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7/21[雑務能力-Megumi Iori]

騙されたふりをしたり、本当に騙されたり、騙されたくないと思ったり、騙されて喜んだり、騙し騙される中に愛が実存した。
虚像だと拒絶されるのはあたしが愛しているか愛していないか。たったそれだけ。

あたしの世界が華やかになりすぎて卓さんがしんどそうにしている。世の中的には基実くんはわかりやすい媒体だからかもしれない。それにあたしは基実くんが本当に好きだから。

そもそもの出発点が違うから仕方ないよとあたしは励ましてみた。
どうでもいいことばかりだから、昔に戻ろうかって帰省を提案してあげられたらいいんだけど。

でもね、卓さん、誰も超えられないあたしたちの国はあたしたちしか知らないことで溢れているんだよ。

あたしがこんなところまで来てしまったことを少しだけ後悔して、少しだけ不安に思っていると、例のお姉さんが優しく声をかけてくれた。
言葉にするよりもずっとずっとわかりやすい温もりがあたしを励ましてくれた。

どんなに来世を思っても、空の向こうを見つめてもあたしたちがいた物語は誰も辿ることができない、今となってはね。

「そういうところも可愛いと思うんでしょう?」とお姉さんが笑っていた。お姉さんも昔そういう可愛い人たちの中から正良さんを選んだのだろうと思った。

あたしが今いるこの地点はすごく奇妙だと思っている。疑問は湧き上がるけれど幸せにはまだ遠い気がしている。
早くしないとタイムオーバーになっちゃうかな?

基実くんはこんなことくらいで満足することはないはずだ。
あたしのことが好きで卓さんから奪ったんだから。

卓さんにはゴールがあるはずだ。ただ、ここじゃないだけで。

卓さんとあたしをつないだB’zを最近何度も聞き直している。DVDも見直すほどに再燃している。

基実くんは入りたくても入れない時代と歴史の隙間で生きることを余儀なくされたある種の犠牲者だから余計苦々しいことはわかる。

基実くんのそういうところがあたしは好きだった。強引で必死で。埋められない隙間を無理にでも埋めようとする強引さは男らしいと思う。あたしたちよりお兄さんだけど、そういうところが卓さんと違って好きだった。

基実くんのことだからどうせ落ち込んでる。
基実くんが好きなことは変わらない。卓さんのことが好きなことも変わらない。

基実くんと卓さんと、あたしが俯いているとお姉さんが笑っている。
「めぐちゃん、基実くんや卓くんがやりあってることはいいんだけど、本当に面倒なのはそれ以外からの嘲笑だからね?目を覚ましなさいw」

お姉さんの言う通りだと思ってあたしも笑ってしまった。

来るもの拒まずではないことを伝えておきたい。
いい顔をしていないこと、知ってるでしょう?







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