徨う日々が続いていた。
俺の親父は戦争犯罪人なんて偉い人間ではなかった。戦争犯罪人が罵倒され蔑まれる時代の風潮を風流だねえと別の角度から笑っているような、そんな浮世離れした男だった。
母親はどこにいるのかも知らないが、世話をやいてくれる女中を母だと思えと父親に言い聞かされていた。女中だけれど、乳母ではない。たいそうな家柄ではないことはそんな言葉の端々からも理解できた。
小学校に入学すると自分が歪な感性を持って生きることを許された存在であることに気付かされる。当たり前に食べられない子供がいることが理解できなかった。歪だと言ったのは同級生だった。当たり前がわからない変なやつだと虐められた。
黙っていた。
一度だけ女中に打ち明けたことがあった。
翌日から俺は学校でどこか敬遠されていることを肌で感じた。
親父は子煩悩だった。子供のためにはなんでもした。
親父は地元の名士だった。裏街道を生きる上で戦後の混乱は大変儲かったそうだ。