7/26Secret Calling-GLORY-
必死なところも20年前と全く同じだった。
めぐは俺たちへの嫌がらせだとわかって反吐が出るほどムカついていると泣きながら山蘇野さんと衣子さんにブチギレた。昨日のことだった。
「あたしは山蘇野さんが衣子さんを大切なように、基実くんや卓さん、忠兼さんに嫌がらせされたらそれが一番ムカつくの!!しかもあんなブスが!!あんなブスがあたしの大切な!基実くんと忠兼さんを汚しているなんてあたしのプライドにも関わってくる!」
めぐの演説は独時でところどころ吹き出しそうになる。でも笑ってしまえばめぐの怒りのボルテージは上がりきって、机を蹴り倒すは、食器は投げつけるわのとんでもない状況になってしまう。
昨日はそれに加えて、虫の居所が悪すぎたのか夜には大号泣して本当に困ってしまった。
忠兼にたてられて愛人は俺たちが描いた世界観への冒涜で、その先には尊敬する山蘇野さんへの牽制を意味していたこともわかったのが相当腹立たしかったようだった。
忠兼と智柚子はそういう会社の体制に嫌気が差していた時に偶然めぐちゃんに出会ったわけで、そのめぐちゃんがよもや、俺や卓が10年以上も追い求めていた運命の女性だとは思わなかったそうだ。俺と卓は別々にめぐと出会って再会を望んでどれほど探したかわからない。手段のひとつとして今の仕事に行き着いて山蘇野さんたちと出会ったのだから運命は数奇だと思う。
俺と卓は山蘇野さんたちと長年行動を共にしている。山蘇野さんも俺たちによくしてくれて彼の英才教育を受けた。他方、忠兼や智柚子というのは山蘇野さんと衣子さんの目の上のたんこぶが上司の会社の社員だからめぐという存在を介してもいまいち信用してもらえないでいた。
山蘇野さんと衣子さんの恋愛は長年非公開にせざるをえない状況だったことは業界の人間なら誰もが知ることで、めぐもそのことを知ってからというもの以前よりずっとずっと衣子さんを尊敬するようになった。
山蘇野さんは衣子さんとの結婚をあえて公にしなかった。彼女の仕事に敬意を持っていたし、もっともっと活躍してほしいと望んでいたし、何よりも「自分がいちばんのファンだから」と公言している。臆面もなくそう言い切る山蘇野さんをいちばん尊敬しているのもまた衣子さんで、「あたしだってそう言いたいけれど言う場所奪われちゃったんだもん」。
笑った顔がいまだに可愛らしい。まじめな顔がいまだにセクシーだ。
俺たちみたいな10歳も年下の男たちにも意識させてしまう魔性性がある。さっぱりしたかっこいい女性だけど、どんな女性よりも優しくて愛情深くて料理上手でおしゃべり上手だということも知っている。
女の中で衣子さんは完璧だと思う。
衣子さんはめぐに時々アドバイスしているらしい。
「自分の彼女ですって言われることなんて日常茶飯事だと思って無視よ。いちいち戦っていたら体が持たないから。痩せちゃうよ?」
「痩せたいよ、最近、体重また増えたんだもん」
「ごめんなさい、悪気はなかったのよ、、、」
「うそだよーん!」
「おい!面倒くさいなあ、もお!」
めぐは少しずつ元気になってきた。一番の要因はたぶん、山蘇野さんと衣子さんという推しカプに英気を養ってもらっているからだと思う。
改めて俺たちからもお礼を言いたい。
山蘇野さん衣子さんありがとう!そして、長い間お疲れ様でした。
素敵なおふたりが俺たちは大好きです!!
銀婚式は盛大にやりたいです、本当に。クリスマスに東京ドーム貸し切るくらいにwww
と、ここまでは家族のほっこり話。
さて、俺に残されている課題はあとふたつだ。
忠兼と卓。
負けるわけがないけれど、めぐは俺専用じゃなきゃ意味がないんだ。